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【コラム#07】障害者雇用率の計算方法とは?障害者のカウント方法や関連情報をまとめて紹介

厚生労働省が提唱している理念の一つに「ノーマライゼーション」というものがあります。これは、障害の有無に関わらず、すべての人が平等に社会生活を送ることを目指したものです。この理念を実現するために欠かせない施策の一つに、「障害者雇用率」というものがあります。障害者雇用率は、企業や団体の規模によって障害者の雇用人数を定めている制度です。この記事では、障害者雇用率の算出方法から障害者雇用率を達成した場合のメリットなど、障害者雇用率について深く掘り下げて解説します。

 

※目次
1.障害者雇用率制度とは
2.障害者雇用率の計算方法
3.パターン別の障害者カウント方法
4.障害者雇用率達成による企業のメリット
5.障害者雇用率を達成できない場合
6.まとめ

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障害者雇用率制度とは

 

 

民間企業を含む事業主は、雇用している従業員のうち、一定割合以上を障害者の雇用とする義務が、「障害者雇用促進法」によって定められています。障害者雇用促進法は、障害者が健常者と同様に社会進出を果たし、障害の有無に関係なくすべての人々が自立できる社会を目指すという考えのもと策定された制度です。具体的な取り組みとして、「職業リハビリテーションの推進」「差別禁止と合理的配慮の提供義務」と併せて「雇用義務制度」を定めており、障害者雇用率は雇用義務制度の指標として決められているものです。

 

1976年に障害者雇用率が義務化されたときは、「身体障害者雇用促進法」という法律のもとで制度が定められていたため、対象者は身体障害者のみでした。しかし、「障害者雇用促進法」と名称が変更されてからは、1998年には知的障害者、2018年には精神障害者が加わり、さまざまな障害を持つ人が障害者雇用の対象となりました。

 

また、2021年3月より、障害者雇用率は2.2%から2.3%に引き上げられています。これは民間企業の場合、常用労働者が43.5人以上の規模である場合は1人以上障害者を雇用しなければならないということになります。なお、障害者雇用率は5年ごとに見直し・算定が行われるため、将来的に障害者雇用による労働力はさらに広がりをみせることが予想されるでしょう。

 

 

障害者雇用率の計算方法

 

 

日本では、雇用されている総労働者数や障害者の総数、失業者などを加味して障害者雇用率が決められます。まずは、自社の障害者雇用率を把握しましょう。

 

障害者雇用促進法における障害者の定義

 

障害者雇用促進法では、障害者について「身体障害・知的障害・発達障害を含む精神障害・その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な者」と定義しています。そのため、障害を持ちながら日常生活に制限や困難を感じている人は「障害者」に属するということになります。

 

しかし、ここで注意すべきことは、障害者雇用率の対象となる障害者は「障害者手帳を取得している」ことが条件であるということです。この条件により「身体障害者手帳を所持している身体障害者」「療育手帳を所持している、もしくは判定機関の判定所を所持している知的障害者」「精神障害者保健福祉手帳を所持している精神障害者のうち、安定して就労できる程度に症状が回復している人」が対象になります。そのため、障害があることを自覚していても、自治体の障害者手帳申請が通らなければ、障害者雇用率の算定の対象にならないというのが現状です。

 

障害者雇用率の計算式

 

では、障害者雇用率を設定するための計算式をみてみましょう。

 

障害者雇用率=(対象となる障害者のうちの常用労働者+対象となる障害者のうちの失業者)÷(常用労働者+失業者)

 

 

常用労働者とは、「週30時間以上の就労時間があり、かつ雇用期間の定めがない者、もしくは1年以上雇用されている、またはその見込みのある労働者」のことです。基本的には障害者1人につき1人とカウントされますが、条件によっては0.5人や2人というカウントされることもあります。こちらの条件については後ほど詳しく解説します。

 

企業が雇用すべき障害者数の計算式

 

次に、障害者雇用率を利用して、企業ごとに雇用すべき障害者の総数を計算してみましょう。

 

自社の法定雇用障害者数=(常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×障害者雇用率(2021年3月現在は2.3%)

 

例として、

 

常用労働者の正社員が500人、パート勤務の短時間労働者が50人の企業があったとします。

この場合、式に当てはめると(500+(50×0.5))×2.3%=12.07となり、障害者を12人雇用する必要があるということになります。

 

なお、小数点以下は切り捨てです。

 

短時間労働者数は、基本的には週20~30時間以内の就労時間で働く就労者のことを指します。ただし、精神障害者保健福祉手帳を保有している就労者については特例に該当する場合があるので、後述の解説をご確認ください。

 

障害者雇用率の適用範囲

 

障害者雇用率は、事業主ごとに適用されます。そのため、たとえグループ会社あっても事業主が異なる場合は、それぞれの企業が障害者雇用率を達成しなければなりません。一方で、特例子会社を始め複数の事業者間であっても、例外的に障害者雇用率を合算しても良いという条件も存在します。以下では、このような特例制度の概要を解説します。

 

特例子会社制度

 

障害者雇用を行うための配慮を付した子会社を設立した場合、子会社に配属された障害を持つ労働者を、親会社に労働していることとみなし、障害者雇用率に算定することができる制度です。親会社・子会社それぞれが一定の条件を満たすと、特例子会社として認定されます。
親会社側は、子会社の議決権の半数を有するなど、意思決定機関を支配していることを条件としています。子会社側は、障害者雇用数が5人以上で、かつ全従業員に占める割合が20%を超えていること、親会社から役員派遣等があること、障害者の雇用管理が適性に行われ、雇用の促進や安定が確実に達成されると認められることが条件です。

 

関係会社特例

 

既に特例子会社を有している親会社が、別の子会社でも障害者雇用を進める場合には、一定の要件をもとに認定された場合のみ、親会社・特例子会社・該当子会社の間で障害者雇用率の合算が認められます。

 

関係子会社特例

 

特例子会社を保有していない場合であっても、一定の要件を満たしていると認められた企業グループについては、企業グループ全体で障害者雇用率の算定が可能になります。

 

特定事業主特例

 

中小企業が、事業協同組合などと共同事業を行っている場合、一定の要件を満たしていると認められた場合は、事業協同組合などとその組合員である中小企業の間で障害者雇用率の算定が可能になります。

 

 

 

パターン別の障害者カウント方法

 

 

障害者雇用数のカウント方法には例外があるということを解説しましたが、「労働者数1人=1」、とならない場合のカウント方法について解説します。

 

短時間勤務の場合

 

前述の計算式にもあったように、週20時間以上30時間未満の就労者は「短時間労働者」として1人を0.5人分としてカウントします。また、週20時間以下の就労者については、身体・知的・精神の障害内容は関係なく、原則として原則障害者雇用率には含まれません。

 

ただし、短時間勤務の特例として、精神障害者のうち「新規雇用から3年以内または精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内」かつ、「2023年3月31日までに雇用され、精神障害者保健福祉手帳を取得している」場合は0.5人ではなく1人としてカウントされます。

 

重度身体障害者・重度知的障害者の場合

 

各障害者手帳には、症状の重さや日常生活において支障をきたしているかどうかによって等級が定められており、身体障害者手帳の場合は1級から7級に分類されます。1級に近づくほど症状の程度が重く、「重度身体障害者」は1級・2級に認定された身体障害者のことを指します。
知的障害者が保有する療育手帳は、等級の分け方が自治体によって異なることもありますが、一般的には「A」もしくは「1度・2度」という判定の場合に重度とみなされます。その他、児童相談所などの機関で「A」相当の判定書を交付されていたり、障害者職業センターで重度知的障害者という判定を受けていたりする場合も該当します。

 

重度身体障害者および重度知的障害者を雇用する場合、1人を2人分としてカウントします。つまり、週30時間以上の常用労働者であれば2人として、20時間以上30時間未満の短時間労働者の場合は1人としてカウントします。なお、精神障害者に関しては、精神障害者保健福祉手帳の等級自体は1~3級に分類されていますが、「重度」の判定はないため、2人分のカウントは行いません。

 

在宅勤務の場合

 

働き方改革や多様性(ダイバーシティ)は、一般企業だけでなく障害者雇用においても浸透しつつあるようです。実際に、オフィスへの勤務が困難な障害者が、在宅ワークなどで就労をするという雇用体系も存在します。

 

障害者雇用率の算定に含まれる在宅勤務者は、「雇用保険の被保険者になる在宅勤務者のうち、常用雇用の労働者」で、「事業所における通常の勤務日数が週に1日未満、かつ事業所への出勤回数が週2回未満」の場合です。なお、事業所への通勤が困難とされる重度の身体障害者については、事業所への出勤回数が週1日未満と定められています。
これらの条件に含まれる在宅勤務者については、通常通り常用労働者であれば1人、短時間労働者であれば0.5人とカウントされます。

 

 

障害者雇用率達成による企業のメリット

 

 

ここで改めて、障害者雇用を積極的に行っている企業にはどのようなメリットがあるのか確認しましょう。

 

職場の多様性が増す

 

障害の有無や性別・人種などさまざまなバックグラウンドを持つ労働者を雇用することで、職場のダイバーシティを実現できます。多様性のある人材が集まることで、多角的な視点や価値観を共有でき、新たなアイディアや意識が生まれるきっかけになるでしょう。また、時代の変化や状況に応じて柔軟に対応できる組織になります。

 

専門的な人材を獲得できる

 

障害の特性を活かして専門的なスキルを持つ人材を獲得できます。例えば、知的障害を持つ人や発達障害(自閉症スペクトラムなど)を持つ人のなかには、一つのものごとに注力して業務をこなすことを得意とする人が多くみられます。新しいことにチャレンジすることや異なる環境に慣れることが難しい一方で、慣れることができさえすれば、高い精度で業務をこなせるようになることも珍しくありません。そのためには、障害者本人のペースに合わせてサポートを行うことが重要です。

 

助成金や給付金を得られる

 

障害者雇用を進めるためには、職場環境の改善や設備投資などで費用が発生することもあるでしょう。継続して雇用を続けられるか不明瞭な段階で、初期費用を捻出することにためらいを感じることもあるかもしれません。しかし、障害者雇用を行う際には、それぞれの条件に応じて助成金や給付金を受給することができます。

 

基本的にはどの助成金も、「雇用保険事業所であること」「支給のための審査に協力できること」「定められた申請期間内に申請することが」が条件となっています。適性や遂行能力を見極めるためのトライアル雇用に対しても助成されるものもあり、障害者雇用にノウハウのない企業でも、安心して障害者雇用を実行に移すことができるでしょう。

 

 

 

障害者雇用率を達成できない場合

 

 

もしも障害者雇用率を達成できなかった場合、企業はどのような対応が必要なのでしょうか。

 

納付金が徴収される

 

先に触れた通り、障害者雇用を進めるためには、バリアフリー化や業務フローの変更など、職場環境の改善やルールの変更が必要になる場合があります。当然、経済的負担がかかることになり、障害者雇用の割合を増やすほどコストは増える傾向にあります。そのため、積極的に障害者雇用を推進している企業の負担を軽減させ、障害者雇用を行っていない企業との格差を埋めるべく、「障害者雇用納付金制度」というものが制定されています。

 

この制度は、常用労働者数が100人以上の企業のうち、障害者雇用率を達成していない企業に対して納付金の支払いの義務を定めたものです。納付金の金額は、不足している人数1人につき5万円です。納められた納付金は、障害者雇用に関連する助成金や報酬金などの財源として活用されます。

 

行政指導を受ける

 

障害者を1人以上雇用しなければならない規模の企業(障害者雇用率が2.3%の現在では、43.5人以上の常用労働者が雇用されている企業)は、毎年6月に障害者雇用状況報告をハローワークに行う義務があります。その後、2年単位で雇い入れ計画を作成する必要がありますが、計画の実施状況が悪いと判断された企業は、行政指導を受けることがあります。

 

社名が公表される

 

ハローワークからの行政指導が入っても、依然として障害者雇用の改善がみられない場合は、企業名が公表されます。企業名の公表により企業イメージが悪化してしまい、今後の労働者雇用や企業間取引に影響が出てしまう可能性があるでしょう。近年は労働環境の多様化や企業の社会的責任のあり方などについて関心が高まっていることもあり、企業名が公表されることへの影響はますます大きくなっています。

 

 

まとめ

 

現代社会では、働き方改革などによる働き方の多様化に加え、人材登用の多様化にも注目が集まっています。障害者雇用率の設定は、障害者の雇用機会を増やし、誰もが社会活動に参画できる社会を構築するための重要な施策です。まずは自社の実雇用率を計算し、目指すべき障害者雇用数の指標がどの程度なのか確認してみましょう。
もしも障害者雇用に関してお悩みがあれば、長期雇用実現の実績を持つH&Gまでご相談ください。