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【コラム#35】障害者雇用で差別は禁止されている!差別の具体例や予防策についても解説

近年、我が国における、障害者雇用の推進は目覚ましく、今や障害者が企業で働く光景は珍しいものではなくなりました。障害者は、その障害ゆえに、周囲の協力なしには健常者と同等以上の力を発揮することが難しい場合があります。このようなときは、企業によるサポートによって、障害者の苦手分野をカバーするく働き方も、徐々に浸透してきたといえるでしょう。しかし、障害に対する理解が、従業員一人ひとりまで行き渡っているとはいえません。どのような事柄が障害者差別に当たるのか良くわかっていない人も少なくないでしょう。このような理由から、現在も障害者が働きにくさを感じるケースは後を絶ちません。障害者がいきいきと働ける環境を構築するためには、障害者への差別について理解を深める必要があります。

 

この記事では、障害者雇用の現場で発生しやすい差別の具体例や、差別を防ぐための対策についてわかりやすくご紹介します。

 

※目次

1.障害者差別を禁じる法律

2.【採用時】障害者雇用における差別の具体例

3.【入社後】障害者雇用における差別の具体例

4.職場における障害者への差別を防止するための対策

5.まとめ

 

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障害者差別を禁じる法律

 

 

障害者に限らず、世間一般的にマイノリティとされる人達への差別意識は、根深いものがあります人々の考えを根本から変えるのは難しいことですが、法律で定められた事項については厳守していく必要があります。ここでは、障害を持つ人に対する差別を禁止する法律について見ていきましょう。

 

障害者雇用促進法

 

2016年、障害雇用促進法の改正が行われ、雇用分野における障害者差別を禁止する内容が盛り込まれました。この規定は、規模・業種にかかわらず、すべての企業が守らなくてはなりません。対象となる障害者は、身体障害や知的障害、発達障害を含む精神障害、その他の心身の機能に障害がある人です。障害手帳を持っていなくても、病気や障害によって労働生活に支障がある人も対象となることに留意しておきましょう。

また、この改正では、合理的配慮の提供についても義務付けられるようになりました。合理的配慮とは、障害を持つ人が労働するにあたり、障害特性によって感じる困難や障壁を取り除くため、企業側が積極的に調整や変更を行うことです。企業は、障害者から対応を求められた際は、過重な負担が生じる場合を除き、合理的配慮の提供をしなくてはなりません。対応が困難な場合にも、障害者に対してその理由を説明し、別の対応を提案するなど、話し合う姿勢が必要とされます。また、合理的配慮の内容は、障害特性やそれぞれの場面・状況に応じて異なります。企業側が積極的に障害者の働きやすさを考慮していく必要があるでしょう。

合理的配慮の提供義務に違反した場合、具体的な罰則が示されている訳ではありません。しかし、訴訟に発展すれば、裁判所の判断によっては、民法や労働契約法の違反に該当する可能性があります。損害賠償を支払わなければならない可能性も生じるため、注意しましょう。

 

障害者差別解消法

 

障害者差別解消法は2016年に施行されました。この法律では、「障害を理由に差別的取り扱いや権利侵害をしてはならないこと」「社会的障壁を取り除くために合理的な配慮を提供すること」が定められています。障害者雇用促進法がおもに雇用分野における障害者差別を禁じているのに対し、障害者差別解消法では日常生活及び社会生活全般に係る分野が広く対象となります。つまり、民間事業者が顧客である障害者から障害による困難の解消を求められた場合には対応しなければならないということです。法律を守るべき対象事業主も、商業その他の事業を行う企業・団体であり、目的の営利・非営利、個人・法人の別を問いません。

また、障害者雇用促進法における合理的配慮の提供は、事業主の法的義務とされていますが、障害者差別解消法では合理的配慮の義務付けは国や自治体のみで、民間事業者では努力義務とされています。しかし、2021年5月に成立した改正法では、民間事業者に対しても義務として合理的配慮の提供が求められることが定められています。改正法は公布日(2021年6月4日)から起算して3年以内に施行されるため、今のうちから準備しておくと良いでしょう。

 

 

 

【採用時】障害者雇用における差別の具体例

 

 

害者への差別が発生しやすいのが、採用時です。業務内容によって、障害者が活躍しにくい職種があるのは確かです。しかし、共生社会の実現を目指すにあたっては、「障害者にできないことが存在するのは、企業側が障害によって生まれる障壁を取り除く努力をしていないから」という考え方が一般的になりつつあります。そのため、合理的な理由がある場合を除き、基本的には障害者が就けない職は存在しないといっても良いでしょう。ここでは、採用時に障害者差別に該当しがちな事項について解説していきます。

 

求人への応募を限定する

 

障害者だからという理由で障害のある人の応募を拒否することは差別に当たります。以下のような事柄に注意しましょう。

  • 障害者であることを理由に、障害のある人に対してのみ特定の資格保持を応募要件にする

この事例では、「業務を遂行するうえで特別必要ではないにもかかわらず、障害者を応募させないためにあえて条件を設けている」ことが、障害者に対する差別に該当します。

特定の資格保持を条件とする場合も、障害者が応募できない可能性があるため、注意が必要です。もちろんその資格が業務遂行のうえで特別必要なものであれば、障害者に対する差別にはなりません。

  • 採用基準を満たす応募者が複数名存在したとき、労働能力を判断基準とせず、障害のない人を優先的に採用する

企業の採用活動には、「採用自由の原則」があるため、雇用主がどのような者をどのような条件で雇用するかは自由とされています。しかし、障害者雇用促進法34条では、募集・採用において障害者に対して均等な機会を与えなければならないと定められており、障害者であることを理由に採用候補から外すことは禁じられています。従業員を採用する際に重要なのは、求職者がその業務を行う上で必要な能力を持っているかどうかです。企業は、募集・採用において均等な機会を与え、公正な判断で採用者を決めるようにしましょう。

また、「心身ともに健康な方」という応募条件を設ける場合も注意が必要です。この表現は、直接的には差別に該当しないものの、障害や難病のある人の応募を拒絶している印象を与える可能性があります。従って、業務を遂行するうえで必要な能力を具体的に示すなど、障害や難病のある人が応募しづらい印象を与えないように配慮が必要です。

 

採用条件に差がある

 

従業員を募集する際には、業務に必要な採用条件を掲載する必要があります。しかし、採用条件においても、障害者と健常者に差を設けることは重大な差別になるので注意しましょう。例えば、障害者に対してのみ長い試用期間を設けるのも、障害者差別に当たります。一方、本来であれば雇用継続は難しいものの、時間をかけて能力や適性などを見極めたいといった、合理的な理由のもと試用期間を延長することは差別には当たりません。

また、特例子会社を設置している場合、障害者に対して親会社への応募は受け付けず、特例子会社のみの応募を受け付けることも差別に当たります。この場合、障害を理由に親会社への応募を拒否することになるためです。

なお、「障害者専用求人」は、障害者を有利に取り扱っているため差別には当たりません。当該求人は正社員以外のものが多く、賞与や昇進、退職金などの待遇が正社員と異なりますが、これも差別にはなりません。障害のある人が遂行できる業務を与えることによって、特定の業務に従事する従業員として雇用管理をするためとされているからです。

また、障害者専用求人であっても、健常者と等しい業務内容・業務量である場合は、雇用条件に差を設けることはできません。

 

 

 

【入社後】障害者雇用における差別の具体例

 

 

障害を持つ従業員が働くためには、さまざまな困難を解決していかなければなりません。企業は、これらの困難を積極的に取り除き、障害者が能力を発揮できる環境を構築する必要があります。ここでは、職場で働く障害者への差別について解説します。

 

配置に差がある

 

障害者雇用制度や特例子会社の実例を知っていると、「障害者と健常者はそれぞれ別の仕事を行う」ことが当然のように感じている人もいるかもしれません。しかし、障害者であることを理由に特定の仕事を割り当てることは重大な差別に当たります。障害者に、健常者と違う仕事を割り当てる場合にポイントとなるのは、「労働能力」です。労働内容で差別をしてはいけないとはいっても、労働能力が伴わない従業員にはすべての仕事は任せられません。そのため、障害のある従業員に特定の業務を与えたり、健常者とは配置に差を付けたりする場合は、障害特性や能力、適性などを考慮したうえで、合理的な判断のもと決定しなければなりません。

 

低い賃金を設定する

 

賃金においても、障害の有無ではなく、労働能力によって決定しなければなりません。しかし、実際には、最低賃金よりも低い賃金で働く障害者は存在します。このような賃金形態は、最低賃金法7条第一号に定められている、「最低賃金の減額の特例」が根拠とされています。同条において、使用者が都道府県労働局長の許可を受ければ、障害によって著しく労働能力が低いとみなされる人に対して、最低労働賃金額からその労働能力に応じて減額した額を賃金として設定することが認められているのです。しかし、単に障害があるだけでは、許可の対象とはならないため注意が必要です。その障害の程度が業務の遂行に、直接、著しい支障を与えていることが明白である場合でなければ、減額の特例許可申請は通りません。

 

昇給や昇格を遅らせる

 

障害者であることを理由に、昇給や昇格に特別な条件を設けるのも、差別に当たります。昇進や昇給を決定する際は、労働能力や職務態度を適正に判断し、その判断基準は健常者と同等にしなければなりません。障害者であることを理由に昇進や昇給をしないケースや、障害のある従業員にのみ上司の推薦を昇進の要件とするケース、などはそれぞれ違法なので、注意しましょう。そのほか、昇進基準を満たす従業員が複数人存在する場合、労働能力を判断基準とせず、健常者を優先的に昇進の対象とする場合も同様です。

また、降格に関する差別にも気を付けましょう。以下が差別となる具体例です。

  • 労働能力を判断基準とせず、障害者であることを理由に降格させる
  • 障害のない従業員に対しては成績が最低の者のみを降格の対象とし、障害のある従業員に対しては成績が平均以下の者を対象とする
  • 降格基準を満たす従業員が複数人存在する場合に、労働能力を判断基準とせず、障害のある従業員を優先的に降格の対象とする

 

 

 

 

 

 

職場における障害者への差別を防止するための対策

 

 

どのような事項が障害者差別に当たるのか、障害者雇用を始める企業においては、事前に十分に把握しておく必要があります。しかし、障害のある従業員に対する日々の対応や、昇給・昇進などの決定は所属課など、小さな組織単位でされる場合が多いでしょう。そのため、障害者差別に関する知識は、従業員一人ひとりが身に付けておく必要があります。ここでは、障害者差別を生まない企業組織の構築方法について解説します。

 

障害者雇用に関する社内教育を実施する

 

障害者をはじめとするマイノリティの人達と共に働く組織づくりは、現代の社会全体の大きな目標です。しかし、人間の思想はさまざまであるため、年代や属性によっては、正しい理解が進んでいない場合もあります。そのため、徹底した社内教育を実施し、障害者雇用への理解を深める必要があるでしょう。できれば障害者雇用を行う前に、障害者雇用の必要性や、合理的配慮の考え方、そして差別について、周知することが大切です。

障害者雇用に関する社内教育については、民間企業からも資料が提供されているほか、厚生労働省のサイトからも資料がダウンロードできます。そのほかにも、障害者の職場実習を実施して、障害者を受け入れる体験をしたり、すでに障害者雇用を行っている近隣の企業を見学したりするなど、自社に合った方法で従業員の理解を深めましょう。

 

支援体制を構築する

 

障害のある人を初めて雇用する際や雇用人数を拡大する場合、現場の不安や負担が大きくなることが考えられます。トラブルを防ぎ、障害者がいきいきと働ける組織をつくるためにも、現場への支援体制の構築が大切です。障害者雇用に関しては、障害者就業・生活支援センターや就労移行支援事業所などの機関や、企業の障害者雇用をサポートする事業者のサービスが利用できます。障害者を雇入れる前はもちろん、雇入れた後も定期的なサポートが受けられるように連携を深めましょう。

 

 

 

まとめ

 

 

障害者雇用促進法の前身である、身体障害者雇用促進法が誕生したのは1960年です。当時から現在までは、障害者の働く環境を構築・改善しようと、官民がたゆまぬ努力を重ねてきた歴史があります。それは、障害者への差別意識を是正する意味合いも含んでいました。官民の努力の甲斐あり、障害者への差別は改善しつつあるものの、現代においても細心の注意を払わなければならないことに変わりありません。特に雇用に関する事項については、業務上の成果や職務態度が雇用条件に直結するシビアな面があるため、障害者差別と正当な雇用関係の線引きが難しい場合もあります。事業主はじめ、障害者雇用に関わるすべての人が、障害者差別に関して関連する法律を熟知しておく必要があるでしょう。

H&Gでは、障害者雇用サポート事業に長年従事している者や福祉関係の資格保有者が、障害者の雇用から業務、管理まで、ワンストップでサポートしております。障害者雇用をご検討の企業様は、障害者雇用サポートの実績豊かなH&Gにぜひご相談ください。