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【コラム#17】精神障害者雇用を推進しよう!業務上で必要な配慮や助成制度を解説

精神障害者雇用を推進しよう!業務上で必要な配慮や助成制度を解説

障害者は、障害の種類によって、身体障害者・知的障害者・精神障害者の3つに分けられます。このうち、身体障害者の雇用については早くから議論の対象となっていましたが、精神障害者については、障害者雇用義務の対象となったのは2018年と比較的最近です。そのため、精神障害者の雇用促進は、まだ始まったばかりの領域といえるでしょう。精神障害者の場合、抱えている障害が外見からはっきりと認識できないため、整備すべき職場環境や必要な配慮がかえってわかりにくいといった課題があります。

この記事では、精神障害者雇用の現状や精神障害の概要とともに、精神障害者が就業上必要になる配慮にはどのようなものがあるのか解説していきます。精神障害者の雇用を検討している企業の担当者様は、ぜひ参考にしてください。

 

※目次

 

  1. 精神障害者雇用の現状
  2. 主な精神障害の種類
  3. 精神障害者に対する就業上必要な配
  4. 精神障害者雇用に際して活用できる助成制度
  5. まとめ

 

 

精神障害者雇用の現状

 

 

日本における精神障害者雇用の現状はどうなっていいるのでしょうか。これまでの推移とともに解説していきます。

 

 

精神障害者数の推移

 

精神疾患を持つ障害者の数は、年々増加傾向にあります。2002年に258万人だった精神障害者数は、2005年には300万人を突破し、2017年には419万人という過去最高の人数に達しています。疾病別では、アルツハイマー病の割合が増加していることから、現在の日本が超高齢化社会に突入している背景や、平均寿命の伸びなどが要因になっていると考えられるでしょう。

また、日本の経済状況は低迷が続いており、この数十年で産業構造は大きく変化しました。以前よりも正規の職に就くことは難しくなり、低賃金労働や過重労働など、厳しい労働環境に身を置かなければならなくなった人が増えています。

このように、現代日本では、労働条件の悪化や低賃金による生活不安などによって、心身が疲弊する要因が増加しているといえるでしょう。このような状況と共に、精神障害者数も増加していると考えられます。

 

精神障害者の雇用状況

 

精神障害者の雇用数は、精神障害者が民間企業の実雇用率の算定に含まれた2006年当初においては、障害者雇用の全体数が28万人超のうち、わずか2,000人足らずでした。しかし、その後は年を追うごとに精神障害者の割合が増え続け、2020年には8万8,000人を超える精神障害者が雇用されています。また、2020年度は、障害者雇用の全体数も過去最高である57万人超を記録しました。

 

障害者の雇用数が順調に増加している背景には、障害者雇用促進法において、一定規模以上の民間企業や自治体などに課される「法定雇用率」が引き上げられたという要因があります。

 

法定雇用率は、1976年初めて設定されてから、2013年までは0.5%の上昇に留まっていました。しかし、2018年には2.2%、そして2021年は2.3%と、近年は引き上げ率が拡大しています。

法定雇用率は今後も引き上げられることが予想されるため、障害者の雇用機会増加が見込まれる一方で、対象企業や自治体は障害者雇用へのさらなる対策が必要になっています。

 

引用元:厚生労働省 令和2年 障害者雇用状況の集計結果

 

 

主な精神障害の種類

 

 

障害者雇用促進法において、精神障害者とは、「精神保健福祉法第45条第2項の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者」または「統合失調症、躁うつ病(躁病及びうつ病を含む)、てんかんにかかっている者」と定義されています。ここで病名の挙がっている精神障害には、それぞれどのような特徴や症状があるのでしょうか。

 

うつ病

 

うつ病とは、気分障害の1つであり、生活に支障をきたすほどに憂鬱な気持ちが一定期間以上続いた際に、うつ病と診断されます。「うつ」というと、心の病というイメージがありますが、心身ともに症状があらわれるケースも少なくありません。精神的な症状には、抑うつ状態や集中力の欠如、意欲の低下などがあります。一方、身体的な症状としては、睡眠障害、食欲不振、頭痛、関節痛、慢性的な疲労感などがあります。

 

双極性障害

 

双極性障害は、躁うつ病とも呼ばれ、抑うつを感じる周期と、気分の高まりや活動的になるそう状態の周期を繰り返す気分障害です。うつ状態とそう状態の間隔は人によって異なり、数ヶ月~数年単位で切り替わるケースもあります。

生活に大きな支障をきたし、入院が必要なほど重度のそう状態があらわれる場合は「双極Ⅰ型障害」、そう状態の症状がみられるものの日常生活に問題がない程度の場合は「双極Ⅱ型障害」と分類されます。

 

統合失調症

 

統合失調症は、考えや気持ちがまとまらなくなる、意欲が低下する、認知機能が低下する、といった状態が長く続く病気で、脳機能や過度なストレスが原因だと考えられています。幻覚・妄想・幻聴などの症状があらわれる「陽性症状」と、無気力・感情鈍麻や自閉などの症状がみられる「陰性症状」、記憶力・判断力の低下などが起こる「認知機能障害」の3つの症状に大別されます。

 

てんかん

 

てんかんとは、神経細胞に発生する激しい興奮によりけいれんやごく短い意識消失などがあらわれるてんかん発作を起こす、脳の慢性疾患です。発作の内容は患者によってさまざまで、脳の一部が興奮して起こる「部分発作」と、脳の大部分もしくは全体が興奮して起こる「全体発作」があります。本来、脳の神経は興奮と抑制をバランスよくコントロールしていますが、どちらかのバランスが崩れてしまうことによりてんかん発作が起こるといわれています。

 

 

精神障害者に対する就業上必要な配慮

 

 

同じ精神障害者と呼ばれる人達であっても、障害の程度や抱えている症状はさまざまです。そのため、人によって必要とされる配慮も変わります。精神障害者を雇用するにあたって、企業にはどのような配慮が求められるのでしょうか。

 

こまめな休憩を心がける

 

精神障害は、「心の病気」ととらえられがちですが、体の調子とも深い関係があります。精神障害の種類や程度によっては、慢性的な倦怠感や疲労感が症状としてあらわれることもあるため、精神障害者の「疲れている」様子を見て、闇雲に「自己管理の問題」としたり、「サボり」と判断したりする対応は正しくありません。

また、就業を始めたばかりの時期は、環境の変化や緊張感などから、不安を抱えやすい傾向にあるため、休憩の時間や回数に配慮が必要でしょう。5~10分程度の小休憩をこまめに取ったり、一人で落ち着ける環境を用意したりすることが大切です。個室を設けることが難しい場合は、休憩室をパーテーションで区切るなど、他者からの視線を気にしなくて良い環境になるよう工夫すると良いでしょう。

 

相談できる相手を確保する

 

多くの精神障害者は、日常生活にたくさんの不安を感じています。特に職場においては、業務のやり方がわからない、判断の基準がわからない、誰に相談すれば良いのかわからない、など、いくつもの不安が重なることで、より大きなストレスを抱えてしまう可能性もあります。

このような状態にならないためには、わからないことは誰に聞けば良いのか、明確にしておくことが重要です。特定の担当者を決めておき、報告・連絡・相談を意識することで、業務における不明点をなくしていくと良いでしょう。

 

業務の優先順位や期限を明確にする

 

精神障害者のなかには、「今日の業務内容が明確ではない」など、曖昧な状況が苦手な人もいます。業務内容は可能な限り明確に指示することが重要です。次にやるべき仕事はこれで、いつまでに終わらせるか、などをしっかりと明示し、ホワイトボードなど目に見える場所でまとめておくと安心できます。

また、過剰に責任を感じてしまうタイプの精神障害者の場合は、本人の体調や業務内容との相性、業務の進行速度などを把握し、能力に対して多すぎる業務を抱え込ませないよう調整しましょう。入社直後は、環境に慣れてもらうことを第一の目標とし、業務量を少なめに設定する配慮が大切です。

 

体調変動のサインを見逃さない

 

精神障害者のなかには、見た目には健常者と変わらない人も多いですが、いつもより業務スピードが低下していたり、ケアレスミスが多かったり、「いつもとは様子が違う」という場合は、なにか体調に変化が起こっている可能性があります。ちょっとした変化である場合は、本人も体調の悪化に気付かない場合や、自覚していてもなかなか言い出せない場合もあるでしょう。通常に比べて不調である様子を確認した際は、「少し休みませんか?」「体調はどうですか?」など、こまめな声かけを行うことが必要です。声かけがきっかけとなって気持ちが楽になり、相談しやすい雰囲気が構築できるでしょう。

 

 

 

 

精神障害者雇用に際して活用できる助成制度

 

 

障害者を雇用する際には、職場環境にも配慮が必要です。障害の特性によっては新しく設備を導入する必要もあるでしょう。そのような場合は、障害者雇用関連の助成金制度の利用を検討しましょう。ここでは、精神障害者の雇用でどのような助成金が活用できるかみていきます。

 

職場支援従事者配置助成金

 

ハローワークや地方運輸局、有料・無料職業紹介事業者、無料船員職業紹介事業者の紹介により、一般被保険者として満年齢が65歳未満の重度知的障害者又は精神障害者を雇い入れた日から3ヶ月以内に、職場支援従事者(職場支援パートナー)の配置を行う事業主に対して支給されます。(最大36ヶ月)

 

・短時間労働者以外 : 対象労働者1人当たり 月額3万円(中小企業は月額4万円)

・短時間労働者 : 対象労働者1人当たり 月額1万5千円(中小企業は月額2万円)

※短時間労働者とは、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の人を指します。

 

職場支援パートナーは、対象労働者が業務にキャッチアップできるように、手本を見せながらの反復指導やスケジュール管理などの支援を行います。職場支援パートナー1人につき、対象労働者3人まで支援可能です。

 

精神障害者雇用安定奨励金

 

ハローワークなどの職業紹介により継続的に雇用される精神障害者にとって、働きやすい環境づくりを行った事業主に対して支払われる奨励金です。以下の環境整備要項のうち、1つ以上を実施することで、「働きやすい環境づくりの実施」とみなされます。

 

・専門家の活用

精神保健福祉士などの精神障害者支援専門家を雇用保険の被保険者として雇い入れる、または委嘱し、対象労働者の雇用管理に関する業務を遂行させること

 

・専門家の養成

3年以上雇用している労働者に精神保健福祉士などの養成課程を履修させ、対象労働者の支援に関する業務を遂行させること

 

・社内理解の促進

対象労働者と同じ職場の労働者に、精神障害者の支援に関する講習を受講させること

 

・ピアサポート体制の整備

社内の精神障害者を、他の精神障害者に対する相談など雇用管理に関する業務を行う担当者として配置すること

 

・代替要員の確保

対象労働者が1ヶ月以上休職した際に、対象労働者の代替要員を確保すること

 

・精神障害者のセルフケア

対象労働者に、自らのストレスケアに関する講習を受講させること

 

対象労働者の雇入れの日を起算日とし、「専門家の養成」及び「社内理解の促進」の取り組みに関しては、起算日の前6ヶ月間から起算日から1年間の間に行われたものであること、その他の取り組みは起算日より1年間に行われたものが対象となります。支給額は、「社内理解の促進」「ピアサポート体制の整備」「精神障害者のセルフケア」の取り組みに関してはそれぞれ25万円が上限であり、それ以外は100万円が上限です。

 

精神障害者等ステップアップ雇用奨励金

 

精神障害の特性により、短時間勤務からのチャレンジが適当と考えられる精神障害・発達障害を持つ労働者を対象に、一定の期間を通じて試行的に雇用した事業主に向けて支払われる奨励金です。事業主と対象労働者が、障害や特性に関しての相互理解を深め、その後の常時雇用のきっかけを作ることが目的です。

労働契約の期間は、原則として3ヶ月以上12ヶ月以内で、週所定労働時間を10時間からスタートさせます。対象者の職場適応状況や体調などを考慮し、最終的には週所定労働時間20時間以上を目指していきます。期間中に対象者を常用雇用に移行することも可能ですが、ステップアップ雇用の期間が終了し、常用雇用に至らなかった場合はそのまま契約満了とすることも可能です。

支給額としては、1ヶ月間に就労を予定した日数のうち、実際に就労した日数が6割を超えていた場合は対象者1人につき月額2万5千円が支払われます。実際の就労日数が6割に満たなかった場合は月額1万円となります。

 

特定求職者雇用開発助成金 

 

高齢者や障害者など、一般的に雇用されることが困難と考えられる対象者を雇用した場合、一定の条件下において事業主に支払われる助成金です。対象者によって以下の8つのコースに分けられており、対象労働者の年齢や生活環境によって適切なコースを選ぶ必要があります。

 

・特定就職困難者コース

・生涯現役コース

・被災者雇用開発コース

・発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース

・三年以内既卒者採用定着コース

・障害者初回雇用コース

・就職氷河期世代安定雇用実現コース

・生活保護受給者等雇用開発コース

 

コースによって支給期間や支給額はそれぞれ異なりますが、受給対象となる事業主はいずれも「雇用保険適用事業所である」「定められた期間内に受給申請を行う」「調査機関からの書類提出要請および実地調査に応じる」ことが条件となります。

 

障害者トライアル雇用

 

これまでに就労経験がない障害者や、重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者など、就職が困難とされる障害者を一定期間雇用することにより、業務への適性や遂行能力の可能性を見極め、相互理解を深めるとともに、最終的に正規雇用できるかどうかを判断するための制度です。雇用期間中は助成金が支給されるだけでなく、障害者が実際に働く姿を見ながら適性の判断ができるため、採用のミスマッチが防げるという点に大きなメリットがあります。障害者トライアル雇用は、フルタイムに近い形態で働く「障害者トライアルコース」と、週所定労働時間が10時間~20時間未満の雇用形態である「障害者短時間トライアルコース」の2種類です。

 

支給額は、「障害者トライアルコース」で精神障害者として雇用された場合、月額最大8万円が3ヶ月間、もしくは月額最大4万円が最長6ヶ月間支払われ、精神障害者以外の場合は、月額最大4万円が最長3ヶ月間支払われます。

「障害者短時間トライアルコース」の場合、月額最大4万円が最長12ヶ月間支払われます。

 

 

まとめ

 

 

精神障害は外見から判断できないうえに、同じ病名でも症状や特性に違いがあるなど、事前知識がない状態では、その人に必要な配慮がわからない場合も少なくありません。精神障害者を雇用する際は、本人から症状や意見をヒアリングするとともに、企業としてどのような配慮が行えるのか精査する必要があります。職場の理解と意識改革で、相互に気持ちよく働ける環境を作りましょう。

H&Gでは、障害者雇用に関するノウハウを蓄積しています。障害者雇用をご検討の方は、長期雇用実績のあるH&Gまでぜひお気軽にご相談ください。