2023年3月に厚生労働省は、「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」を発表しました。
障害者雇用促進法の改正によって民間企業の障害者法定雇用率は、2024年4月に2.5%・2026年7月に2.7%と引き上げが予定されています。この記事では、まず「令和4年度の障害者雇用の集計結果」を振りかえりをして、2024年以降の障害者法定雇用率等についてご紹介致します。
※目次
5.週所定労働時間20時間未満の方の障害者法定雇用率の算定について
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令和4年度(2022年) 障害者雇用状況の集計結果について
2024年以降の障害者雇用について触れる前に、2022年12月に発表された「障害者雇用状況の集計結果」を確認し、
民間企業や公的機関などにおける障害者雇用の状況を見ていきましょう。
障害者雇用の実数および実雇用率は、それぞれ過去最高を更新
2022年(令和4年)の民間企業における障害者雇用の状況は、前年比16,172人増加し613,958人になりました。
実雇用率は0.05ポイント上昇し、2.25%になっています。
そして、法定雇用率達成企業の割合は、48.3%と昨年から1.3%上昇しています。
身体障害の雇用数が減少。精神障害者の雇用者数は過去最高だが離職率は高い
2022年身体障害者の雇用者数は、前年比−1,301人だったのに対して、知的障害者の雇用者数は5,761人となっています。
精神障害者の雇用者数は、11,710人増えています。雇用数も毎年増え続けています。
全体の離職率は7.14%です。その中で精神障害者の離職率は、10.21%と3障害(身体・知的・精神障害)の中で一番高くなっています。
就労定着が難しい側面が数字からも確認できます。
社員数1,000人以上いる企業の法定雇用率達成割合は62%以上
企業別に障害者雇用率の達成状況を見ていきます。
43.5人~100人の企業が、障害者雇用率の達成に大きく貢献しているのが分かります。
そして、500人~1,000人の企業の障害者雇用率達成率は、50%台に迫っています。
社員数1,000人以上の企業は、依然として社会的責任の達成に向けて貢献していることがわかります。
ここでのポイントは
●身体障害者の雇用数が減少し、精神障害者の雇用は近年変わらずトレンド
●精神障害者の離職率は3障害(身体・知的・精神)で一番高い
という点ではないでしょうか。
参照・引用:令和4年 障害者雇用状況の集計結果
障害者法定雇用率は民間・国ともに段階的に引き上げ
さて民間企業の障害者法定雇用率は、2023年は現状の2.3%を維持。2024年から段階的に2.7%まで引き上げられます。実際には、2024年4月に2.5%・2026年7月に2.7%と段階的に雇用率の上昇が予定されています。準備期間はありますが、早めの対応が求められます。
では、国や地方公共団体の雇用率についても確認をしていきましょう。
国及び、地方公共団体等の障害者法定雇用率
2023年(令和5年度)は2.6%
2024年(令和6年度)4月1日から2.8%
2026年(令和8年度)7月1日から3.0%
このように民間企業と同様に段階的に引き上げられていきます。
日本の障害者雇用はドイツを参考に
日本の障害者雇用の仕組みは戦後から始まっています。1960年に「身体障害者雇用促進法」ができ、障害者の雇用促進を進めてきました。
その時、参考にされたのがドイツの障害者法定雇用制度といわれています。
細かい部分は日本と異なるものの、ドイツでは、従業員20人以上の企業ごとに、全従業員の5%に該当する数の障害者雇用をしなければならないとされています。
民間企業は、障害者法定雇用率3.0%時代を見すえた対応の検討を
障害者雇用促進法の第43条2項によると、「少なくとも5年ごとに法定雇用率を見直す」ということになっています。
前回、民間企業の障害者法定雇用率が2.3%になった際は国、地方公共団体は2.6%、都道府県等の教育委員会は2.5%でした。
過去の比率を見ると2026年以降の見直しのタイミングで、障害者法定雇用率が3.0%になることも十分に考えられるのではないでしょうか。
除外率の引き下げ
除外率とは、障害者の就業が困難だとされる業種を対象に雇用義務の軽減を認める制度になります。
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主な業種としては船舶運航や幼稚園、道路顧客運送業や林業・鉄道業・医療業・介護(老健)・建設業などがあげられます。業種ごとにそれぞれ除外率が設定されていますが、2025年4月以降そこから10ポイント引き下げられます。
精神障害者の算定特例の延長
精神障害者の短時間労働者(週20時間~30時間未満の労働者)の実雇用率の算定に関しては、
2023年3月まで1カウントとする特例措置がもうけられていましたが、職場定着を進める観点から当面の間、雇用率上、雇入れからの期間等に関係なく、1カウントとして算定できるようになります。
週所定労働時間20時間未満の方の障害者法定雇用率の算定について
週所定労働時間が10時間未満以上20時間未満の精神障害者、重度身体障害者及び重度知的障害者については、障害者法定雇用率上、0.5カウントとして算定できるようになります。勤務時間が短時間ですので、「短い時間で働きたい」という障害者の雇用拡大につながるかもしれません。ですが一方で、受け入れ側の企業としてはどういった業務を担って頂くのか、雇用継続をいかにサポートしていくのかどうか、しっかりとしたプランがなければ、せっかくの新しい制度も活かしきれないかもしれません。
参照・引用:障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について – 厚生労働省
まとめ
いかがでしたでしょうか?
2022年(令和4年)の障害者雇用状況と障害者雇用促進法改正についてのポイントは
●法定雇用率達成率は微増して48.3%(前年度+1.3%)
●身体障害者の雇用数が減少し、精神障害者の雇用は近年変わらずトレンド
●精神障害者の離職率は高い。ただ週20時間以上30時間未満の方のカウント優遇は継続
●短時間勤務(週20時間未満)の障害者も障害者法定雇用率のカウント対象へ
こういった点になります。
以前、法定雇用率が1.8%から2.0%になる時も企業や団体は対応を迫られ、現場の担当者は対応に追われました。それが今では2%後半になりつつあります。人事ご担当者様は、こちらのポイントを押さえつつ自社の障害者雇用施策についてご検討いただければ幸いです。
H&Gでは、障害者雇用でお困りの人事担当者様や障害者雇用情報収集をされている方のお役に立てるよう、
コラムやウェビナーで情報発信をしております。是非、チェックしてみて下さい!!
この記事を書いたのは・・・
株式会社H&G/精神保健福祉士 叶内 公基
株式会社H&Gにて障害者雇用支援サービス「障害者サテライトオフィス雇用プラン」のスキーム開発から広報・導入支援等を担当。
人材紹介事業や障害福祉サービス事業の事業所開設や事業所運営、人材マネジメントの経験を活かして、障害者雇用に悩まれている企業の課題解決に取り組んでいる。またグループ会社のH&Hグループでは、グループ内の障害者雇用の促進を担当。障害者雇用の対応に悩まれている人事担当者に寄り添うことを大切にしている。
2022年より障害当事者が行う「ウェブアクセシビリティ診断」のサービスを中心に障害者雇用についての情報発信を続けている。