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【コラム#33】障害者雇用の除外率とは?法定雇用率についても解説

障害を持った方が雇用されやすくするため仕組みの1つが、「障害者雇用制度」です。
障害者雇用制度では、一定規模以上の企業や公共団体に対し、定められた割合以上の障害者を雇用する義務を課しています。
例えば、民間企業の場合、2021年3月1日からは2.3%の障害者雇用率が適用されています。しかし、健常者にも「向き・不向き」があるように、なんらかのハンディキャップを持っている障害者にとっては、就くことが難しい職業もあるでしょう。

そのため、一部の業種における障害者雇用率には、「除外率」が適用されています。

除外率は、どのような職種に適用されるものなのでしょうか。この記事では、障害者雇用率制度を説明するとともに、除外率制度について詳しく解説します。

 

※目次

1.障害者雇用率制度とは

2.障害者雇用の除外率とは

3.除外率設定業種の障害者雇用

4.まとめ

 

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障害者雇用率制度とは

 

まずは、除外率が適用される障害者雇用率制度についておさらいしてみましょう。

 

 

障害者雇用率

 

障害者雇用率とは、「障害者雇用促進法」という法律のなかで定められている、企業や公共団体などが雇用すべき障害者の割合のことをいい、法定雇用率とも呼ばれます。障害者雇用率は、社会情勢や雇用される労働者数の変遷によって、少なくとも5年に一度は見直されることになっています。直近の改正では、2021年3月に0.1%の引き上げが行われました。

常用雇用者数が100人以上の企業で、障害者雇用率が未達成の場合、法定雇用障害者数に不足する障害者1人につき、月額5万円の障害者雇用納付金を納付しなければなりません。この納付金は、障害者雇用率を達成した企業や、障害者雇用をこれから始めようとする企業などに対する、さまざまな助成金の財源になっています。このように、障害者雇用率は、障害者雇用に取り組んでいる企業と、そうでない企業における、障害者雇用にかかる費用負担の格差を埋める働きもあるのです。

企業や公共団体などに、障害者雇用率の達成を義務付けたことによって、我が国の障害者の労働市場は大きく成長しました。
近年では障害者雇用率の達成企業数や障害者の実雇用者数も大きな伸びをみせており、働く障害者の姿は決して特別なものではなくなっています。

一方で、法定雇用率未達成の企業はいまだ半数におよび、特に中小企業において伸び悩んでいる現状があります。障害者を雇用するためには、必要な設備の準備や、サポート人員の教育などにコストがかかったり、業種によっては障害者のための仕事を用意するのが難しかったりするため、資本力のない中小企業にとっては決して簡単なことではないのです。
現在、このような企業に対して、助成金活用の周知や、行政によるサポート体制の構築が急がれています。

 

法定雇用率の対象者

 

障害者雇用促進法では、障害者の定義を「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」と定めています。

このうち、障害者雇用率制度や法定雇用率の対象となるのは、

「身体障害者手帳」
「療育手帳」
「精神障害者保健福祉手帳」

のいずれかを所有している人となっています。

そのため、企業が障害者雇用率を達成するためには、手帳を持った障害者を採用しなければなりません。
また、障害者雇用率が適用されるのは、「継続して勤務する労働者」が一定数以上いる企業です。

「継続して勤務する労働者」とは、正社員など、契約期間の定めがなく雇用されている労働者や、

有期雇用契約ではあるものの1年以上の雇用実績やその見込みがある者、

週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者です。「継続して勤務する労働者」には、雇用形態による制限はなく、パートやアルバイトなど非正規雇用者も含みます。

2021年現在の民間企業における障害者雇用率は2.3%となっていますから、43.5人以上の「継続して勤務する労働者」が在籍していれば、法定雇用率を遵守する義務がある企業であるということになります。

 

法定雇用率の計算方法

 

上述の通り、障害者雇用率は数年ごとに引き上げが行われています。障害者雇用率は、常用労働の障害者と失業中の障害者の総数を鑑みて算出されています。以下の計算式で、その年の障害者雇用率を算出することが可能です。


  • 障害者雇用率 = 身体・知的・精神障害を持つ常用労働者+失業者 ÷ 障害をもたない常用労働者+失業者



また、企業ごとに雇用しなければならない障害者数は、企業の常時雇用者数に障害者雇用率のパーセンテージを掛け、小数点以下を切り捨てると算出できます。例えば、2021年現在、常用雇用の労働者数が250人である企業の場合、以下のような計算式となります。

  • 250人 × 2.3%(0.023) = 5.75


つまり、この場合、少なくとも5人の障害者を雇用しなければ、法定雇用率は達成できません。

 

 

障害者雇用の除外率とは

 

 

障害者雇用率の定めがある一方で、業種や職種の特性によっては、障害者の就労が難しい場合もあります。そのため、「障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種」については、特例的に雇用義務の割合が引き下げられる「除外率制度」が設けられています。

 

障害者雇用除外率の計算方法

 

除外率制度は、常用労働者数の一部をパーセンテージによって除外することで、障害者の雇用義務数を下げるという仕組みです。この除外率は職種ごとに異なります。まずは、除外率の計算方法を説明します。

ここでは、常用労働者数が500人規模の企業について考えてみましょう。

通常の一般企業における障害者雇用率に基づいて計算した場合、500人規模の企業では、11人の障害者を雇用する義務があります。
しかし、その企業の業種が、40%の除外率が適用されている場合、以下のような計算式で雇用義務のある障害者数を算出します。

  • 500人-200人(500×0.4) × 2.3%(0.023) = 6.9

このように、雇用義務のある障害者数が6人と、大きく軽減されることになります。

 

民間企業の除外率

 

次に説明するのは、職種ごとの除外率です。傾向として、業務を行ううえで人の命がかかっていたり、一定レベルの危険が想定されたりする職種が該当していることがわかります。

 

 

公的機関の除外率

 

公的企業の職種については、障害者雇用促進法の施行令・別表第一および第三に定められています。このうち別表第一に含まれる職種については、現在はまったく障害者雇用の義務が課せられていません。ここで挙げられた職種は、どれも高度な判断力と執行能力が必要とされるため、障害者雇用には不向きとされているのです。

以下が別紙第一に含まれる職種の一部です。

  • 皇宮護衛官
  • 自衛官
  • 刑務官
  • 入国警備官
  • 麻薬取締官、麻薬取締員
  • 海上保安官
  • 消防団員 

 

また、別表第三に属する職種については、民間企業の場合と異なり職種ごとの除外率の設定はありませんが、別表第四に別途設定されている除外率が適用されます。

  • 裁判官
  • 検察官
  • 国務大臣
  • 法廷警備 など

 

 

 

除外率に関する近年の動き

 

実は、除外率制度は、2004年を最後にすでに廃止された制度です。現在は経過措置として制度が機能していますが、将来的には完全に撤廃されるものとして、徐々に割合を引き下げる予定となっています。
実際に、上述の民間企業の除外率は、2010年にそれぞれ10%ずつ引き下げられています。
2010年以降、除外率の引き下げは行われていませんが、今回の障害者法定雇用率の引き上げと一緒に除外率の見直しがきまりました。

 

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除外率の廃止に向かう背景には、「ノーマライゼーション」という理念があります。ノーマライゼーションとは、1950年代に北欧諸国で生まれた考え方であり、「高齢者や障害者などを隔離・保護するのではなく、ともに助け合いながら共生すること」を正常な社会の在り方として掲げています。障害があっても地域社会において不自由なく暮らす「脱施設化」など、先進国の社会福祉に大きな影響をもたらした考え方も少なくありません。

日本における障害者雇用促進法にも、このノーマライゼーションの考え方が活かされており、現代の社会福祉の基礎となる考え方といえるでしょう。

 

 

 

 

除外率設定業種の障害者雇用

 

 

除外率が設定されている業種では、障害者を雇入れることは諦めなければならないのでしょうか?ここからは、除外率が設定されている業種でありながらも、障害者雇用を推進している企業の事例をご紹介します。

 

医療法人和光会(医療・福祉業)

 

1951年に設立された医療法人和光会は、同法人の中心となる恵寿病院のほか、介護医療院、老人保健施設、特別養護老人ホーム、盲養護老人ホームなどを運営しています。
同法人では、事務局長および障害者職業生活指導員でもある管理部門部長を中心に、障害のある職員へのサポートや障害の程度に応じた部署配置など、さまざまな配慮のもと障害者雇用を行っています。


同法人が障害者雇用において最も気を遣っているのは、コミュニケーションです。

採用直後の面談以外にも定期的な面談の機会を設け、コミュニケーション不足にならないように配慮しています。日常においても積極的に声をかけるなど、職場全体で障害を持つ職員を気にかける雰囲気づくりをしています。

 

株式会社クローバーコネクト(運輸・物流業)

 

株式会社クローバーコネクトは、生活協同組合ユーコープの宅配サービス「おうちCO-OP」の商品仕分けを行う子会社として、1989年に誕生しました。神奈川県内の拠点にて注文商品の仕分けや品質チェックなどの業務を担っています。


同社は設立当初より従業員の大半がパートタイマーであったため、あえて障害者を雇用していませんでした。しかし、2012年ごろ近隣の養護学校から実習協力の依頼を受けたことで、パートタイマーでの雇用を希望する障害者が多いことを知りました。そこで、本格的に障害者を雇用する取り組みを開始し、現在に至ります。


また、社内において、障害者雇用率8%を目指すために3か年計画を策定し、障害を持つ従業員の職場定着を目指した受け入れ態勢の強化や、各事業所へのジョブコーチの配置などの施策を講じています。また、作業方法や業務マニュアルの見直しを行い、誰もがわかりやすい教育・指導方法を確立させました。視覚情報が優位な障害者のために、最近では画像をもとにしたマニュアルだけでなく、動画再生サイトを用いて、いつでも作業方法が確認できる体制を整えています。

 

Peach Aviation株式会社(航空運送事業)

 

2012年にLCC(ローコストキャリア)の航空会社としてスタートしたPeach Aviation株式会社は、成田空港や関西国際空港をはじめとした日本の主要空港に路線を展開し、事業を拡大しています。同社では、以前よりダイバーシティの理念を推進しており、2018年に障害者の専任部署を設立しました。障害者スタッフの採用や育成、合理的配慮の検討、業務内容の切り出しと調整、障害についての啓蒙や理解研修の実施など、さまざまな施策を実施しています。

障害者専任部署の業務内容は幅広く、大きな分類は、事務系・清掃系・他部門業務の3つです。本人の希望をできる限り反映させながら、最も高いパフォーマンスを発揮できる部門に採用しています。途中で希望が変わったり、適性を見出されたりした場合は、契約期間にかかわらず他の部門にもチャレンジすることが可能です。

障害者の専任部署を設け、丁寧なサポートを企業全体で心掛けたところ、障害者の離職率や生産性に大きな改善が見られました。また、障害者スタッフが担う業務は重要度の高いものも多く、やりがいを感じられる点も障害者がいきいきと働ける要因になっているようです。

 

 

 

まとめ

 

 

この記事では障害者雇用における除外率の解説をしました。除外率が設定されている職業は、自他に危険が生じる可能性があったり、高い状況判断力が必要とされたりするため、除外率の設定もやむを得ないと考える方も多いでしょう。

しかし、障害者といっても、障害の特性や程度はさまざまです。障害者だからという理由で特定の職種への道が閉ざされてしまうのは、ノーマライゼーションの理念に背くことになるでしょう。このような理由から、除外率は近い将来廃止されることになっています。


現在、障害者雇用率の引き上げも徐々に行われていることから、障害者雇用の求人の幅が広がり、選択肢の増加につながるはずです。


H&Gでは障害者雇用に関するノウハウを蓄積しています。障害者雇用をご検討の方は、長期雇用実績のあるH&Gまでぜひお気軽にご相談ください。