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【コラム#43】障害者雇用で業務切り出しはどうしている?ウェブアクセシビリティ診断とは?

コラム42#では、障害者雇用における業務切り出しというテーマで、
ウェブアクセシビリティ診断という選択肢についてふれました。
アクセシビリティという単語が、聞きなれない方も多いのではないでしょうか?

現在の私達の生活には、スマートフォンやタブレットなど、様々なデバイスが欠かせないものとなりました。
それによりウェブの利用環境や利用者の多様化が進み、情報アクセシビリティへの関心がますます高まっています。
また、国内外の法整備が進んでおり、事業主が対応を迫られることも増えています。

ウェブアクセシビリティとは、

「ウェブサイトやウェブコンテンツを提供する上で、考慮すべき項目の1つ」と言われています。

今回のコラムでは、「アクセシビリティの概要」や「ウェブアクセシビリティ」に関連する
ことについて、
ご理解を深めていただけるようご紹介できればと思います。

※目次

1、ウェブアクセシビリティとは何か?
2、ウェブアクセシビリティが担保されている状態は?
3、ウェブアクセシビリティ対応は自社には関係ない?
4、ウェブアクセシビリティに関連した国内外の法律や訴訟について
5、ウェブアクセシビリティ診断とは

6、まとめ 

 

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ウェブアクセシビリティとは


アクセシビリティは、英語では“Accessibility”と書きます。
この単語は、Access(近づく・アクセスする)+Ability(能力・~できること)に分解することができます。
意味は、「近づきやすさ」「利用のしやすさ」「便利であること」と訳されています。

アクセシビリティは障害者に限ったことではない


アクセシビリティと聞くと、

「障害者の方向けの対応をすること」というイメージを持つ人が多いかもしれません。

実はそれだけではなく、加齢による現象(老眼で見えづらい)や、
ケガなどで一次的に何かをしづらいことも、アクセシビリティの問題になります。

ウェブアクセシビリティとは、

「障害者や高齢者など心身の機能に制約のある人でも、
様々な利用者が、環境や状況でウェブで提供されている情報にアクセスして利用できること。
または、その到達度を意味しています」

 

ウェブアクセシビリティが担保されている状態は?


では「ウェブアクセシビリティが担保できている状態」とは、
どういう状態のことを指すのでしょうか?

一般的には、こちらの状態が望ましいと言われています。

・目が見えなくても情報が伝わる・操作ができること
・キーボードだけで操作できること
・一部の色が区別できなくても情報が欠けないこと
・音声コンテンツや動画コンテンツでは、音声がきこえなくても何を話しているかわかること

もともとウェブは、最終的なアウトプットの形を変更することができるので、
アクセシビリティを担保しやすいメディアといわれています。
映像や紙媒体と違って、自分の好きな方法を選択しやすいのです。

アクセシビリティは誰のためのものなのか?


ウェブアクセシビリティは障害者や高齢者の為のものだけではありません。
そのことをより知るためには、ウェブサイトの歴史を知ると理解が深まります。

1991年、世界で最初のウェブサイトが公開され、誰もがウェブを自由に使えるものになりました。

HTTP、HTML、CSSなどをウェブの根幹となる技術を開発したティム・バーナーズ・リーは、
そもそものウェブの開発思想として

「誰でも使えること=アクセシビリティ」を念頭に設計されています。


彼はこのような言葉を残しています。

ウェブの持つパワーはそのユニバーサル性にある。
障害の有無に関係なく、誰もがアクセスできることがウェブの本質なのである
そして彼は、
誰でも自由に公開された仕組みを使えるように推進することを目的として、
W3C(World Wide Web Consortium)を創設します。

さらにW3Cは、ウェブに関する様々な仕様を策定するW3Cによるガイドライン
WCAG(Web Content Accessibility Guidelines ウェブコンテンツアクセシビリティガイドライン)
を1999年に策定しています。





アクセシビリティ対応は自社には関係ない?


ここまで読んで、理想は分かるし取り組みが重要なのは分かるけど、

「うちはBtoBの商材しか扱っていないし、障害者や高齢者の人が対象となる商品は扱っていないから、

アクセシビリティ対応は必要ないよ」

と仰るかもしれません。ですが、本当にそうでしょうか?

いつ・誰が・どうなるか分からない

ウェブを利用するために必要な基本操作は、見たり、聞いたり、読んだり、入力したりなどの操作があります。

例えば高齢のユーザーは加齢によって視力や聴力が低下していたり、指先の細かな動作が難しくなったりします。

また人は環境や状況が変化することで、突然ウェブの使いづらさを感じる場合があります。

・電車内で動画を見たいのにイヤホンを忘れた
・メガネを忘れてきたので目が疲れやすい
・利き手を怪我してマウスが使えない

もしかすると、既存取引先や新規リードの担当者が、上記のような状況におかれることがあるかもしれません。
または、株主がそういった状況下におかれていることもあるかもしれません。
その時に、自社のウェブアクセシビリティ品質が低いと、何かしらの機会損失を招く可能性があるかもしれませんよね?

※世界保健機関(WHO)ではロービジョンとは、良い方の眼の矯正視力で0.05以上0.3未満をロービジョン(low vison)と定義しています。

※公益社団法人日本眼科医会 ロビージョンケアとは

ウェブアクセシビリティの恩恵を受ける人は日本だけで少なくても436万人以上


厚生労働省が平成28年度に行った「生活のしづらさなどに関する調査」等の調査に基づいた
令和4年度の障害者白書によると障害者の数は、

身体障害436万人
知的障害109万4千人
精神障害419万3千人となっています。

これを人口千人当たりの人数でみると、

身体障害者は34人、
知的障害者は9人、
精神障害者は33人となります。

複数の障害を併せ持つ者もいるため、単純な合計数にはにはならないものの、
国民のおよそ7.6%が何らかの障害を有していることになるのです。

ウェブアクセシビリティに関連した国内外の法律や訴訟ついて

 


アメリカにはADA(障害を持つアメリカ人法)という法律があります。
このADAに基づいたウェブアクセシビリティ提訴件数は、年々増加しています。
最近では、ヨーロッパやEU諸国でも法整備が進んでおり、
フランスでは、年間売上が一定金額以上ある企業には、ウェブアクセシビリティ診断の確保が求められています。

では、日本ではどうでしょうか?

日本は、2021年6月に障害者差別解消法を改正しました。

これにより、民間事業者でもウェブの情報に対するアクセシビリティ対応が義務化され、
2024年までに対応が求められるようになりました。

具体的内容はまだ発表されていませんが、
諸外国の対応を見ているとある程度、強制力が働く内容になることが予想できるのではないでしょうか?

ウェブアクセシビリティ診断とは

上記のような背景があり、ウェブアクセシビリティ診断の需要も増加しています

ウェブアクセシビリティ診断とは、現在のサイトにある気づきにくいアクセシビリティ上の問題点を把握し、
アクセシビリティ向上への課題を明らかにすること。
この課題をもとに自社サイトのアクセシビリティ対応化を図ります。
現在、ウェブ制作会社が、このウェブアクセシビリティ診断を担われるケースも増えています。

H&Gが提供するウェブアクセシビリティ診断では、視覚障害・聴覚障害・精神障害・発達障害・肢体不自由など、
自社で雇用した障害当事者がウェブサイトのアクセシビリティ診断を行えるようなサポートを提供しております。

実際に障害者がサイトを見て診断するため、機械的に検出したり健常者がマニュアル的に診断するよりも、

「実際に使えるアクセシビリティ」が実装できると顧客からの評価が高まっています。

まとめ



いかがでしたでしょうか?

「アクセシビリティは、万人のためのものです」

ですが、残念ながら全てのウェブサイトがアクセシブルな状態にはなっていないという現状があります。
国内の法整備も徐々に進んでいくでしょうから、需要は高まっていきます。

この機会に、自社サイトのウェブアクセシビリティ診断を外部のウェブ制作会社に委託するのではなく、
「実際に使えるアクセシビリティ」とするために、自社の障害者雇用枠で担ってみてはいかがでしょうか。


参照・引用
USable.net 2022 MIDYEAR REPORT – ADA Digital Accessibility Lawsuits
デジタル庁 ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック
厚生労働省 平成28年生活のしづらさに関する調査
内閣府 令和4年 障害者白書

この記事を書いたのは・・・

 

株式会社H&G/精神保健福祉士 叶内 公基

株式会社H&Gにて障害者雇用支援サービス「障害者サテライトオフィス雇用プラン」のスキーム開発から広報・導入支援等を担当。
人材紹介事業や障害福祉サービス事業の事業所開設や事業所運営、人材マネジメントの経験を活かして、障害者雇用に悩まれている企業の課題解決に取り組んでいる。またグループ会社のH&Hグループでは、グループ内の障害者雇用の促進を担当。障害者雇用の対応に悩まれている人事担当者に寄り添うことを大切にしている。

2022年より障害当事者が行う「ウェブアクセシビリティ診断」のサービスを中心に障害者雇用についての情報発信を続けている。