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【コラム#31】公務員の障害者雇用の状況とは?職種別の仕事の特徴についても解説

「安定した職業」といわれることも多く、多くの求職者たちから人気の職業である「公務員」ですが、
障害者が公務員を目指すことは可能なのでしょうか。

この記事では、障害者雇用を通じて公務員になることを目指している方に向けて、公務員の各職種についてご紹介したうえで、
公務員になるための方法やメリット・デメリット、公務員の障害者雇用の現状を解説します。

※目次

1.公務員の種類

2.公務員として働くメリット

3.障害者が公務員になるための方法

4.公務員の障害者雇用の現状

5.まとめ

 

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公務員の種類

 

 

一口に「公務員」といっても、実際には様々な職種があります。職種によって担う業務は異なり、受験資格なども個別に設けられています。まずはどのような職種があるのか理解しましょう。

 

国家公務員か地方公務員か

 

公務員は、国家公務員と地方公務員とに大別されます。

 

 

国家公務員

 

国家公務員とは、国家機関や行政執行法人などの機関で働く公務員のことを指します。社会福祉や財政運営、外交、防衛などが担当領域で、具体的な勤務先は、厚生労働省・財務省などの省庁や裁判所などです。

国家公務員は、さらに「総合職」「一般職」「専門職」に分かれます。まず総合職は、いわゆる「キャリア官僚」と呼ばれる存在で、行政の中枢である中央省庁で政策の立案や編成などに携わります。これに対し、立案された政策を実際に運用する職員が一般職です。最後の専門職は、その名の通り専門的な技能や資格を問われる職種で、刑務官や航空管制官などが該当します。

総合職や一般職の場合、公務員試験に合格してから配属先が決定します。一方、専門性を問われる専門職は、配属される機関があらかじめ決まっていることが特徴です。詳しくは後述します。

 

 

地方公務員

 

地方公務員は、都道府県庁や市役所などに所属している公務員のことを指します。国家公務員が国家機関の運営に携わるのに対し、地方公務員は各自治体に所属して、住民のニーズや要望に応えることを業務としています。具体的には、福祉や教育、産業振興、まちづくりといった地域密着型の業務が中心で、消防官や警察官など、地域住民にとって身近な存在である職種も少なくありません。

地方公務員は自治体ごとに採用を行うため、国家公務員と比べて転勤の機会はあまり多くはないものの、部署異動は頻繁に行われる傾向にあるようです。

なお、採用されるために合格しなければならない公務員試験の内容は、地方公務員と国家公務員とで異なります。国家公務員の場合は人事院が試験を実施しますが、地方公務員試験は各地方公共団体が実施しており、試験の難易度に応じて上級・中級・初級という区分があります。

 

 

公務員の職種

 

ここからは、公務員の職種をさらに細分化してみていきましょう。

 

 

行政系

 

「行政事務」や「一般事務」と呼ばれる分野で、主に各省庁や出先機関、市役所などで行政全般に関する業務に携わります。具体的には、国や自治体の行政を円滑に進めるために、国民や各自治体住民のアドバイスや指導などを行います。役所での行政書類発行業務や、観光客へのPR活動、地域福祉の充実など、非常に幅広い経験を積むことができるでしょう。

特に国家公務員の一般行政職は、国会に提出する政策の企画作成や立案など、すべての国民生活に影響のある非常にスケールの大きな業務を任されることがあります。

一方、地方公務員の一般行政職の場合は地域密着型の業務が多いため、地域住民からの意見を直接聞きながら地域の発展を目指していきます。「地域に貢献できている」という実感を持ちながら、業務にあたることができるでしょう。

 

 

技術系

 

技術系の公務員は、土木・建築・化学などの専門知識を駆使しつつ、都市計画やエネルギー開発といった、人々の暮らしの基盤となる仕事に携わります。「理系公務員」とも呼ばれ、この分野を目指すためには、大学での基礎的な知識の習得が必要です。

例えば「土木職」は、河川の護岸工事やダム、上下水道の整備など、全国のインフラ整備を担う職種です。国家公務員であれば国単位で、地方公務員であれば自治体ごとの範囲でのインフラ整備を担当します。「機械職」であれば、街中に数多く設置されているエスカレーターやエレベーターなどの機械類や空調設備、衛生設備の設置やメンテナンスを実施します。「化学職」であれば、環境省や経済産業省などが採用先となり、地球環境問題やエネルギー行政、化学物質の濃度調査などに携わることが可能です。

 

 

心理系

 

心理学の専門的な知識を活かせる職種です。国家公務員であれば厚生労働省や家庭裁判所などが採用先となり、地方公務員であれば児童相談所などで勤務します。

地方公務員の心理職に就くためには、基本的に心理学のみの専門試験を受験します。一方、国家公務員を目指す場合は、心理学のほかに社会学や教育学などの試験を課せられる場合があるようです。

例えば「家庭裁判所調査官」は、家庭内で起こった事件や非行問題などの少年事件を取り扱う裁判所の職員です。事件の事実関係をさまざまな視点から調査して、得られた結果をもとに審議に必要な資料を作成し裁判官に報告します。

 

 

公安系

 

公安系公務員にもさまざまな職種がありますが、一般的に「公安」と呼ばれる職種は、消防官・警察官を指すことが多いでしょう。どちらも災害や犯罪などから管轄地域の住民を守り、安全を確保することを使命としている公務員の職種です。

警察官は特に部門によって業務内容が大きく異なり、例えば映画やドラマなどを通して「警察官の仕事」としてイメージされがちな、事件や事故の捜査を行う部門は「刑事部門」と呼ばれます。そのほか、駐在所や交番に勤務し地域全体をパトロールする「外勤部門」や、国内外の要人の警護を行う「警護部門」、違法運転の取り締まりを担当したり運転免許試験場にて勤務したりする「交通部門」などがあります。

 

 

福祉系

 

相談員などのケースワーカーとして、福祉事務所や児童相談所などに採用される職種です。国家公務員としての採用は限定的で、地方公務員の採用人数が多い傾向にあります。

児童相談所で勤務する場合、対象の子どもや家庭全体の調査業務や相談対応、また保護者として適任かどうかの判定などが主な業務です。指導が必要であると判断された場合は、実際に家庭に出向いたり、一時的な保護業務を担当したりと、社会的養護を支える重要な役割を担います。

保健福祉事業所で勤務する場合は、高齢者に対する福祉業務や、障害者支援・児童福祉・生活保護支給など、地域のあらゆる福祉業務を担当します。なお、自治体によって「保健センター」や「健康福祉センター」など名称が異なりますが、これらはいずれも福祉職の公務員が活躍する場です。

 

 

専門職系

 

これまでご紹介した職種のなかにも、専門的な技術や知識を要するものはありました。一方、ここでいう「専門職」は、前述のとおり特定の分野で業務を行うスペシャリストを指し、正式には「国家専門職」と呼ばれます。具体的には、外務省に勤務する「外務省専門職員」や、国税庁で勤務する「国税専門官」、財務省で勤務する「財務専門官」などの職種です。このような公務員は、募集の時点で勤務先となる官庁が決まっており、採用試験では職種ごとの専門的な知識が問われます。

海上保安官や労働基準監督官は、この専門職の一種です。これらの職種には「逮捕権」が認められていますが、このように法律によって特別な権限が付与されている職種も存在します。

 

 

資格免許職

 

資格免許職は、公務員試験に合格するだけでなく、職種ごとに必要な資格免許を別途保有する必要がある職種です。具体的には、看護師や薬剤師、保育士、栄養士、司書などが該当します。これらの資格免許職に就くためには、各自治体が実施する地方公務員試験を受験するのが一般的です。主な勤務先は、病院や福祉施設、学校、幼稚園、図書館などで、いずれも「公立」であることが共通点です。

 

 

 

公務員として働くメリット

 

ここまでの解説で、公務員には実にさまざまな職種があることをお分かりいただけたかと思います。それでは、上記のような職に就いて公務員として働く場合、民間企業へ就職した場合と比べてどのようなメリットがあるのでしょうか。

 

公務員として就職する大きなメリットは、民間企業と比べて雇用環境が安定しており、定着率が高いという点です。

まず賃金に着目すると、厚生労働省の調査による民間企業に就職した場合の平均賃金は、身体障害者の21万5,000円という額がもっとも高く、知的障害者は11万7,000円、精神障害者は12万7,000円となっています。一方、「行政職俸給表」に則って決定される公務員の給与は、最低の金額でも135,600円と設定されており(2021年9月現在)、この時点で前述の知的障害者と精神障害者の平均額を超えています。

なお、あくまでもこの金額は基本的な水準で、学歴・経歴などによっては初任給が20万円を超える場合も少なくありません。さらに、残業手当や賞与、住宅手当などの福利厚生も非常に充実しているため、公務員の平均的な収入は民間企業での平均値よりも高い傾向にあります。

 

また、公務員は離職率が低いことも特徴です。民間企業における職場定着率を示すデータをみてみると、2017年の採用から1年後の定着率は、もっとも高い発達障害者で71.5%、もっとも低い精神障害者では49.3%と半数を下回る結果となりました。一方で、2019年に厚生労働省が公開している行政関係の障害者定着状況のデータをみてみると、もっとも低い機関においても77.8%で、全体平均では94.9%という非常に高い定着率であることがわかりました。当該データの集計期間は約8ヶ月間とやや期間に差はあるものの、それを差し引いても相対的な定着率の高さがうかがえます。

 

一方で気になるのが、魅力的な雇用条件である公務員の採用倍率は非常に高い傾向にあるということです。また、職種によって出題範囲が非常に幅広い場合もあるため、必要に応じて予備校に通うなどのしっかりとした対策を行わなければなりません。

 

 

引用元:

平成30年度障害者雇用実態調査結果の概要

行政職俸給表(第六条関係)

障害者雇用の現状等

国の行政機関の障害者の採用・定着状況等特別調査の集計結果

 

 

 

障害者が公務員になるための方法

 

 

それでは、障害を持つ人が公務員を目指すにはどのような方法があるのでしょうか。以下で2つの方法とそれぞれの特徴をみていきましょう。

 

 

障害者雇用枠

 

障害者雇用枠とは、障害者手帳を保有している人が、一般的な採用とはやや異なる基準で企業や公的機関などに就職できる雇用枠です。求職者は、自身の障害を事業主に伝えたうえで応募することになります。

障害者雇用枠で公務員の職に就けば、コンプライアンス遵守についての意識が高いとされる職場で、障害に対する理解・協力を得ながら働くことができます。民間企業でも障害に対する理解は広まりつつありますが、公的な機関であればより安心感を持って働くことができるでしょう。

また、障害者雇用枠だからといって、ボーナスや昇給の仕組みが異なるといったこともありません。後述する一般枠で採用された場合と同じように、ボーナスを受け取ったり定期的な昇給・昇格の機会を得たりすることができます。さらに、社会的な信頼についても一般枠での採用との違いはありません。

ただし、仕事内容については、特性上難しいと判断された場合、業務範囲が限定的になることがあるでしょう。また、「障害者」として認識されたうえで勤務することになるため、その点を踏まえて面接などの準備をする必要があります。

 

 

一般枠

 

一般枠では、自身が障害者であるということを開示せず、健常者と同じ枠のなかで公務員になることを目指します。障害についてオープンにする障害者雇用枠に対し、一般枠は「クローズ就労」とも呼ばれます。

一般枠で公務員を目指す場合の特筆すべきメリットは、障害者雇用枠と比較して求人件数が多いということでしょう。障害者雇用という制限に縛られることなく、一般の求職者と同じ条件で職種を探すことができるため、広い選択肢のなかから自身の特性やスキルとマッチする職種を選ぶことができます。

一方で、障害を持たない人と同じ条件の求人に応募するということは、障害があることを理由に就労上の配慮を実施してもらえない可能性があることを意味します。例えば、移動に困難をもつ身体障害者の場合、座り仕事であれば一見支障がないようにも思えますが、オフィス内に車椅子が通れるスペースがなかったり、手すりやスロープ、エレベーターなどの施設がなかったりすることで移動が困難になるケースもあります。このように、就労するうえで相応の配慮が必要な障害特性のある方は、企業からの理解や準備が得られないことで、かえって安定した就労の機会を得られなくなる場合があります。

 

 

 

 

 

 

公務員の障害者雇用の現状

 

厚生労働省の2020年時点のデータによると、国の機関に雇用されている障害者の実雇用率は2.83%、都道府県の機関では2.73%で、いずれも前年度を上回っていました。また、公的機関での法定雇用率は2020年当時は2.5%であったため、どちらも法定雇用率を上回っていることがわかります。

 

一方、2018年には、内閣府や厚生労働省などの中央省庁による障害者雇用の水増しが問題となりました。具体的には、法定雇用率を満たすべく、障害者手帳を保有していない人を障害者とカウントするなどして、3,000人以上を不正に計上していたことが発覚した出来事です。

これを受け、2019年には障害者雇用枠のみを対象とした国家公務員試験を実施し、多くの人員を確保して不足分を解消しました。ところが、あまりにも多くの人数を採用したため、各機関での対応が不十分になってしまい、雇用形態が非常勤に限られたり離職につながったりするケースも出てしまいました。

このような事情から、直近では障害者雇用枠での雇用機会が豊富にあるとは言い難い状況にあります。2021年は各機関が個別で採用を行っており、人員の不足が起きた際に臨時採用を行っているようですので、人事院のWebサイトをこまめに確認しましょう。

 

引用元:

令和2年 障害者雇用状況の集計結果

 

 

 

まとめ

 

 

この記事では、公務員にはさまざまな職種や勤務先があり、就労を目指す場合には一般枠と障害者雇用という2つの選択肢があることをご説明しました。職種の選択も雇用枠の選択も、自身の適性を踏まえたうえで、長期的な視点に立って働きやすい場所・方法を探すことが肝要です。

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