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【コラム#14】障害者雇用は等級でカウント方法が変わる?障害別のカウント方法を解説

障害者雇用促進法では、障害者の雇用安定化を目的として、一定規模を超える民間企業に障害者の雇用を義務付ける制度を設けています。

これを「障害者(法定)雇用率」といいます。

雇用する障害者の必要人数は企業の規模などによって異なりますが、
障害者1人をそのまま1人としてカウントするとは限らないため、注意が必要です。
また、障害者を雇用した後、合理的配慮を継続的に実施しなければなりません。

この記事では、雇用すべき障害者の正確なカウント方法に加え、合理的配慮など障害者雇用時に抑えておきたいポイントなどを解説します。

 

※目次

  1. 障害者雇用率の考え方
  2. 障害の等級によるカウントの違い
  3. 合理的配慮を実施するステップ
  4. 障害者雇用時のポイント
  5. まとめ

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障害者雇用率の考え方

 

 

民間企業や国、地方公共団体、都道府県の教育委員会は、
組織の規模によって定められる「障害者雇用率」を満たす義務があります。

障害者雇用率を満たすためには、どのような障害者を何人雇えば良いのでしょうか。
障害者雇用率について詳しく見ていきましょう。

 

障害者雇用率制度とは

 

障害者雇用率制度は、「障害者雇用促進法」のなかで定められている制度のひとつです。

1960年に障害者雇用促進法の前身である「身体障害者雇用促進法」が制定され、
そのなかで初めて障害者雇用率が定められました。

しかし、当初の障害者雇用率は努力目標に過ぎず、現在のように法的義務として定められたのは、
1976年に民間企業に対する1.5%が最初になります。
その後も1988年には1.6%に引き上げられ、知的障害者が法定雇用率の算定基礎対象となる1998年には1.8%に引き上げられました。
障害者雇用率は少なくとも5年に1回は見直されるように定められており、その後も段階的に割合が引き上げられています。

2021年に行われた改正では、民間企業で2.3%と定められることになりました。
2.3%という数字は、43.5人以上の常用労働者を有する規模の企業では障害者を一人以上雇入れる必要があるということになります。

そして2023年に行われた改正では、段階的な障害者法定雇用率のUPが示されています。
まず、民間企業は2024年4月に2.5%。そして、2026年7月に2.7%になることが決まっています。


2.5%という数字は、40人以上の常用労働者を有する規模の企業では、障害者を一人以上雇入れる必要があるということになります。
そして2.7%は、37人以上ということになります。

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対象となる障害者の定義

 

では、障害者雇用率の対象となる「障害者」には、どのような定義がなされているのでしょうか。

障害者雇用促進法では、障害者の定義として「身体障害・知的障害・精神障害(発達障害を含む)、その他の心身の機能の障害があるため、
長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な者」と表記されています。

それぞれの障害については、以下のような定義がされています。

  • ・身体障害者は、視覚・聴覚・言語などの機能障害のほか、肢体不自由や内部障害を持つ障害者のことです。障害ごとに1級から7級までの等級が設けられており、1級に近づくほど重度の障害であるという判断がなされます。障害者雇用率の対象となるのは、1級から6級までと判定された障害、もしくは7級の判定が2つ以上ある場合です。

  • ・知的障害者は、知的機能の障害が発達期にあらわれ、日常生活において何らかの援助を必要としている状態を指します。知能指数(IQ)と日常の生活水準をもとにして、「軽度」「中度」「重度」「最重度」という4段階の等級に分けられます。

  • ・精神障害者は、統合失調症・そううつ病(そう病・うつ病含む)・てんかんの症状を持つ障害者のことをいいます。それに加えて、精神障害は症状の悪化によって就労が困難な場合もあるため、「症状が安定し、就労が可能な状態であること」という条件も定められています。

 

引用元:障害者の雇用の促進等に関する法律 | e-Gov法令検索

 

基本的なカウント方法

 

それでは、実際に障害者雇用率を用いて、雇用する必要のある障害者の数を算出してみましょう。
必要な障害者の人数を算出するには、以下のような式を使います。

 

自社の法定雇用障害者数=(常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×障害者雇用率(2021年3月現在は2.3%)

 

常用労働者とは、週の労働時間が30時間を超える労働者のことを指します。
また、短時間労働者は週の労働時間が20時間から30時間未満の労働者のことを指します。

ここで注意しなければいけないのは、短時間労働者の場合、1人分をそのまま「1」としてカウントせず、
短時間労働者は「0.5」としてカウントするという点です。
また、週労働時間が20時間未満の労働者は、障害者雇用率の対象にはなっていません。

 

障害の等級によるカウントの違い

 

 

上述の通り、障害者雇用率の計算では、基本的に常用労働者は「1」、短時間労働者は「0.5」と計算しますが、
障害の等級によって、実際の人数とカウント方法が異なる場合もあります。

ここからは、障害別のカウント方法について詳しく解説します。

 

身体障害の場合

 

1級・2級の判定があると「重度身体障害者」に当てはまります。

重度身体障害者に当てはまるときは、常用労働者は1人分を「2」、
短時間労働者は1人分を「1」としてカウントします。

 

知的障害の場合

 

知的障害者の場合、等級がA、もしくは1度・2度の判定がなされていると「重度知的障害者」に当てはまります。
身体障害者と同じく、重度知的障害者に当てはまるときは、常用労働者は1人分を「2」、
短時間労働者は1人分を「1」としてカウントします。

 

精神障害の場合

 

精神障害者にも症状による等級はありますが、「重度」という区分がないため上記のような例外はありません。

一方で、精神障害者が障害者雇用率の対象となったのが2018年からと比較的最近であるという背景もあり、以下の条件に当てはまる短時間労働者は1人分を「1」としてカウントする仕組みになっています。

・新規雇用より3年未満・もしくは精神障害者福祉手帳取得から3年未満である

・2023年3月31日までに雇用され、精神障害者福祉手帳を取得している

↓こちらに関しては制度についてのアップデートされ、
精神障害者の短時間労働者の雇用の算定特例の延長が決まっています。

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合理的配慮を実施するステップ

 

 

企業が障害者雇用率を未達成の場合、刑罰こそないものの、障害者雇用納付金を納める必要があったり、
その後改善しない場合は社名の公表などのペナルティがあります。


参考資料:厚生労働省 障害者雇用率達成指導の流れ


しかし闇雲に障害者を雇用して、障害者雇用率だけを達成しても、多くの場合は上手くいかないでしょう。

障害者雇用は「雇用したらゴール」ではありません。

障害者にとっていかに働きやすい空間を構築できるか、職場に定着できるか、
といった課題を解決していく必要があります。

このような事情を反映して、障害者雇用促進法のなかでは、「合理的配慮の提供義務」を事業主に課しています。

合理的配慮とは、
「雇用の分野における、障害者とそうでない者の均等な機会もしくは待遇の確保、または障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置」
というものです。

事業主の義務である合理的配慮とは、どのように提供されるものなのでしょうか。

引用元:障害者の雇用の促進等に関する法律 | e-Gov法令検索

 

 

障害者からの申し出

 

合理的配慮を提供するための出発点は、障害者本人が声を発することです。

たとえばオフィスの環境が障害者に不便な状態であったとしても、障害者本人がきちんと伝えない限り、気付かないことも多いでしょう。

障害者が「どのような配慮を望んでいるのか」

という意思表明をすることで、事業主は改善のための施策を講ずることができます。

一方で、障害の程度や状況によっては意思表明ができなかったり、
配慮の表明をしたら選考に不利になるのではと考え、言い出せなかったりする場合があります。

そのような状況を想定し、採用面接時には合理的配慮に関して本人の希望をヒアリングする時間を十分に設け、
障害者が言い出しやすい雰囲気をつくりましょう。

 

配慮内容の話し合い

 

障害者本人からの配慮に関するヒアリングができたら、次は提供する側がどのような対応や措置をすべきかを話し合います。

ここでは、「対応・措置の内容が実現可能かどうか」
というところがキーポイントとなります。

合理的配慮は、提供する側に過重な負荷がある場合は、その義務を負わないとされています。
そのため、配慮の内容によって、スペースの都合上実現が難しかったり、
過大なコストがかかったりする場合は、無理に実現する必要はありません。

自社で実行可能な配慮はどういった内容なのかを整理し、
改めて障害者本人とも話し合い、双方が納得できる対応・措置を決めましょう。

 

合理的配慮の実施

 

配慮の内容によっては、配属先の部署内での周知徹底が必要な場合があります。

スムーズな合理的配慮を実施するためには、現場での理解を広めることが一番の近道です。
また、就労する上で困ったことが出てきたらすぐに相談できる担当者を近くに置くなど、
フォローアップを行いやすい体制をつくっておくことも有効です。

一方で、プライバシーを守るという観点から、障害や配慮の内容を伝えれば良いというわけではありません。
どこまで伝えて良いかというラインを、あらかじめ当事者としっかりと相談しておくことが重要です。

 

合理的配慮の評価・改善

 

実際に合理的配慮のための施策を実行してみた結果、

「もっとこうした方がやりやすい」など、初めてわかる改善点なども出てくるでしょう。

さらに、障害の種類によっては、時間の経過とともに症状の程度や障害の内容が変わることがあり、
定期的に施策の見直しが必要な場合もあります。

そのため、定期的に面談などを実施し、現在の配慮や支援の方法が適切かどうか、
困っていることはないか、ヒアリングを行うと良いでしょう。

 

 

 

障害者雇用時のポイント

 

 

せっかく障害者を雇入れても、その後うまく職場に定着できず、早期離職してしまうケースは少なくありません。障害者が1年以内に離職する割合は障害別によって違いはあるが、3割から5割といわれており、
合理的配慮の実施はもちろん、障害者の職場定着を目指すための環境づくりが重要です。

日々の精神面・体調面の変化に気を配る

 

不安障害を持つ精神障害者をはじめとして、日によって症状や体調に波がある障害者は多いです。
最初の何日かは大丈夫だったからもう問題ないだろう、といった判断ではなく、
その日ごとに体調や気持ちの変化がないか気を配りましょう。

簡単な会話のなかで、「今日の調子はどうか」、「睡眠は取れているか」、「気になることはないか」といった内容を確認するだけでも問題ありません。

毎日コミュニケーションをとるようにすることで、ちょっとした変化にも気付くことができるでしょう。

 

面談を実施する

 

何か困ったことがあったとき、すぐに自分の状況を伝えられる人もいますが、言葉にして伝えることが苦手な人もいます。そのため、定期的な面談の時間を確保するなど、障害者本人の現在の状態や困っていること、気になることが話しやすい雰囲気や場所をつくることが大切です。

あらかじめ面談日を決めておけば、話すのが苦手な障害者も、自分の言いたいことを整理できるため、本当の気持ちを聞くことができるかもしれません。

そのほか、障害者本人から面談の申し出があった場合や、業務がうまくいっていない様子がみられる場合にも、定期面談とは別に時間をつくり、なるべく早期に対応できるようにしましょう。

 

障害者の不安に対処する

 

不安に思う気持ちは、人間であれば誰でも感じるものです。しかし、障害の特性や症状によって、健常者よりもはるかに強い不安に苛まれてしまう人もいます。「不安」を軽減させるために、どのような背景があって不安を感じているのかを分析しましょう。

例えば、不安な気持ちが業務に起因して発生しているのか、それともプライベートの範疇なのかによって、企業が対応できることは全く異なります。業務が原因であれば、業務内容が適正かどうかを見直し、部署内でのトラブルや配慮の内容についても注意する必要があります。

しかし、プライベートの問題が起因している場合は企業が介入することは難しいため、第三者の支援機関などを通じて対処するようにしましょう。

 

 

まとめ

 

 

企業が障害者を雇用する動きは近年活発化している一方で、障害者の早期離職も大きな課題になっています。障害者を雇用するためにはさまざまな配慮や特別な対応が必要であり、企業は一定以上の負担を覚悟しなくてはなりません。

しかし、障害者のために行う配慮や対応は、実際は障害者でない従業員にとっても働きやすい環境づくりに繋がっている場合が多く、多様な人材や価値観を許容し、企業全体の発展を実現していくものといえるでしょう。障害者雇用の推進は、従業員の能力を発揮させ、人材を活用するマネジメントスキルの強化にも繋がる可能性があります。

H&Gでは、職場適応と定着のノウハウを活かし、企業における障害者雇用の課題を解決してきました。
障害者を雇入れて間もないうちは、障害者も企業側もわからないことや不安に思うことが多いため、適切な手助けがあると安心です。

障害者雇用をご検討の方は、ぜひH&Gまでお気軽にお問い合わせください。