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【コラム#04】障害者雇用納付金制度とは?各種助成金について詳しく解説します

障害者雇用による労働人口が増え、多様化(ダイバーシティ)の考えが広まりつつあります。そんななか、「障害者雇用納付金制度」は障害者を雇用する企業が正しく把握しておくべき制度のひとつです。また、障害者雇用にまつわる制度には、障害者雇用納付金制度を含め助成を受けられるものが複数あります。障害者の雇用に伴う経済的負担を軽減させることができるため、障害者雇用を検討している場合はぜひ知っておきましょう。この記事では、障害者雇用納付金制度を中心に、障害者雇用に関する助成金について解説します。

 

※目次
1.障害者雇用納付金制度とは
2.障害者雇用納付金制度に関連する法令
3.障害者雇用納付金制度による助成金
4.障害者雇用に関するその他の助成金
5.まとめ

 

 

障害者雇用納付金制度とは

 

 

「障害者雇用促進法」という法律において、民間企業を含めたすべての事業主は、「継続して勤務する労働者」のうち、一定割合以上の障害者を雇用しなければならないと定められています。このパーセンテージのことを、「法定雇用率」と呼びます。

 

法律によって義務付けられているとはいえ、企業のなかにはそのパーセンテージを達成していない企業もあります。継続して勤務する労働者、つまり常用勤務者が100名以上在籍している企業のうち、法定雇用率が未達成の企業については、未達成の人数分を「納付金」として収めなければなりません。これが「障害者雇用納付金」の仕組みです。

 

企業が障害者雇用に取り組むにあたって、障害者が働きやすいような環境や雇用管理を整えることは重要です。その際にかかる経済的費用が適切に補填されることで、障害者雇用が促進されることが望まれています。そこで、徴収された納付金は、「障害者雇用調整金」や「報酬金」など、後ほど解説する各種助成金の財源として使われています。

 

ここで注意すべきなのが、納付金を支払うことは「法定雇用率を達成していない場合の罰金」という意味合いではないということです。あくまでも障害者雇用の義務を果たしている企業と果たしていない企業のアンバランスさを改善する、という考えが根底にあります。また、納付金を支払ったからといって障害者雇用義務を達成したことにはならないため、その点にも注意が必要です。

 

 

障害者雇用納付金制度に関連する法令

 

 

まずは、前述した納付金制度に関連する法令について詳しく見ていきましょう。

 

障害者雇用促進法とは

 

正式名称は「障害者の雇用の促進等に関する法律」で、障害者の雇用安定化を実現するための具体的な施策を定めた法律です。障害者の社会的自立を実現するための職業リハビリテーションの推進や、事業主が障害者を雇用する義務、差別の禁止や合理的配慮の提供、障害者雇用の状況報告などを定めています。

 

この法律における「障害者」は、「身体障害、知的障害、発達障害を含む精神障害、その他の心身の機能の障害によって、長期にわたり職業生活に相当の制限を受けた、もしくは職業生活を営むのが困難な者」と定義されています。このうち、前述した法定雇用率に含まれる障害者は「障害者手帳を取得しているかどうか」で決まります。たとえば、発達障害や高次脳機能障害による精神障害を持っていたとしても、障害者手帳を取得していなければ法定雇用率に算定されることはありません。

 

とはいえ、多様化の実現を目指すためには、当然ながら障害者手帳の取得の有無に関わらず、誰もが働きやすい職場環境を整えることが求められるでしょう。

 

 

障害者雇用率制度とは

 

障害者雇用促進法のなかで設けられているのが、「障害者雇用率制度」です。先ほど挙げた法定雇用率を定めているのは、この制度です。

 

法定雇用率を義務付けている背景として、「ノーマライゼーション」という考え方があります。障害の有無に関わらず、すべての人間は等しく社会に参画する義務があります。どんな人でも、本人の希望や適性を生かした職業に就く権利があるということです。しかし、実際には障害者と健常者の間には、公平性が保たれない事情が生まれてくることもあるかもしれません。そのため、障害者雇用促進法では、法定雇用率を設定することによって障害者が社会進出する機会を設け、公平性をできるだけ実現することを目的としています。

 

法定雇用率は数年ごとに段階的に上げていく方針で、2021年3月には2.2%から2.3%に引き上げられました。今後もさらに法定雇用率が引き上げられることが予想されており、障害者雇用の機会がさらに広まっていくと考えられます。

 

 

障害者雇用納付金制度による助成金

 

 

障害者雇用納付金制度によって徴収された納付金は、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」が管理しています。この納付金は助成金として、雇用率を達成している企業や経済的支援を必要としている企業に還元されます。ここからは、複数ある助成金の種類を具体的に解説します。

 

障害者雇用調整金

 

常時雇用している労働者数が100人を上回り、かつ障害者雇用の法定雇用率を上回っている事業主に対して支払われる助成金です。雇用している障害者1人につき、月額27,000円が支払われます。申告期間が定められており、毎年4月1日から5月15日までに申請する必要があります。

 

 

報奨金

 

常時雇用している労働者数が100人を下回り、各月の雇用障害者数が一定数を超えている事業主に対して支払われる助成金です。一定数というのは、各月の常用労働者のうち、雇用労働者の割合が4%もしくは72人のいずれかを超えた数と定めています。
報酬金は、雇用している障害者1人につき21,000円支払われます。こちらも申告期間があり、4月1日から7月31日までに申請する必要があります。

 

 

在宅就業障害者特例調整金

 

納付金制度による助成金は、障害者の「雇用」が絶対条件というわけではありません。在宅就業を行っている障害者に仕事を発注した事業主にも、助成金が支払われます。特例調整金は、納付金申告をした、あるいは調整金の支給申請を行った事業主のうち、前年度に在宅就業障害者あるいは在宅就業支援団体に対し仕事の発注を行い、業務の対価を支払った場合に支払われます。
特例調整金には評価額(35万円)が設定されており、評価額以上の発注・支払いがなければ支給されません。支給限度額は、在宅就業単位調整額(21,000円)に各月の算定基礎日における雇用障害者の合計を掛けたものです。

 

 

在宅就業障害者特例報奨金

 

報酬金の申請対象となる事業主のうち、前年度に在宅就業障害者あるいは在宅就業支援団体に仕事の発注・業務の対価を支払った場合に支払われるものです。特例調整金と同様に、35万円の評価額が設定されているため、これを上回る業務量・対価の支払いがない場合は支給されません。支給限度額は、在宅就業単位報酬額(17,000円)に各月の算定基礎日における雇用障害者の合計を掛けたものです。

 

 

特例給付金

 

2020年の障害者雇用促進法の改正により新たに新設された助成金です。短時間であれば勤務可能な障害者を雇用する事業主の支援として生まれました。
具体的な条件としては、労働時間が週10~20時間未満での雇用条件で、1年以上の雇用見込みがあると判断された障害者に対して支払われます。雇用された障害者1人につき、常用労働者が100人を超える事業主の場合は月額7,000円、100人以下の事業主の場合は月額5,000円が支払われます。

 

 

 

障害者雇用に関するその他の助成金

 

 

障害者雇用を安定・継続させるために、障害者雇用納付金制度による助成金だけではなく、そのほかの助成金制度も数多く用意されています。ここではそれぞれの助成金の支給額や支給期間、条件などをご紹介します。

 

障害者介助等助成金

 

身体障害を持つ障害者の継続的な雇用を支援するために、介助者の配置や社内環境の整備を行った際に支払われる助成金です。例えば手話通訳や要約筆記などの担当者、視覚障害者による事務作業の介助などが含まれます。

この助成金は、障害の種類や程度によって、次の4種類に区分することができます。

 

1.職場介助者の配置または委嘱助成金

2.職場介助者の配置または委嘱の継続措置にかかわる助成金

3.手話通訳・要約筆記等担当者の助成金

4.障害者相談窓口担当者の助成金

 

上記はそれぞれ支給額や限度額などの条件が異なっており、例えば「職場介助者の配置」であれば支給対象費用の3/4が助成され、1人あたり15万円が上限額となっています。「職場介助者の配置の継続措置」の場合は支給対象費用の2/3が助成となり、限度額は13万円です。

 

一方支給条件は共通で、以下の条件をすべて満たす必要があります。

 

・上記4種類の助成金それぞれに設定された受給対象となる障害者を新規雇用・もしくは継続雇用すること

・受給対象の措置を実施しない場合、障害者の新規雇用や継続雇用をすることが難しいこと

・不正受給を行ったために不支給措置がとられていないこと

・不正受給を行ったために助成金の返還を滞りなくすべて返還していること

 

 

障害者作業施設設置等助成金

 

新規雇用もしくは継続雇用している障害者の障害特性による業務中の課題を取り除くために、作業施設等の設置や整備を行った事業主に対して支払われる助成金です。例えば障害者用トイレを新設したり、スロープや手すりのついたバリアフリーの施設を建設したり、といった場合に適用されます。

 

この助成金は2種類に分けることができ、事業主が作業施設等を工事・購入することで設置および整備を行った場合は「第1種作業施設設置等助成金」、貸借により設置および整備を行った場合は「第2種作業施設設置等助成金」となります。助成される金額はどちらも支給対象費用の2/3です。

 

ただし、設置などの条件によっては助成金の対象にならないこともあるため注意が必要です。例えば、購入・貸借した作業施設が中古品や自社製品、関係会社・関連会社によるものだった場合、設計や工事等を自社で行う場合などです。また、障害者が働くうえで課題を克服するために必要と判断された範囲が対象となっているため、施設全体の費用が対象とはなりません。

 

 

重度障害者等通勤対策助成金

 

重度の身体・知的・精神障害者、または特に通勤が困難とされる身体障害者の特性に応じて、通勤を容易にする措置を講じた事業主に対して支払われる助成金です。以下の8つに分けられることができ、いずれも支給対象費用の3/4の金額が助成されます。

 

1.「重度障害者等用住宅の賃借助成金」(入居する障害者の住宅賃借料を助成)

2.「指導員の配置助成金」(障害者が5人以上入居する住宅に指導員配置することを助成)

3.「住宅手当の支払い助成金」(1人あたり上限6万円の住宅手当の助成)

4.「通勤用バスの購入助成金」(障害者が5人以上で通勤する場合のバス購入の助成)

5.「通勤用バス運転従事者の委嘱助成金」(バス運転手の委嘱助成)

6.「通勤援助者の委嘱助成金」(通勤時の援助を必要とする援助者の助成)

7.「駐車場の賃借助成金」(自動車通勤をする障害者の駐車場賃借の助成)

8.「通勤用自動車の購入助成金」(自動車通勤をする障害者のための自動車購入費用の助成)

 

 

重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金

 

重度身体障害者・知的障害者、または精神障害者を多数継続して雇用し、かつ安定した雇用を継続していると認められた事業主に、障害者のための施設や整備を行った際に支払われる助成金です。ここでいう「多数」の定義は、「重度障害者を10人以上、1年を超えて継続して雇用していること」「常用労働者のうち重度障害者の割合が20%以上であること」となっています。

 

業務を行うための作業施設や管理施設のほか、労働者住宅や保健施設・託児施設など福祉施設も対象になる場合があります。なお、助成率は支給対象費用の 2/3の金額で、上限額は5,000万円です(特例の場合は3/4の助成率で1億円)。

 

 

障害者職場実習支援事業

 

障害者を雇用したことがない事業主が、ハローワーク等の支援を受けて職場実習を計画し実習生を受け入れた場合に、謝金として助成金が支払われる制度です。障害者雇用に関わるノウハウや社内理解等が乏しく、障害者雇用に対して不安がある事業主に対して、積極的に障害者を受け入れられるように促すことが目的です。

 

実習の対象となる障害者は、ハローワークに求職登録していること、生活支援センター等で支援を受けているまたは就労支援事業所の利用者であること、特別支援学校の生徒であること(卒業年次ではないこと)、過去3年間において就労実績や職場実習・職場適応訓練を受けていないこと、となっています。

 

支給額は、実習対象者1人につき1日5,000円が支給され、同一年度での上限額は50万円となっています。ただし、実習時間が1日3時間未満だった場合は実習を行ったとは認められず、さらにあらかじめ計画した実習期間のうち、実際に実習を行った期間が半分以下となった場合も支給されません。

 

 

 

まとめ

 

 

経済活動を支える労働力の一員として、障害者が活躍する機会は年々確実に増えています。しかし、法定雇用率に達せず納付金を納めている民間企業のなかには、どのように障害者雇用を推進すれば良いかわからず、環境整備の資金も得られないというパターンが多いのではないでしょうか。まずは障害者雇用に対する社内理解を深めることから始めていき、雇用計画を立てていきましょう。障害者にとって快適な労働環境を整えるために、助成金の申請もぜひ検討してみてください。

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