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【コラム#41】2023年度以降の障害者法定雇用率について

障害者法定雇用率は5年に1度、見直しされることになっています。

厚生労働省の労働政策審議会(障害者雇用分科会)では、障害者雇用に関する様々なことが議論・審議し、
雇用施策の充実強化を国に対して提言する為に会議をしていますが、
2022年6月17日に障害者雇用施策の充実強化についての意見書が厚生労働大臣に提出されました。

この記事では、2023年度移行の障害者法定雇用率がどうなるのか、
労働政策審議会(障害者雇用分科会)の一部意見をご紹介致します。

 

※目次

1.2023年度以降の障害者法定雇用率は?2.5~2.6%?

2.週所定労働時間20時間未満の短時間労働者(障害者)の扱いについて

3.精神障害者の算定特例の延長

4.精神障害者に係る重度の取り扱い

5.除外率の引き下げによる障害者雇用の促進

6.まとめ

 

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2023年度以降の障害者法定雇用率は?2.5~2.6%

法定雇用率は、障害者雇用促進法の第43条(一般事業主の雇用義務当)の第2項によると、
少なくとも5年ごとに見直すことになっています。
法定雇用率は、労働者の総数や障害者である労働者の数などから算出される為、
その数字が変動すると法定雇用率も変動する仕組みになっています。

前回の引き上げ時期が2018年4月だったことを考えると、次回の見直しは2023年4月になるだろうと言われています。
2021年4月から民間企業では2.3%の法定雇用率が適応されていますが、
これは2018年度に法定雇用率が改定された際に引き上げられることが確定していて、激変緩和措置として段階的に引き上げたという背景があります。
前回の改定を考えると、今回は0.3%前後の上昇があるのではないかと関係者の間では話がでています。
そうなると、見直し後の法定雇用率2.5〜2.6%になるのではないかと推測されています。

もし法定雇用率が2.6%になった場合は、従業員数38名に対して、1名の障害者を雇用する必要がでてきます。

 

週所定労働時間20時間未満の短時間労働者(障害者)の扱いに関して


現在の障害者雇用率制度や障害者雇用納付金制度では、
週所定労働時間20時間未満での雇用は障害者雇用のカウント対象とされていません。

これは、通常の労働者の週の半分に満たない時間数の労働は、職業生活において自立しているとは言えないという考え方に基づくものです。
ですが、特に精神障害者は週20時間未満の労働者の割合が増加傾向にあります。
また、それを希望する新規求職者はいずれの障害種別でも一定数存在しています。

加えて障害者が症状の悪化や一次的な理由で週20時間以上働けなくなったとしても、
障害者本人の希望等を踏まえ、雇用を継続していくことが望ましいという理由から雇用機会を確保することは重要であり、
特に精神障害者と重度身体障害者及び重度障害者について、雇用率制度においての特例を設けることになりました。

算定に当たっては、1人をもって0.5カウントすることになっており、適用期限は区切られないようです。
また雇用義務の対象は週20時間以上の障害者ということで取り扱いの変更はなく、雇用率の算定式には週20時間未満の障害者を含めないことが適当とされました。

そして、週20間未満の雇用に留め置かれないよう、障害者本人が労働時間の延長を希望する場合、
事業主に対しては、能力に応じた労働時間の延長の努力義務が課されるようです。

参考資料:厚生労働省第122回労働政策審議会障害者雇用分科会資料_今後の障害者雇用施策の充実強化について

 

精神障害者の算定特例の延長

2018年4月からは精神障害者の雇用が義務化されるとともに、法定雇用率が引き上げられました。

その際、精神障害者の職場定着を進める観点から、
精神障害者の短時間労働者(週20時間~30時間未満の労働者)の実雇用率の算定に関しては、2023年3月まで1カウントとする特例措置がもうけられていましたが、職場定着を進める観点から、「当面の間、この特例措置を継続することが適当である」、としています。

精神障害者の就労定着率は、20時間以上から30未満勤務の方の1年後の定着率は60.4%と、
30時間以上から40時間未満の50.8%と比べて高い傾向にあります。

参考資料:厚生労働省 第74回労働政策審議会障害者雇用分科会「障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則の一部を改正する省令について 資料1-2

 

 

精神障害者に係る重度の取り扱い

 

 

現在、精神障害者は身体・知的障害者とことなり「重度」といった取扱いがありません。

「精神障害者の就労困難性と精神障害者保健福祉手帳の等級は必ずしも関係するものではない」

という様々な意見があることを踏まえ、精神障害者の「重度」という取扱いについては、
ただちにこれを設けるのではなく、引き続き検討することが適当であるとしています。

 

除外率の引下げによる障害者雇用の促進

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除外率制度については、2002年の法改正により廃止となっており、現在は経過措置として一部の業種にのみ認められています。
除外率は廃止の方向で段階的に引き下げ、縮小されてきました。
しかし、2010年の引き下げから、既に10年以上引き下げが行われていません。
その間、民間企業全体の実雇用率が上昇する中で、除外率を設定している業種の実雇用率についても着実な上昇が見られたため、
一律に10ポイントを引き下げることが適当とされています。
 
参考資料:障害者雇用分科会関係資料

 

障害者雇用納付金の適用範囲の拡大

 

 


障害者雇用納付金制度については、現在は常用労働者100人以上の事業主にまで対象が拡大されています。
以前は300人以上の事業主が適用対象でしたが、適用範囲の拡大が検討されています。

しかし、常用労働者100人以下の事業主については、雇用数が0人のところが多く、雇用率未達成企業が半数以上となっています。
また、中小企業を取り巻く雇用環境は、コロナ禍での経営環境の悪化や、雇用保険料の引き上げ、健康保険や厚生年金保険の適用拡大等、厳しいものとなっています。

その為、常用労働者100人以下の事業主への適用範囲の拡大については、検討が必要とされています。

 

就労継続支援A型事業所の利用者の取り扱い

 


就労継続支援A型の利用者は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスに位置付けられている一方で、
雇用労働者であるために、雇用率制度の対象となってるのはご存知でしょうか?
ですが、障害福祉サービスでの報酬が支払われていることや、A型についての在り方や役割について、
利用者や支援内容の実態等をふまえて整理を進めることなどから、

「障害者雇用率制度や障害者納付金制度からの除外の可能性も視野に入れ」つつ
引き続き検討していくことが適当となったようです。

現在、就労継続支援A型事業を運営されていて雇用率算定をされている企業は注意が必要ですね。

 

まとめ

 

いかがでしたでしょうか?2023年度以降に障害者雇用率が引き上げられることで、
障害者雇用について再度検討している企業も多いのではないでしょうか。
しかしながら、そうは言っても従業員の定着支援や業務の設定について悩まれることもあると思います。

H&Gでは本業に還元できる業務切り出しのお手伝いをしております。
来年度に向けて障害者雇用をご検討の方は、長期雇用実績のあるH&Gまでぜひお気軽にご相談ください。

 

参考資料:今後の障害者雇用施策の充実強化について(労働政策審議会障害者雇用分科会 意見書)

この記事を書いたのは・・・

 

株式会社H&G/精神保健福祉士 叶内 公基

株式会社H&Gにて障害者雇用支援サービス「障害者サテライトオフィス雇用プラン」のスキーム開発から広報・導入支援等を担当。
人材紹介事業や障害福祉サービス事業の事業所開設や事業所運営、人材マネジメントの経験を活かして、障害者雇用に悩まれている企業の課題解決に取り組んでいる。またグループ会社のH&Hグループでは、グループ内の障害者雇用の促進を担当。障害者雇用の対応に悩まれている人事担当者に寄り添うことを大切にしている。

2022年より障害当事者が行う「ウェブアクセシビリティ診断」のサービスを中心に障害者雇用についての情報発信を続けている。