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【コラム#12】障害者法定雇用率とは?気になる引き上げや関連するルールなどについて解説

ダイバーシティの浸透もあり、企業において障害者の活躍に期待が高まっています。そして、この流れを支える役割を担うものの1つが「障害者法定雇用率」に関する制度です。

しかし、企業において障害者雇用の重要性に対する認識はあっても、どのように達成を目指していったらよいのかについては、まだまだご不明な点が少なくないというのが現状ではないでしょうか。

そこで、本記事では、障害者法定雇用率制度の概要から、関連するその他のルールや制度などについて解説します。

 

※目次

1.障害者法定雇用率制度とは
2.障害者法定雇用率を満たしていない場合
3.障害者雇用に関連するルールや制度
4.障害者と一緒に働くために
5.まとめ

 

障害者法定雇用率制度とは

 

 

障害者法定雇用率制度は、障害者に対して国が打ち出していく施策の基本理念を定めた「障害者基本法」の理念を、雇用分野で実践していくときの中核となる仕組みです。ここでは、本制度の概要、段階的に実施されている雇用率の引き上げ、雇用率の計算方法について順に解説し、具体的にどのような制度なのかを明らかにしていきます。

 

障害者法定雇用率制度の概要

 

障害者雇用率制度とは、障害者雇用促進法43条第1項に基づき、一定数以上の従業員規模を有する事業主に対して、設定された雇用率以上の障害者を雇用することを義務付ける制度です。この制度では、各事業主に障害者雇用率を達成させて、継続して働くことができる機会を保障することで、障害者が活躍できる社会の実現を目指しています。

 

2021年3月1日の法定雇用率の引き上げ実施により、民間企業には2.3%の達成が求められるようになりました。したがって、障害者を1人以上雇用する義務を負う事業主の範囲が、雇用従業員43.5人以上に拡大されているので注意が必要です。そして、この義務を履行できない事業主に対しては、ハローワークによる行政指導が実施されます。

 

障害者法定雇用率の引き上げとは

 

障害者法定雇用率については、障害者雇用促進法により、少なくとも5年に1度は見直すことが定められています。実際、1976年に法的に義務化されて以降、法定雇用率は段階的に引き上げられてきました。段階的に見直していくのは、時期により変動する被雇用労働者や障害者の数に対応していくことに加えて、障害者を迎え入れに伴う事業主の新たな設備投資や雇用管理の負担を軽減する狙いもあります。

 

民間企業の法定雇用率については、すでに2013年には2.0%に引き上げられていましたが、5年後の2018年には2.2%に、そして2021年3月1日からは前述のように2.3%へと、2段階に分けて順次引き上げられ今に至っています。

 

しかしながら、雇用率については、2020年時点で民間企業の達成率が48.6%と、達成が遅れていることは否めません。(2020年6月時点)

 

引用元:厚生労働省 令和2年 障害者雇用状況の集計結果

 

障害者法定雇用率の計算方法

 

障害者雇用率は、以下の計算式によって算出します。

 

 

障害者雇用率=(対象となる障害者のうちの常用労働者+対象となる障害者のうちの失業者)÷(常用労働者+失業者)

 

 

なお、対象者は以下のとおりカウントします。

 

・対象障害者は、身体障害者・知的障害者・精神障害者とする
・短時間労働者は、原則1人を0.5人としてカウントする
・重度の身体障害者・知的障害者は、1人を2人分としてカウントする
・重度の身体障害者・知的障害者の短時間労働者は、1人分としてカウントする
・精神障害者の短時間労働者については、次の要件を満たす場合は1人分、満たさない場合は0.5人分としてカウントする

対象障害者は、以下の要件を満たしている必要があります。
1.新規雇い入れから3年以内
2.
2023年3月31日までに雇い入れられ、精神障害者保険福祉手帳を取得した場合
 

 

 

障害者法定雇用率を満たしていない場合

 

企業が基準を満たしていない場合には、行政による指導やペナルティーが科せられます。順にみていきましょう。

 

行政指導

 

2021年の法定雇用率引き上げにより、雇用従業員43.5人以上の企業は、障害者雇用促進法43条第7項の定めに従って、毎年6月1日時点における対象障害者の雇用状況をハローワークに報告しなければなりません。そして、雇用率を満たしていない企業に対しては、ハローワークによる「障害者雇用率達成指導」と呼ばれる行政指導が行われます。

 

障害者雇用率達成に向けた指導では、雇用指導官からの指導・アドバイス、2年計画の「障害者雇用雇入れ計画書」の提出、計画の適正実施勧告などが行われます。さらに、それでも雇用状況の改善遅延が著しい場合には、特別指導の対象となります。なお、雇用状況の報告懈怠や虚偽報告には、30万円以下の罰金が科せられるので注意が必要です。

 

企業名の公表

 

特別指導を受けてなお雇用状況に改善がみられないと判断されると、企業名が公表されます。公表されれば、今後の一般人材を含む採用活動はもちろん、中長期的には業績にも悪影響を及ぼす恐れも出てくるでしょう。

 

また、雇用する従業員に対しても、自社が多様性に対する関心の低い企業と感じさせることにより、企業に在籍する意欲自体を減退させることにも繋がりかねません。

 

こうした事情を踏まえれば、迅速に雇用率達成に向けた対策を打ち出していくことは、企業にとって重要な取り組みといえるでしょう。

 

障害者雇用納付金制度

 

常時雇用労働者数100人超の企業が雇用障害者数の基準を満たしていない場合、事業主は不足1人につき月額50,000円を納めなければなりません。納付金は、障害者雇用に積極的な企業の経済的負担の軽減、事業主間の負担の公平化を図ることで障害者雇用の充実を目指すことを趣旨としており、罰金ではないと解されています。

 

実際、収められた納付金については、法定雇用率達成企業に対する「障害者雇用調整金」や「報奨金」の原資として活用されています。なお、未達企業は、納付金を支払ったからといって、障害者雇用義務を免れることはできません。

 

 

 

障害者雇用に関連するルールや制度

 

 

障害者雇用の拡充に向けては、もちろん法定雇用率制度以外のルールや制度に関する整備も欠かすことはできません。ここでは、主なものを4つに分けて解説していきます。

 

差別禁止と合理的配慮

 

・差別の禁止

事業主は障害者に対して、募集・採用時における健常者との分け隔てのない機会の提供を求められます。また、賃金・教育訓練・福利厚生その他の待遇に関する取り扱いにおける不当な差別は認められません。

 

・合理的配慮

事業主には、募集・採用時に障害者本人から申し出のあった障害特性に配慮した必要措置・施設整備、さらには援助者の配置などの必要な措置を講じていく義務が課せられています。ただし、障害者雇用促進法第36条の2~36条の4に基づき、その措置の提供が事業主に対して「過重な負担」を及ぼす場合に限り、当該義務が免除されます。しかしながら、当該措置の免除が認められた場合であっても、十分な話し合いを経たうえで代替措置を講じれば、障害者の職場定着に繋がりやすいでしょう。

 

障害者職業生活相談員の選任

 

障害者雇用促進法79条によれば、障害者を5人以上雇用する事業所では、「障害者職業生活相談員」を選任し、雇用する障害者の職業生活に関する相談・指導に当たらせる必要があると定められています。相談・指導の具体的内容は以下が代表例です。

・職務内容(ふさわしい職の選定やスキルの向上など)

・作業環境の整備(障害に応じた施設設備への改善など)

・職場生活(労働条件や職場の人間関係など)

・その他、職場適応の向上や余暇活動など

 

中小事業主に対する認定制度

 

障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)とは、2020年4月1日改正の障害者雇用促進法により、新たに創設された制度です。障害者雇用に対する社会的な関心を呼び起こすとともに、障害者雇用に積極的な中小事業主への社会的メリットの付与、その取り組み状況の公表を通して、中小事業主全体で障害者雇用の一層の進展を図ることを狙いとしています。

 

対象は常用労働者300人以下の中小企業で、障害者雇用に関する取り組みや成果の評価基準を一定以上クリアした申請企業が優良事業主として認定される仕組みです。認定されると「認定マーク」が与えられ、ダイバーシティや働き方改革に関する高い積極性を伴った実践企業としてのPR効果が期待できます。

 

 

 

障害者と一緒に働くために

 

 

障害者を職場に迎え入れるにあたっては、障害者が安心して働くことができ、かつ定着していける環境づくりを考えていくことが大切です。ここでは、そのような職場を目指すうえで押さえておくべきポイントを具体的にみていきます。

 

配慮ある仕事環境

 

障害者が安心して働くためには、第一に物理的な面から配慮ある仕事環境が整えられている必要があります。

 

例えば、職場のレイアウト変更です。通路の幅を拡げる、段差をなくしたりケーブル類を床下に収納したりする、あるいは要所にすべり止めや手すりを設置することで、視覚障害者や車椅子使用者の安全性の向上が期待できます。また、座席を室内の入口付近に設けたり、その他の座席やコピー機などの位置を工夫したりすることで、日常的に使用する設備までのスムーズな動線を確保することも検討しておきましょう。

 

そして、近年雇用件数が伸びている精神障害者には、その特性から大勢の中にいると不安・緊張感が出やすい人が少なくありません。少しの間横になることができる休憩室や専門の支援スタッフに相談できるカウンセリングルームが設置されていると安心感を与えられるでしょう。さらに、発達障害で音や光に対して強い感受性がある場合は、座席をパーテンションで仕切ることで、作業の集中度を高められます。

 

特性に合わせた配慮

 

様々な困難を抱える障害者に対しては、仕事環境の工夫というハード面の対策だけでは十全なサポートというには程遠いのが実情です。特性を踏まえた「合理的配慮」の範囲と内容を確実に実施していくためには、業務設計やサポートの仕組みづくりといったソフト面に関する工夫が大切です。

 

例えば、状況に応じた対応が難しい知的障害者には、指示を作業ごとに1つずつ出す、あるいはイラストや図表を盛り込んだ作業手順がつかみやすいマニュアルを作成するなどの配慮が必要でしょう。そして、専任の担当者がすぐに対応できる態勢を整えておくと、より安心感を与えることができます。

 

また、視覚障害者には、誰と話しているのか迷わないように声掛け時に必ず名前を名乗るようにすれば、安心感を与えられます。他方、音が少しでも聞こえる人や読唇術習得者に対しては、ゆっくり、はっきりと言葉を発することを心掛けます。

 

そして、予定の変更などに臨機応変に対応していくことが苦手な発達障害者に対しては、ホワイトボードへの1日のスケジュール記載や早めの予定変更伝達などの配慮を心掛けましょう。

 

安心できる雰囲気づくりと信頼できる人間関係

 

特性に合わせた配慮を行っていくことにより、障害者の周囲の人々に対する信頼感の向上効果が期待できます。一方、障害者とともに働く社員も、配慮を通じて障害者が抱える困難さの内情やスキル・適性を把握できるようになります。

 

こうした相互理解に欠かせない要素が、働く障害者が安心できる雰囲気づくりと信頼できる人間関係の構築です。特に障害者雇用においては、合理的配慮の提供による措置やシステム面だけでなく、障害者が長く働き続けられるような心理的なサポートを欠かすことはできません。

 

具体的には、できること・できないことを見極めたうえで、新しい職場で緊張している障害者にプレッシャーをかけることがないように、業務の量や質を調整しましょう。そして、少しずつパフォーマンスを発揮できるような環境に移行していくことが大切です。

 

また、適宜休憩を挟んだ緩やかな勤務スケジュールを組むと同時に、こまめな声かけや見守りを続けることも重要です。特性に合わせてしっかりと言葉で伝えたり、口頭でのやりとりが苦手な人にはメモやメールで対応したりなど、適宜対応を工夫していきましょう。

 

さらに、こうした取り組みを評価し、かつ今後の改善策を練るための定期的な面談の設定や業務日誌の作成も欠かさず行います。日々の業務では伝えることが難しい、障害者の希望や悩みを汲みとる貴重な場となることでしょう。

 

 

まとめ

 

今回は、障害者法定雇用率制度について、そして障害者雇用に関連するその他のルールや制度、さらには、障害者と一緒に働くために欠かせないポイントについて解説してきました。企業が障害者雇用に積極的に進めていくためには、広い視野で様々な取り組みを行っていくことが大切です。

 

しかしながら、日々刻々と変わる障害者雇用の現状に合った的確な支援を企業が独力で継続していくことは簡単なことではありません。そこで、障害者雇用に課題を抱えている企業は、株式会社H&Gの「障害者向けサテライトオフィスサービス」のご利用をご検討ください。

 

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