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【コラム#10】精神障害者雇用の現状は?配慮すべきポイントや離職防止の対策を知ろう

2018年、障害者雇用義務の対象として、これまでの身体障害者、知的障害者に精神障害者が加わったことでその雇用が急激に伸びており、企業において精神障害者雇用ための準備・対策が本格化しつつあります。一方で、抱える特性により対処が難しい精神障害者の職場定着率が伸び悩んでいることもまた事実です。

そこで、この記事では精神障害者雇用の現状を述べたうえで、配慮すべきポイントや離職防止に向けた対策を解説していきます。

 

※目次

1.精神障害の主な種類
2.精神障害者雇用の現状と課題
3.精神障害者を雇用する際のポイント
4.精神障害者の離職を防止する4つの対策
5.精神障害者の就労方法
6.まとめ

 

 

精神障害の主な種類

 

 

精神障害には様々な種類があり、症状も障害ごとに変わってきます。ここでは、精神障害の主な種類をみていきましょう。

 

気分障害(うつ病)

 

気分障害とは、抑うつ気分、興味・意欲の低下、あるいは不安や悲嘆の感情の継続により激しい疲労感・倦怠感が起こり、通常の社会生活を送ることが難しくなる精神疾患です。一般的には精神的・身体的ストレスが重なることで脳内の神経伝達物質が減少して発症するとされていますが、はっきりとした原因が分からないまま発症することもあります。また、メンタル面だけでなく睡眠障害や頭痛・めまい、さらには便秘などの身体症状を伴うことが少なくありません。

 

治療については、早めに着手するほど早期の回復が見込めるといわれます。近年は、服薬とともに認知行動療法を実施すると回復しやすくなることが明らかになりつつあります。

 

統合失調症

 

統合失調症とは、脳内で思考や気持ちをまとめることが困難になる疾患です。症状は多様ですが、経過ごとに特徴があります。初期には、不安や緊張感、あるいは神経過敏の高まりから幻覚や妄想が表れます。そして、怒りや興奮状態により周囲との適切なコミュニケーションが取れなくなるといった「陽性症状」が顕在化します。陽性症状が収まると、今度は感情の起伏の乏しさや意欲の低下が表れ、家に引きこもったり、昼夜を問わず眠り続けたりするなどの無気力状態が目立つ「陰性症状」が長期間続くのが一般的です。

 

この疾患は長い間、治療が難しいと考えられてきました。しかし、現在は薬を使用した治療を早期に始めれば、再発を抑制できることが分かっています。

 

双極性障害

 

双極性障害は、以前は「躁うつ病」として知られていました。高揚感に満ちて活動的な躁状態と、生活に支障が出るほどのうつ状態を数ヶ月おきに繰り返す疾患です。躁状態では万能感の高まりが目立ち、次々にアイデアが思い浮かんで眠らずに活発に動き回り、周囲を疲弊させるケースもあります。また、高額品の衝動買いやギャンブルで散財してしまうこともあります。しかし、本人は気分が良い状態と捉えてしまうこともあり、治療が遅れてしまうケースが少なくありません。

 

なお、この疾患は躁状態の程度により「双極Ⅰ型障害」(激しい躁状態)と「双極Ⅱ型障害」(軽い躁状態)に分類され、対処方法が異なります。いずれの場合も、専門家の診断を受けたうえで、早期に治療を開始することが大切です。

 

てんかん

 

てんかんとは、突然意識を失うほどの発作(てんかん発作)を繰り返し起こす疾患です。この疾患は脳内の神経細胞の過剰な電気活動によって引き起こされ、発症原因が明らかであるか否かにより「症候性てんかん」と「特発性てんかん」に分類されます。症状としては「けいれん」や強直発作、あるいは10秒前後の短い意識消失が生じる欠神発作など様々ですが、患者ごとにほぼ同タイプの発作が繰り返されるのが特徴です。

 

ほとんどの患者は、適切な投薬と治療で疾患をコントロールすることで、支障なく日常生活を送ることができています。ただし、「難治性てんかん」と呼ばれる抗てんかん薬が効きづらいタイプは、薬の調整や外科治療などの専門治療を要することもあります。

 

 

精神障害者雇用の現状と課題

 

 

2006年と2016年のハローワークにおける精神障害者の職業紹介状況の比較調査では、就職件数が6,739件から41,367件と約6倍に増加、障害者雇用の全就職件数の半数近くを精神障害者が占めていることが明らかとなっています。(2017年9月時点)

 

一方で、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構が2017年に行った調査によれば、精神障害者は1年後に半数近くが辞めているとの結果が報告されています。そのため、職場定着率の低さをどのようにして改善していくかは、今後も企業の大きな課題です。

 

引用元:

第96回労働政策審議会障害者雇用分科会 資料4 障害者雇用率の0.1%引上げの時期について(案)

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センター障害者の就業状況等に関する調査研究(2017年4月)

 

 

精神障害者を雇用する際のポイント

 

企業が精神障害者を雇用する際には、どのようなことに気を付ければよいでしょうか。ここでは、3つのポイントをご紹介します。

 

体調の変化に気を付ける

 

就労している間、精神障害者には障害の特性に起因する様々な体調の変化が顕れます。不眠が続いたり、身体に痛みが生じたり、集中力が途切れて業務スピードが低下したりするなどは、変化を示す典型例でしょう。

 

体調の変化に気が付くためには、日頃から周囲の人が積極的にコミュニケーションを取ることや、管理者が障害者の就業時の状況をよく観察しておくことが大切です。そして、もし普段と異なる勤務態度や話し方・表情などがみられた場合は、声をかけて休憩を促したり、負担の少ない別の業務を割り振ったりするなどの対応を取りましょう。

 

業務量を確認する

 

体調の変化は、業務量が過剰になっている時にもよく起こります。そのため、管理者は障害者の能力や特性に応じた業務量を設定したうえで、適切な業務量が与えられているか確認しておくことが重要です。

 

相手の不安を理解する

 

不安の理解への第一歩は、障害者の不安の原因を把握することです。合理的配慮の取り決めの段階で、どのような業務や場面で不安が出やすいのかをヒアリングしておきましょう。そのうえで、就労中は定期的な面談を通じて不安なことはないかを尋ね、不安要素があれば早めに対処していきます。

 

 

 

精神障害者の離職を防止する4つの対策

 

 

ここでは、離職を防止するための対策を4つご紹介します。

 

勉強会を実施する

 

精神障害者の働く場への参加自体は増加傾向にあります。しかし、職場での接し方や合理的配慮の提供方法といった、安定的就労実現の核になるノウハウの蓄積はまだまだ十分であるとはいえません。

 

そこで、まずは社内で勉強会を実施して、社員に精神障害や障害者に対する理解を深める取り組みがおすすめです。厚生労働省はもちろん、民間主催の勉強会・セミナーが盛んに実施されているため、外部の勉強会へ参加してみるのもよいでしょう。習得した基礎知識やモデルケースを社内に持ち帰り、精神障害者に対する施策のブラッシュアップに活用すれば離職防止に大きな効果が期待できるでしょう。

 

障害に理解がある人材を配置する

 

精神障害者へのサポートには、精神障害者や障害特性に対する深い知見と十分な支援経験が必要です。思いやりが強く、優しいという性格的な理由だけで知識も経験もない担当者を置いてしまうと、障害者とのミスマッチが明らかになったり、生じた混乱に周囲が振り回されて業務に支障が出てしまったりする恐れも出てきます。したがって、精神障害者の良き理解者となる、専門性を備えた人材を配置することが大切です。

 

話し合いの場を設ける

 

2013年に厚生労働省が行った調査によると、精神障害者の離職理由で最も多いのが「自己都合」です。そして、自己都合の理由を深掘りしていくと、「職場の雰囲気や人間関係に適応できない」「疲弊してしまい意欲や体力が続かない」「症状が悪化してしまった」など、障害や特性に由来する業務への不適応が原因となっていることが明らかになっています。

 

こうした事態を防ぐためには、定期的な話し合いの場を設けることが重要です。管理者や専任の担当者との話し合いによって、今困っていることはないか、就労開始時に設定した「合理的配慮」を改善する必要はないかなど、情報と課題を共有して力を合わせて乗り越えていくことが大切です。

 

社内制度を整備する

 

雇用する精神障害者が通院スケジュールや急な体調不良に合わせて柔軟に休暇を取得できる、あるいは社内手続きをスムーズに行える仕組みづくりの構築に力を入れましょう。

 

また、障害者各人ごとのメンタルの状態を可視化できるシステムの導入も効果的な施策です。システムで体調や心の状態が可視化されれば、専門知識が乏しい管理者であっても障害者の状態を把握しやすくなるでしょう。

 

 

 

精神障害者の就労方法

 

 

ここまで、障害者雇用政策の拡充傾向もあり、精神障害者の障害者枠での企業への就職件数が順調に伸びているとご紹介してきました。ただし、残念ながらメンタル面の不調から企業での就労が難しくなってしまうケースや、そもそも長時間かつ継続的な就労が難しい障害者も多いのが現状です。

 

ここでは、精神障害者が自身の状態に合わせて最適な就労手段を選択していくという観点から、精神障害者の就労方法と特徴をご紹介していきます。

 

障害者枠での就労

 

自身のコンディションに問題なければ、障害者枠での就労(オープン就労)を目指すことを考える精神障害者が今後も増えることは確実です。

 

メリットとしては、業務内容や勤務形態についての配慮を受けられる、企業が用意する様々な支援制度や支援機関が介在したフォローを利用できることが挙げられます。また、職場で「病気や障害が知られてしまうのではないか?」という不安を抱きながら働く必要がなくなる点も大きなメリットです。

 

他方では、応募段階における求人数が一般枠に比べ少ないことから、就職活動の幅が狭まることは否めません。さらに、業務内容が軽作業などに限られる場合があり、 給与水準についても低く抑えられていることが一般的です。

 

一般枠での就労

 

精神障害者であっても、障害をオープンにせずに一般枠での就労(クローズ就労)を目指すことも可能です。求人数が障害者枠よりも圧倒的に多いため、就職したいと思える会社や希望する職種が見つけやすいメリットがあります。また、様々な職種に挑戦することで、自身の適正把握やキャリアアップの追求も期待できます。

 

しかし、オープン就労で受けられるような配慮については期待できません。残業や休日出勤の指示に応じる必要があるうえに、通院や休憩時間の確保も難しいでしょう。また、メンタル面から遂行することが難しいと思われる業務を振られた場合も、引き受けなければいけません。そして、職場内での人間関係などの悩みについても、基本的には自己解決していく必要があるでしょう。

 

パート・アルバイト

 

フルタイムでの勤務が難しいのであれば、パートやアルバイトなどの非正規雇用職に就くという手段もあります。賃金は正社員より低くなる可能性が高いものの、その分業務にかかる責任や負担は大幅に軽くなります。

 

就労継続支援A型事業所・B型事業所

 

働く意欲はあるものの、障害特性からどうしても継続的にフルタイムで働くことが難しい場合には、就労継続支援事業所で働くという選択肢があります。

 

就労継続支援事業所には、雇用型のA型事業所と、非雇用型のB型事業所の2種類があります。両者ともに賃金(B型では「工賃」と呼ばれる)が発生する点は一緒です。ただし、A型は雇用契約に基づく社会保険の適用や最低賃金の保障がありますが、B型ではこれらが要件とされていません。

 

そのため、A型では主に賃金に見合った成果を上げられる障害者が利用対象とされ、他方B型はスキルや体調面で一般の企業はもちろん、A型での勤務が難しい障害者の利用が想定されています。

 

 

まとめ

 

 

2018年より精神障害者が障害者雇用義務の対象となったことで、雇用数自体は右肩上がりで増加しています。そして、2021年に障害者の法定雇用率が引き上げられたことによって企業での取り組みに拍車がかかり、今後も精神障害者の雇用数が伸びていくことは間違いないでしょう。

 

一方ではせっかく入社したにもかかわらず、1年以内におよそ半数が退職するなど精神障害者の職場定着率の低さが課題となっています。この現状から脱却するためには、早期退職を防いで長期・安定的な就労ができる体制を整える必要があります。

 

しかし、精神障害者の支援に必要な知識の入手と社内体制構築を独力で取り組んでいくのは決して簡単なことではありません。そこで、精神障害者雇用における採用から就労安定化で生じてくるお悩みについては、障害者サテライトオフィスを運営する株式会社H&Gにご相談ください。障害者の就労支援コーディネーターと精神科訪問看護の看護師が、チームで貴社の障害者雇用をサポートいたします。