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【コラム#28】障害者雇用の納付金制度申告書について解説!留意点や関連する調整金について理解しよう

近年、多くの企業で障害者雇用が推進されています。しかし、障害者に無理なく働いてもらうためには、様々な設備投資が必要になります。身体障害者を雇入れるのであれば、社内のバリアフリー化に気を配らなくてはなりませんし、そのほかの障害でも企業にとっては少なくない費用負担を覚悟しなければなりません。このような企業側の経済的負担を軽減するために、助成金制度が用意されています。これらの助成金の財源となるのが「障害者雇用納付金制度」です。この記事では、障害者雇用納付金制度について解説すると共に、納付金の支払いや、助成金の受給の際に必要なこと、注意すべきポイントなどを解説します。

 

 

※目次

 

  1. 障害者雇用納付金制度とは
  2. 障害者雇用納付金申請書の提出までのステップ
  3. 障害者雇用納付金を申請する際の留意点
  4. 障害者雇用納付金制度における調整金と報奨金
  5. まとめ

 

 

障害者雇用納付金制度とは

 

 

障害者雇用納付金制度は、「障害者雇用促進法」という法律のなかに定められてます。この法律の目的は、一定の規模以上の民間企業や自治体の事業主に対し、雇用すべき障害者の割合を定め、障害者の雇用機会創出と職場定着への積極的な行動を促進していくことです。この「雇用すべき障害者の割合」を、「障害者雇用率」もしくは「法定雇用率」と呼びます。障害者雇用率は、社会情勢の変化や対象障害者の拡大などを背景に、これまで幾度かの引き上げが行われてきました。2021年3月の改正からは、民間企業の障害者雇用率は2.3%になっています。この値は、常用雇用労働者43.5人以上の企業において障害者を1人以上雇用しなければならないことを意味しています。

 

障害者雇用率の達成は、事業主の義務です。しかし、法律上は義務であっても、すべての企業がすぐに障害者を雇用できる状態かというと、そうではありません。厚生労働省の2020年現在のデータによると、全国の企業のうち法定雇用率の達成企業の割合は48.6%であり、半数にわずかに満たないという結果になっています。このことから、法定雇用率の達成が簡単ではないことがわかるでしょう。業種や企業規模によっても障害者雇用の難易度は変わりますが、障害者雇用を行う際は設備投資など費用の負担がかかってくるのが一番のハードルとなっているようです。

 

ここで問題となるのが、障害者雇用を積極的に推進している企業と、そうでない企業とで経済的な格差が生じてしまうことです。障害者雇用に積極的な企業は、新たな設備・施設・システムの導入や雇用管理の体制変更など、障害者にとって働きやすい環境に変えるための費用を負担しなくてはなりません。一方、障害者を雇用しない企業は、これらの費用を捻出しなくて良いことになります。これでは、両者の経済的負担がアンバランスになってます。それだけではなく、障害者雇用に取り組まない企業の方が負担が少ないという不公平さにも繋がるでしょう。

 

このような事情を解決するのが、「障害者雇用納付金制度」です。この制度では、法定雇用率を達成していない企業から納付金を徴収し、この納付金を財源に、法定雇用率を達成している企業に調整金・報酬金を支給します。法定雇用率を満たさない事業主が支払う納付金は、雇用すべき障害者数に不足する人数1人につき50,000円です。

 

引用元:令和2年 障害者雇用状況の集計結果

 

 

障害者雇用納付金申請書の提出までのステップ

 

では、この納付金を納めなければならない場合の申請方法について解説していきます。

 

 

常用雇用労働者数を把握する

 

「障害者雇用納付金」を支払わなければならないのは、前年の常用雇用労働者数が100人を超える企業です。常用雇用労働者とは、雇用期間の定めが無い労働者、もしくは1年以上雇用されているか、1年以上の雇用の見込みがある労働者です。雇用形態に制限はなく、例え正社員であってもアルバイト勤務であっても常用雇用労働者に該当します。日雇いであったとしても、雇用契約が日々継続され、事実上1年以上の契約が継続しているのならば常用雇用労働者として算定されます。

ただし、労働者数のカウント方法には例外があるので注意しましょう。週の所定労働時間が30時間を超えている場合は1人をそのまま1人分としてカウントしますが、20時間以上30時間未満の短時間労働者の場合は1人を0.5人とカウントします。また、20時間を下回る労働者はここではカウント対象外となりますので、自社の常用雇用労働者数に含めません。

 

雇用障害者数を把握する

 

次に、雇用している障害者数をカウントしましょう。自社で雇用している障害者数を正しく把握することで、法定雇用率を達成しているのかしていないのかがわかります。

雇用障害者にカウントされるのは、「身体障害者手帳」「療育手帳」(自治体によって名称が異なります)「精神障害者保健福祉手帳」のいずれかを所持している障害者です。また、常用雇用労働者のカウントと同様に、週の所定労働時間によって障害者のカウント方法が異なるので注意しましょう。また、障害者数のカウント方法には例外があります。身体障害者手帳を所有する人のうち、判定が1級もしくは2級となっている場合、また療育手帳を所有する人のうちA判定や重度という判定になっている場合は「重度障害者」として扱われ、1人を2人分としてカウントします。また、本来1人分を0.5人としてカウントする短時間労働者であっても、重度障害者である場合は1人を1人分としてカウントするので注意しましょう。精神障害者には重度という判定要素が無いため、この例外からは除外されます。ただし、「新規雇い入れ・もしくは手帳の取得から3年以内」「2023年3月31日までに雇い入れられた」精神障害者保健福祉手帳を所有する短時間労働者については、0.5人ではなく1人分としてカウントする例外があります。

 

 

申請書を作成する

 

申請書の作成にあたっては、独立行政法人高齢・障害・求職雇用支援機構のWebサイトからダウンロードできる申告申請書作成支援シートを活用しましょう。ガイドラインに従って月別の常用雇用労働者や障害者の雇用状況などを入力すると、納付金金額などが自動的に算出されます。電子申請を活用すれば、ミスなく記入ができるうえに、窓口まで提出に行く必要もありません。ただし、添付資料として雇用障害者にかかる源泉徴収票や障害者手帳のコピーなどの提出が必要になるので、これらは別途郵送しなければなりません。

 

 

 

 

障害者雇用納付金を申請する際の留意点

 

では次に、納付金申請書を提出する際に気をつけるポイントについて解説します。

 

 

法定雇用率の変更

 

障害者雇用率は、常に一定の値ではなく、数年ごとに見直しが行われています。直近では2021年3月に、民間企業において2.2%から2.3%に引き上げられました。0.1%の引き上げというと大きな変化が無いように感じられます。しかし、これまでの障害者雇用率2.2%では、常用労働者数が45.5人の場合に1人以上の障害者を雇用する必要があったのに対し、2.3%では43.5人につき1人以上の雇用が必要になります。たった0.1%の引き上げですが、新たに障害者雇用義務が課せられる企業は増加しているはずです。このように、これまでは障害者を雇用する義務がなかった企業も、障害者雇用義務の対象範囲内となることもあるため、従業員数に変化がなかったとしても、障害者雇用率の改定があった際には注意が必要です。

 

特例給付金の新設

 

上述の通り、障害者雇用率を算定する際、週20時間未満の労働者についてはカウントされませんが、障害者によっては、「長時間働くことは難しいが、短時間であれば可能」という人も少なくありません。しかし、障害者雇用率の算定対象にならない障害者は、企業側も積極的に採用しないため、結果的に雇用機会の減少に繋がっていました。このような課題を解決するため、2020年度より「特例給付金」という助成制度が新設されました。この制度では、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の障害者を雇入れた事業主に対し、給付金を支給します。支給対象となる雇用障害者の条件は、「障害者手帳を所有していること」「無期契約もしくは1年以上の雇用実績やその見込みがあること」です。

 

減額特例が終了

 

2020年3月までは、障害者雇用納付金制度には減額特例がありました。現在は一律で不足人数1人につき5万円が徴収されることになっていますが、それまでは、常用雇用労働者が100人以上200人未満の場合は不足人数1人につき4万円で、常用雇用労働者数が200人を超えている企業のみ5万円と定められていました。しかし、2020年3月いっぱいでこの減額特例は終了し、現在は企業規模にかかわらず一律で1人につき5万円という制度になっているため、注意しましょう。

 

 

障害者雇用納付金制度における調整金と報奨金

 

では、納付金を財源として支給される助成金には、どのような種類があるのでしょうか。

 

 

障害者雇用調整金の支給

 

障害者雇用調整金は、常用雇用労働者が100人を超えており、かつ法定雇用率を満たしている事業主に対して支払われます。前年度の4月1日から3月31日までの、各月ごとの算定基礎日における雇用障害者数の年度間合計数が、各月ごとの算定基礎日における法定雇用障害者数の年度間合計数を超える場合、1人当たり月額27,000円が支給されます。

申請期限は毎年4月から5月の中旬とあまり期間が長くないため、該当する企業は忘れずに申請を済ませましょう。

 

報奨金の支給

 

常用労働者100人以下で、障害者を常用労働者の4%、または6人のうち多い数を超えて雇用している企業には、月額21,000円×超過人数分の報奨金が支給されます。

この報奨金制度は、調整金の支給対象ではないものの、積極的に障害者雇用の取り組みを行う企業を支援する目的で創設されました。企業規模が比較的小さい事業主ほど、障害者雇用に課題を抱えているケースが多いため、このような現状を打破する狙いがあります。こちらも申請期限が定められており、毎年4月から7月末ごろまでとなっています。

 

在宅就業障害者特例調整金の支給

 

在宅就業障害者雇用制度は、オフィスに通勤して就労することが難しい障害者の支援を目的としています。ほかの助成制度と同じく、財源は障害者雇用納付金です。

この制度では、「企業が在宅就業障害者に直接業務を発注する場合」もしくは「企業が厚生労働大臣による登録がなされた在宅就業支援団体を介して業務を発注した場合」において、助成金が支給されます。制度の名称に「在宅」と含まれていますが、勤務地は必ずしも自宅でなければならないということではなく、障害者が業務を遂行するうえで必要な設備が整っている場所や施設であれば認められます。

在宅就業者雇用制度でも助成金は特例調整金・特例報奨金の2種類があり、特例調整金は常用雇用労働者数が100人を超えている企業が対象です。

 

在宅就業障害者特例報奨金の支給

 

在宅就業者雇用制度の特例報奨金は、常用雇用労働者数が100人未満の企業が支給対象となっています。

なお、在宅就業支援団体では、在宅就業障害者に対して業務と対価を提供すると同時に、職業訓練や就職指導を行っています。ただし、実際に助成金の算定対象となるのは発注された業務としての部分のみで、職業訓練などの時間は含まれません。

 

 

まとめ

 

 

障害者雇用納付金制度は、障害者雇用に積極的な企業とそうでない企業との経済的負担のバランスを調整するために機能しています。障害者雇用が進まない企業にとっては、まるでペナルティのように感じるこの制度ですが、必要な環境整備を進め、障害者を雇用していけば確実に納付しなくて良くなるものです。各企業に障害者雇用の重要性を認識させるためには非常に重要な制度といえるでしょう。また、必要な雇用障害者の人数を超過すれば調整金・報奨金などの助成金が得られるため、企業の前向きな姿勢がしっかりと評価されるのもこの制度のメリットです。障害者雇用を進めるにあたっては、これまでに紹介した助成金のほかにも活用できる助成制度が揃っていますので、積極的に利用することをおすすめします。

H&Gでは、障害者雇用に関するノウハウを蓄積しています。障害者雇用をご検討の方は、長期雇用実績のあるH&Gまでぜひお気軽にご相談ください。