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【コラム#19】障害者雇用は企業の義務!成功事例や活用できる助成金制度を紹介

障害者雇用は企業の義務!成功事例や活用できる助成金制度を紹介

「障害者雇用促進法」は、障害を持つ労働者の雇用促進や、安定的な労働環境の実現を目的に制定されました。障害者雇用促進法における具体的な取り組み内容の1つに、企業に一定人数以上の障害者雇用を義務付ける、「法定雇用率」という制度があります。法定雇用率は単に達成しなければならない義務というだけではなく、近年注目されている「ノーマライゼーション」という社会理念を実現する第一歩として、しっかりと取り組んでいく必要があるでしょう。

 

しかし、法定雇用率の達成が義務付けられているとはいっても、実際に自社で障害者を雇い入れる状況を考えると、決して簡単なことではないことがわかります。職場に障害者を受け入れ、安定的に働いてもらうためには、ノウハウや準備期間が必要でしょう。

この記事では、企業が達成すべき障害者雇用の義務について解説し、既に障害者雇用に成功している企業の事例や、障害者雇用に関連した助成金制度などを併せて紹介していきます。

 

※目次

  1. 障害者雇用は企業の義務
  2. 障害者雇用の成功事例
  3. 障害者雇用で活用できる主な助成金制度
  4. まとめ

 

 

障害者雇用は企業の義務

 

 

まず、民間企業や自治体の事業主に課せられた、障害者雇用義務について解説していきます。まずは根拠となる法令について詳しく見てみましょう。

 

障害者雇用率制度

 

「障害者雇用促進法」では、障害を持つ人の雇用機会の促進と定着を図るため、一定規模以上の民間企業や自治体に対し、一定割合以上の障害者を雇用することを義務付けています。この一定割合が「法定雇用率(障害者雇用率)」です。

障害者雇用率は以下の式で算出されます。

 

障害者雇用率=(対象となる障害者のうちの常用労働者+対象となる障害者のうちの失業者)÷(常用労働者+失業者)

 

常用労働者とは、期限を定めずに雇用契約を結んでいる労働者、もしくは1年以上の雇用が見込まれる、もしくはすでに1年以上雇用されている労働者を指します。

 

法定雇用率は、社会情勢や労働者数の増減などを加味し、少なくとも5年ごとに見直される必要があると定められています。実際に、障害者雇用率制度の成立当初は1.5%でしたが、数回の引き上げを経て、2021年3月には2.3%と定められました。法定雇用率は今後も段階的に引き上げられることが予想されるため、各企業は、定期的に自社で雇用する障害者の人数が、法定雇用率を満たしているか確認する必要があります。

 

障害者雇用納付金制度

 

上記のように法定雇用率達成が義務付けられているといっても、業種や社内の状況によっては障害者雇用が難しく、達成できていない企業も少なくないでしょう。法定雇用率が未達成の場合、どのようなペナルティを受けるのか、気になる人もいるかもしれません。

しかし、法定雇用率が未達成であっても、法令違反になったり、ペナルティを受けたりするということはありません。ただし、「障害者雇用納付金制度」のもと、納付金を支払うコストが発生するので注意が必要です。

 

障害者雇用納付金制度では、法定雇用率未達成企業から納付金を徴収するだけではなく、徴収した納付金を財源として、法定雇用率を達成している企業に「調整金」を支給します。

たとえば、障害者を雇い入れる際は、障害者が働きやすい環境を構築するために、設備投資やシステムの変更などが行われることが少なくありません。このような場合に、企業が負担するコストを調整金で補填し、法定雇用率達成企業と未達成企業の経済的負担の格差を調整するのが、この制度の目的なのです。

ここで注意すべき点は、納付金を支払ったからといって、障害者雇用率達成の義務を免れる訳ではないということです。納付金はあくまで経済的格差の補填を行う目的で徴収されるものなので、企業は引き続き法定雇用率達成のために努力する必要があります。

 

障害者雇用の対象となる障害者の定義

 

「障害者雇用促進法」では、障害者の定義として「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」としています。障害者雇用促進法の対象となる障害者は、身体・知的・精神の各障害者手帳を所有していることが条件になります。

 

ただし、法定雇用率に応じた障害者数を雇用しようとする際は、それぞれの障害者の等級や労働条件によってカウント方法が異なるため注意が必要です。対象障害者が合計で何人分にカウントされるのかは事前に把握しておきましょう。

 

 

 

 

障害者雇用の成功事例

 

 

障害者雇用は実際にどのように進められているのでしょうか。既に障害者雇用の実績がある4社の事例をご紹介します。

 

ANA

 

全日本空輸株式会社をはじめとするANAグループは、2015年にグループ37社の全てにおいて法定雇用率を達成するなど、障害者雇用に積極的に取り組む企業の1つです。人事部に「グループ障害者雇用推進室」を設置し、本格的な取り組みを開始して、わずか3年あまりで法定雇用率を上回る障害者雇用人数を達成しました。2019年にはグループ全体で800人以上の障害者が活躍しています。

ANAグループの障害者雇用を推進させたきっかけとなったのが、障害者雇用にかかわる行動規範「3万6千人のスタート」の策定です。この行動規範は、人事担当者と障害を持つ従業員50余名が半年間に及ぶ協議を重ね、創り上げたもので、グループ全体が障害者雇用について正しく理解し、全ての従業員がともに活躍するために目指すべきことを定めています。

また、「スマートチャレンジ」という制度も、グループ内の障害者の働きやすさに一役買っています。この制度によって、障害の状態や環境の変化に応じて、グループ内で職場を変更することができるようになりました。会社の垣根を超え、障害者が働きやすさや活躍の場を求められるようにサポートする制度になっています。

 

博報堂DYアイ・オー

 

株式会社博報堂の特例子会社として1989年に設立された博報堂DYアイ・オーは、総従業員数の半数が障害者で構成されています。主にグループ内の間接部門やスタッフ事業部門の受託・受注を行うなど、シェアードサービスの領域における障害者の活躍を実現させました。

博報堂DYアイ・オーで働く障害者は、聴覚・言語障害者が多いため、手話通訳や音声認識システムを導入するなど、社内はコミュニケーション取るための工夫が充実しています。また、車椅子用トイレや自動ドア、ケアルームの設置など、環境整備にも力を入れるだけでなく、「合理的配慮の提供に関する相談窓口」を設けることで、不便や不足にすぐに対応できる態勢を整えています。2017年度には、障害者手帳を持つ従業員が管理職に昇格するなど、障害者のキャリアアップも実現しました。

 

リコー

 

レーザープリンターや複合機メーカーであるリコーは、1994年に特例子会社「リコーエスポワール」を設立するなど、障害者雇用には実績があります。障害者が採用されている職種も幅広く、研究開発や開発設計といった技術職から事務職まで、幅広い領域で障害者が活躍しています。

リコーが障害者雇用を行ううえで大切にしているのは、職種マッチングです。就職を希望する障害者一人ひとりの能力や適性を見極め、配慮してほしいこと・希望する働き方などを事前に詳しくヒアリングします。そのほかにも、障害の特性などに応じてインターンシップの機会が用意されているため、障害者は実際に働く状況をイメージすることが可能です。

また、入社後においても、産業医・保険医や生活相談員などが常駐し、万全の体制のもと、職場定着をサポートしています。

 

セールスフォースドットコム

 

顧客管理のクラウドフォームやアプリケーションの提供を行うセールスフォース・ドットコムは、1999年にアメリカで創業し、翌年に日本進出を果たしたシステム開発会社です。セールスフォース・ドットコムは、創業時より掲げている行動規範のなかで、「平等」を大切にすることを提唱しています。さまざまなバックグラウンドを持つ人々が集まり、お互いに多様な価値観を受け入れることで、新たな価値観の創出・成長に繋げていくことを目指しています。このような考え方に従い、セールスフォース・ドットコムでは障害者雇用にも力を入れてきました。

障害者雇用で特に重要視していることは、障害の特性や必要な配慮を、チーム全体で理解することです。現場の一人一人が障害者の働き方を把握することで、業務量の調整など柔軟に対応することがが可能になります。ほかにも、システム開発会社らしく、障害者の「体調の見える化ツール」の活用や、メッセージツールでいつでも相談ができる環境を構築しました。

 

 

障害者雇用で活用できる主な助成金制度

 

 

障害者を雇入れる際は、職場環境の調整や設備投資など、費用負担が発生することが考えられます。このようなとき、助成金制度を利用すれば、負担を軽減することができるかもしれません。障害者雇用に関連した助成金制度について見ていきましょう。

 

特定求職者雇用開発助成金

 

高齢者や障害者など、就職が難しいとみなされる対象者を、継続して雇用する事業主に対して支払われる助成金です。継続雇用が確実であることが条件のひとつになるため、原則として正社員や無期契約の雇用、もしくは有期契約であっても自動更新であることが支給条件になります。支給期間や金額は対象者によって異なり、以下の8つのコース別に分けられています。

 

・特定就職困難者コース

・生涯現役コース

・被災者雇用開発コース

・発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース

・三年以内既卒者等採用定着コース

・障害者初回雇用コース

・就職氷河期世代安定雇用実現コース

・生活保護受給者等雇用安定コース

 

このうち、障害者雇用に関連するものは「特定就職困難者コース」「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」「障害者初回雇用コース」の3つです。

 

トライアル雇用助成金

 

原則3ヶ月の試行期間を設けて、人材の適性などを図るためのトライアル雇用をした事業者に対して支払われる助成金です。この助成金は、就業経験の不足や、ブランクがあり就業することに不安を感じている求職者に対して、雇用機会の創出を目的とした制度です。トライアル雇用では、一般的な採用活動における書類選考や面接だけでは判断することのできなかった適性や能力を知ることができます。また、求職者側にとっても、実際に働いてみることでミスマッチが無いかどうかを判断できる点もメリットの1つです。

トライアル雇用助成金には、「障害者トライアルコース」と「障害者短時間トライアルコース」の2種類があり、週の所定労働時間が10時間から20時間未満を想定としている求職者は、障害者短時間トライアルコースに該当します。支給金額は障害者トライアルコースの場合、1人につき月額4万円が最長3ヶ月支給されます。ただし、精神障害者を初めて雇用する場合は月額8万円と条件が変わるため、注意しましょう。障害者短時間トライアルコースの支給額は月額2万円で、受給期間は最長12ヶ月間です。

 

障害者雇用納付金制度に基づく助成金

 

「障害者雇用納付金制度」の項目でも解説した通り、法定雇用率を達成している企業には調整金が支給されます。ほかにも、法定雇用率未達成企業から徴収した納付金を財源に、さまざまな助成制度が定められています。

助成金は、作業施設・作業設備の整備等を行う際に支給される「障害者作業施設設置等助成金」、福利厚生施設等の整備を行う場合に支給される「障害者福祉施設設置等助成金」、雇用管理のために必要な介助等を支援するための「障害者介助等助成金」などが利用可能です。

 

人材開発支援助成金

 

正規雇用の従業員に対して、業務に関する専門的な知識や技能を習得させるための訓練などを受講させた事業主に対して支給されるものです。大きく以下の7つのコースに分けられ、障害者雇用の場合は「障害者職業能力開発コース」に該当します。

 

・特定訓練コース

・一般訓練コース

・教育訓練休暇付与コース

・特別育成訓練コース

・建設労働者認定訓練コース

・建設労働者技能実習コース

・障害者職業能力開発コース

 

「障害者職業能力開発コース」の場合、支給額は、訓練施設の設置費用の四分の三(上限額5,000万円、更新の場合は1,000万円)で、運営費の五分の四(一人あたりの上限額17万円)となっています。

 

 

まとめ

 

 

障害者雇用は、今や大企業だけが推進するものではなく、中小企業でも真剣に取り組まなければならない課題となりました。障害者を雇入れるためには、設備や人的なコストがかかるため、二の足を踏む企業も少なくないでしょう。しかし、すでに法定雇用率を達成している企業の事例などをみると、特例子会社を活用したり、助成制度をうまく利用するなど、さまざまなアイデアで障害者との共存を実現していることがわかります。このようなアイデアや工夫は、結果として企業風土や運営にも良い影響を与えている場合も多いため、障害者雇用は必ずしも負担ばかりではないという認識も大切でしょう。より良い事業運営と社内のノーマライゼーションの実現に向け、障害者雇用に前向きに取り組んでみてはいかがでしょうか。

H&Gでは障害者雇用に関して、ノウハウを蓄積しています。障害者雇用をご検討の方は、長期雇用実績のあるH&Gまでぜひお気軽にご相談ください。