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【コラム#06】知的障害者雇用とは?精神障害者や身体障害者の雇用についても解説

少子高齢化によって労働人口が不足している現代社会では、いかに工夫して新たな人材を獲得するかが企業戦略の鍵になっています。そのなかで、障害者の社会参加機会は年々広がりをみせ、多くの障害者が活躍できるようになりました。また、2021年3月からは、障害者を雇用する割合を企業に定めた「法定雇用率」の割合も増加し、今後さらに障害者雇用の機運は高まっていくことが予想されます。今回は知的障害者およびその他の障害を持つ方について、働き方や雇用するうえでの留意点、雇用時に利用できる助成金を解説します。

 

※目次
1.知的障害者雇用とは
2.知的障害者の働き方
3.知的障害者の職場トラブルと対処法
4.精神障害者雇用について
5.身体障害者雇用について
6.障害者雇用で利用できる助成金
7.まとめ

 

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知的障害者雇用とは

 

 

雇用対策を考える前に、まずは知的障害とはどのようなものなのか理解しましょう。ここでは併せて、知的障害者に適した職業や現在の雇用状況もご紹介します。

 

知的障害の特徴

知的障害とは、概ね18歳までといわれる発達期に知的発達の遅れが生じ、社会的生活を送ることが困難な状態にあることを指します。知的発達の遅れは、「読み書きや論理的思考・知識などの概念的領域」「対人コミュニケーションや社会的判断などの社会的領域」「金銭管理や行動管理などの実用的領域」という3つの領域に対して、知的機能と適応機能に明らかな制限がみられることが特徴です。知的障害の程度は、知能指数(IQ)の値に加え、3つの領域の状態によって軽度・中程度・重度・最重度の4段階に分けられます。

 

障害を持つ人や程度によるため一概にはいえませんが、一般的にみられる特性として「繰り返しコツコツ行うような業務が得意」「決められたルールやしっかりと理解した指示はきちんと遵守する」という点があります。一方、苦手なこととしては、「トラブルが起こったときなどの臨機応変な対応」「ニュアンスや抽象的な表現での指示の受け取り」「作業手順やものごとの処理」などが挙げられます。

 

知的障害者に適した仕事

 

このような知的障害の特性をふまえると、工程が簡略化された作業や反復作業が得意領域であるとわかります。そのため、適した職業の例として、飲食業のバックヤード業務、工場での製造・検品業務、データ入力などの事務業務、清掃業務などが挙げられます。

 

そうはいっても、障害が比較的軽度の場合は日常的な支援が必要ない場合も多く、就業できる業種の幅も広いでしょう。障害者本人が得意なことや趣味・嗜好に合わせた仕事を選ぶことができれば、仕事へのモチベーションが上がってやりがいを感じられるはずです。「障害があるからこの仕事は合わないだろう」と頭ごなしに否定するのではなく、障害者本人の状態や価値観に合わせた仕事を選ぶことが重要です。

 

知的障害者の雇用状況

 

厚生労働省の「令和2年障害者雇用状況の集計結果」のデータによると、身体・知的・精神のすべての障害者を含めた雇用数は57万人を超え、過去最高の記録となっています。そのうち、知的障害者の雇用数は約13万人で、新規雇用数は1万3,000人ほどでした。(2021年1月現在)

 

また、「平成30年度障害者雇用実態調査」によれば、知的障害者の正社員での雇用は19.8%で、約8割がパートやアルバイトなどの不正規雇用であることがわかります。就労時間は、週に30時間が65.5%、20時間以上30時間未満が31.4%、10時間未満が3.0%となっています。
また、1ヶ月の平均賃金は11万7,000円で、身体障害者の平均賃金である21万5,000円とは大きく差が開いています。相対的に低賃金となっているのは、知的障害者の正社員での雇用機会がまだあまり多くないことも背景にあるでしょう。

 

出典:
厚生労働省 令和2年障害者雇用状況の集計結果
厚生労働省 平成30年障害者雇用実態調査

 

 

知的障害者の働き方

 

 

知的障害を持つ方が就労を始めるためには、主に3つの選択肢があります。ここでは、その3つの選択肢の概要とメリット・デメリットを解説します。

 

障害者枠での雇用

 

障害者枠は、障害者雇用促進法にて定められた雇用枠のことです。国や地方自治体、一定以上の規模の事業所(民間企業)は、障害者雇用枠で法定雇用率以上の障害者を雇用することとされています。障害者枠の対象者は、障害者手帳を所持している、あるいは取得予定の身体・知的・精神障害者に限られます。知的障害の場合は「療育手帳」が該当しますが、療育手帳は自治体によって「愛の手帳」など名称が異なるため注意が必要です。

 

企業にとっての障害者枠のメリットとして、助成金を受け取れることがまず挙げられます。障害者雇用促進法では、障害者を受け入れるための施設整備や、介助者の配置に助成金が出されるのです。

 

一方で、デメリットは、周囲の理解や環境の整備が必要になることでしょう。障害者雇用促進法では、事業主が「合理的配慮」を提供することが求められるため、特性に応じて業務内容の見直しや職場環境の改善をしなければなりません。知的障害を持つ雇用者の配慮としては、「指示を簡潔に、絵などを用いてわかりやすく提示する」「わからないことがあったらすぐに聞けるよう担当者を決めておく」などが挙げられます。また、他の従業員に、障害や配慮の仕方について周知することも重要です。

 

一般枠での雇用

 

一般枠は、健常者と同じ条件で雇用する方法です。企業におけるメリットは、環境整備や特定の配慮の必要がないことでしょう。上記で説明したように、障害者枠で雇用する場合は、一人ひとりの障害特性や能力に合った環境整備や配慮が必要になります。一方、一般雇用は従業員全員に平等な配慮が必要ですが、特定の人物に特別な配慮をする必要はありません。

 

デメリットとして挙げられるのは、定着率が低いことです。一般雇用で就職した障害者は、環境整備や配慮が受けられないため、業務に困難が生じることも少なくありません。そのため、業務の流れについていけない、仕事内容が理解できないなどの理由から退職しやすい傾向にあります。

 

就労継続支援事業の活用

 

就労継続支援事業は、一般的な事業所(民間企業)で就労することが困難な障害者に対して、就労の機会を与えつつ、生産活動に関わる能力を向上させる目的で訓練を行う事業のことです。雇用契約を結び、各都道府県の最低賃金が保証された給与を得ながら働く「A型」と、雇用契約を結ばず、体調や特性に合わせて働く「B型」の2種類があります。

 

A型では、週20時間以上の労働時間と31日以上の雇用期間が見込まれることが条件になります。そのため、A型の方がより一般就労に近い環境での勤務となり、一般就労を目指すためのステップとして活用される傾向にあります。
一方で、B型は、就労体系を障害者本人がある程度自由に決めることができますが、A型よりも少ない工賃での勤務となります。どちらかというと、働くためのリハビリや訓練という意味合いが強いようです。

 

 

 

 

 

知的障害者の職場トラブルと対処法

 

 

知的障害を雇用する際に、職場トラブルに発展してしまうことがあります。ここでは、トラブルの例と対処法をご紹介します。
なお、これまで説明した通り、知的障害は個人によって障害の程度が様々です。以下に紹介したトラブル内容が、すべての知的障害者に当てはまるというわけではありませんのでご注意ください。

 

自分から相談できない

 

前提として、知的障害者は「難解な表現や抽象的なやりとり」「暗黙の了解」「空気を読む」といったコミュニケーションが苦手な傾向にあります。そのため、「これ」「あれ」などの曖昧な指示語を使ったり、一度にたくさんのことを説明したりするのは避けましょう。

 

そのうえで、わからないことがあって質問しようと思っても、質問のタイミングをつかめなかったり、どのように伝えれば良いのか悩んでしまったりすることも多いようです。このようなときは、業務上の疑問や不安を伝えることができる担当者をあらかじめ決めておき、相談をしやすい環境を整えることが重要です。また、イレギュラーな環境が苦手という特性もあるので、担当者がいない場合は他の従業員が対応できるよう、仕事の流れをリスト化して事前に共有しておき、いつもと同じように指示ができるようにすると安心できるでしょう。

 

ルールやマナーがわからない

 

多くの人は、幼い頃からの経験や両親・学校からの教育で、「この場面ではこういった対応を行う」というロールプレイングを自然と行っています。そして、応用できる能力があるからこそ、社会に出てこれまでと異なる環境に身を置いても、他者との関わり方や模範的なルールを自然と吸収していけるのです。

 

一方、前述したコミュニケーション面の難しさからもわかる通り、知的障害を持つ場合はいわゆる一般常識と呼ばれるようなルールやマナーを理解するのが困難です。そのため、「場の状況に応じて対応する」という応用力を発揮できない場合があります。そのため、指示・指導を行う側は「これは言わなくてもわかるだろう」という考えはせず、きちんと対面で説明を行うことが重要です。また、説明を行う際もできるだけ簡潔に、視覚情報を交えるなど工夫をして行うことが求められます。もしもルールやマナーを指導する自信が持てないという場合は、専門家による障害者職場定着支援制度を活用することも一つの方法です。

 

 

精神障害者雇用について

 

 

ここまで知的障害者についてご紹介してきましたが、障害者雇用の対象者には精神障害者も含まれます。精神障害者は、2018年の障害者雇用促進法改正によって雇用対象に加わりました。厚生労働省が発表している障害者雇用状況の集計結果によると、障害者雇用のなかでも雇用人数の伸びが一番大きく、2011年時点では1万3,000人程度でしたが、2020年は約8万8,000人となっており、精神障害者の雇用機会が増加していることがわかります。

 

出典:厚生労働省 令和2年障害者雇用状況の集計結果

 

精神障害の具体例

 

ここでは、精神障害の具体的な症例をご紹介します。なお、ここで紹介するものは一例であり、さまざまな症状があるため、雇用の際は障害者本人から直接障害について話を聞くことが大切です。

 

統合失調症
考えや気持ちをまとめる脳の「統合」が不安定になる疾患です。初期は妄想・幻覚といった症状で、次第に意欲の低下や無気力さが出てくるようになります。

 

うつ病
気分障害のうちの一つで、強く落ち込み憂鬱になる・やる気が出ない・何事にも興味を持てないなどの症状が長く続きます。食欲の減退や息苦しさなど、体への違和感を伴うこともあります。

 

パニック障害
身体の異常がないのに、ある日突然呼吸困難やめまいなどの発作が生じます。繰り返し起こることで、「また発作が起こったらどうしよう」という不安が増して、外出が怖くなり移動が制限されてしまいます。

 

双極性障害
「躁うつ病」とも呼ばれ、うつ状態と対極の躁状態を慢性的に繰り返す障害です。躁状態では非常に活動的でポジティブな行動を起こしますが、一転してうつ状態は一日中憂鬱な気分が続きます。

 

 

精神障害者を雇用する際の留意点

 

精神障害者の雇用人数が増加している一方で、職場定着率は低いという問題点があります。厚生労働省のデータによると、雇用された精神障害者の1年後の職場定着率は49.3%です。これは半数以上が1年未満に離職してしまっていることを意味し、知的障害者の68.0%と比べるとかなり低い水準となっています。

 

定着率が低い大きな理由として、精神障害には体調の波があるということが挙げられます。また、統合失調症やうつ、発達障害のなかには、「すぐに疲れてしまい集中力を保つことが難しい」という症状に悩んでいる人も多いようです。さらに、「やる気が出ない」「考えを巡らせることができない」という症状も多くみられます。このような精神症状は、環境変化などのストレスで引き起こされることも多く、就職がきっかけで症状が悪化してしまうというケースもあります。

 

障害者本人が服薬や治療の管理を行うことも大切ですが、職場でストレスを感じることのないように、障害の内容についてきちんと意思疎通を図っておくことが重要です。特に精神障害は目に見えないものですから、疲れたと感じたらこまめに休憩をとれるようにするといった仕組みを作ると良いでしょう。

 

 

 

 

 

身体障害者雇用について

 

 

知的障害者・精神障害者に加え、身体障害者も障害者雇用の対象です。そもそも「障害者雇用促進法」の元となった「身体障害者雇用促進法」は1960年に制定され、日本の障害者雇用の歴史においていち早く対象となったのが身体障害者です。こういった背景から、現在においても全障害者雇用人数の6割程度が身体障害者による雇用となっています。

 

身体障害の具体例

 

ここでは、身体障害者の症例をご紹介します。

 

視覚障害
視力や視野が十分に機能せず、ものが見えにくかったり、まったく見えなかったりする、いわゆる「全盲」の状態になってしまう障害です。

 

聴覚または平衡機能の障害
聴力が十分ではない場合や、耳や脳にある平衡感覚を司る器官が機能せず、規律や歩行に不自由がある状態です。

 

肢体不自由
両手・両足や体幹に障害や麻痺などの状態があり、日常生活に困難をきたす状態です。体の一部だけなのか、もしくは全身に及ぶのかは障害により異なります。

 

内部障害
心臓機能や呼吸器機能など、体の内部に障害がある状態のことを指します。

 

身体障害者を雇用する際の留意点

 

「身体障害者」といっても、具体例でも挙げた通り障害にはさまざまな種類があります。特に肢体不自由を持つ障害者以外の場合、一見どのような症状であるのか判断がつきにくいため、周囲からの理解を得ることが難しいという側面があります。障害の内容を把握しているのが管理者や採用担当だけだと、実際に働く際に現場でサポートを得られないこともあるため、事前に障害に対して理解や情報共有をしておくことが重要です。

 

障害に対する理解が進むことで、職場の環境をどのように改善するかという指標が見えてきます。例えば、「視覚障害者の雇用があった場合は拡大文字や音声ソフトなどの機材を導入する」「内部障害のある方には体調不良や通院などに合わせてスケジュールを柔軟に調整する」などです。双方にとって負担のない形で、合理的配慮のサポート体制を構築していきましょう。

 

 

 

 

 

障害者雇用で利用できる助成金

 

 

障害を持つ労働者を迎え入れるにあたって、職場環境の改善などで費用がかさんでしまうことに頭を抱えてしまうこともあるかもしれません。しかし、障害者雇用を行う場合、さまざまな助成金の制度が用意されていることをご存知でしょうか。ここではその助成金の一部をご紹介します。

 

トライアル雇用助成金

 

トライアル雇用助成金とは、ハローワークを通して3ヶ月間の試用期間を設けて労働者を雇用した企業が受け取れる助成金のことです。障害者が正規雇用を目指すきっかけとなるよう、就業経験の不足や長期的なブランクがあり就職することが難しい人の救済措置として生まれました。求職者の適性や能力をあらかじめ見極めることができ、ミスマッチのない雇用を行いやすくなります。障害者雇用の場合、「障害者トライアルコース」と「障害者短時間トライアルコース」の2種類があり、それぞれ支給額や条件が異なります。

 

特定求職者雇用開発助成金

 

一定の条件を満たした従業員を新たに雇い入れる際に支給される助成金です。障害者雇用の場合、「特定就職困難者コース」「障害者初回雇用コース」「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」が該当します。

 

人材開発支援助成金

 

労働者のキャリア形成の促進を目的とした助成金です。障害者雇用は「障害者職業能力開発コース」に該当し、訓練設備の設置や運営費の助成を申請することができます。

 

障害者雇用安定助成金

 

障害者雇用の定着は懸念点としても前述しましたが、定着支援としての助成金制度もあります。障害者雇用安定助成金は、障害に応じた雇用形態や職場環境の改善、柔軟に働くことのできる工夫などを講じている事業者に支給されます。支給額は、職場支援員の配置や社内理解の促進など、行われた措置やその期間によって決定します。

 

 

まとめ

ここまで、知的障害者雇用の概要や雇用に関する留意点、また、精神障害者・身体障害者の雇用についても解説しました。障害者別の雇用割合では精神障害者が高い一方で、定着率が低いという傾向にあります。H&Gは精神障害者の雇用に特化しており、コンサル業務に強みを持っています。障害者とのコミュニケーションが活性化されることで、長期雇用につなげることも可能です。
障害者雇用をご検討の方は、長期雇用実績のあるH&Gまでぜひお気軽にご相談ください。