【コラム#16】障害者雇用でテレワークを活用するには?現状や導入メリット、成功事例も紹介 | デライトジョブ | 企業の障害者雇用をトータルサポート

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【コラム#16】障害者雇用でテレワークを活用するには?現状や導入メリット、成功事例も紹介

働き方改革の推進や新型コロナウイルスの影響によって、多くの企業でテレワークの導入が推進されています。このような傾向は、障害者雇用の領域においても同様に広まりつつあり、障害者の働きやすさや生産性向上に繋がる効果が期待されています。しかし、障害者雇用においてテレワークを導入するにあたって、配慮すべき点などは事前によく確認しておく必要があります。

この記事では、障害者雇用におけるテレワーク導入の方法や工夫すべきポイント、導入事例などを解説します。

 

※目次

 

  1. 障害者雇用におけるテレワーク導入の現状
  2. 障害者雇用でテレワークを活用するメリット
  3. 障害者雇用でテレワークを導入する際のステップ
  4. 障害者雇用におけるテレワーク運用時のポイント
  5. 障害者雇用におけるテレワーク導入事例
  6. 障害者雇用におけるテレワーク導入に対する助成金
  7. まとめ

 

 

障害者雇用におけるテレワーク導入の現状

 

総務省が発表した2019年の通信利用動向調査では、テレワークを導入している、もしくは具体的な導入予定があると回答した企業は全体の約3割という結果でした。2017年の調査結果では18.2%だったことを考えると、大幅に増加していることがわかります。政府が積極的な推進活動を行っていることもあり、多くの企業でテレワークは普及しつつあるといって良いでしょう。

テレワークは、自宅で仕事ができるため、通勤が困難な重度の身体障害者や、地方に住んでいる障害者にとっては、新たな雇用機会に繋がることが期待されています。このような点に着目し、障害者雇用の環境整備のためにテレワークを導入するというパターンも増えています。障害者雇用率の達成に加え、雇用した障害者の長期定着のためにも、テレワークは効果を発揮するでしょう。さらに、特例子会社でテレワーク業務を導入し、実績やノウハウを積んでからグループ全体に導入する企業の例もあります。

 

引用元:令和元年通信利用動向調査の結果

 

 

障害者雇用でテレワークを活用するメリット

 

 

では、障害者雇用におけるテレワーク導入にはどのようなメリットがあるのか、企業側・障害者側の双方の視点から見てみましょう。

 

企業側のメリット

 

障害者の中には、オフィスへの通勤が困難な人や、周囲の環境の変化が体調に悪影響を及ぼす人もいます。業務を遂行する能力は持っているのに、オフィスの環境下ではうまく発揮できない場合もあるでしょう。そのような人の場合、テレワーク導入によって、自宅で勤務できるようになれば、業務効率や集中力も高まり、より高いパフォーマンスが発揮できるようになる可能性があります。

また、オフィスにおける障害者雇用の環境整備を行う場合、バリアフリー化や新たな設備の導入など、多額の費用がかかることが想定されます。しかし、テレワークの場合は通信機器の貸与やネットワークの環境整備などを行えば良いため、コストがかからないという点でもメリットといえるでしょう。

 

障害者側のメリット

 

テレワークは通勤が必要ないため、外出に困難を抱える身体障害者の人にも適した働き方です。また、精神障害者の人に多いのが、通勤時の満員電車や駅の人混み、多くの人が往来するオフィスの環境などが、身体的・精神的ストレスとして蓄積し、症状が悪化してしまうケースです。このような精神障害者の状況は健常者には理解が難しく、急に具合が悪くなったように見えるかもしれません。精神障害者の身体的・精神的ストレスのもとを減らすためにも、テレワークは有効です。

また、地方に在住しているために都市部への通勤が難しく、雇用機会が限られていた障害者にとっても、テレワークが普及することで可能性の幅が広がる可能性があります。住み慣れた地域を離れずに働けることは、安心感にも繋がるでしょう。

 

 

 

 

 

障害者雇用でテレワークを導入をする際のステップ

 

 

次に、テレワークを導入するにあたって、どのような取り組みが必要なのかを見ていきましょう。

 

テレワークを行える環境を整備する

 

まず、現在の業務内容のなかから、テレワークに置き換えられる業務を選別します。たとえば、データの入力作業では、パソコン1台あればできる場合はテレワークで行うことが可能ですが、入力作業に付随してオフィスにある資料の閲覧や、プリントアウトなどの作業が必要であれば、テレワークで行うには工夫が必要です。このように、それぞれの業務をテレワークで行った場合を想定し、テレワークに適している業務と、そうでない業務を見極めることが必要です。このような選別作業のなかで、非効率な部分を洗い出し、改善する機会にすると良いでしょう。

テレワークでできる業務内容が定まったら、業務に適した人材のイメージや採用基準を固めましょう。オフィス勤務ではないといっても、報告や打ち合わせを行う必要がある場合は、ビデオ通話やチャットでのやりとりができるという条件を加える必要があります。このように、具体的な仕事をイメージすることで、それに合った人材像が定まってきます。

 

テレワークに必要な機器を揃える

 

テレワークを行ううえでは、パソコンはもちろん、インターネット環境、プリンターなどの設備を自宅に整える必要があります。このような設備は企業側が準備したものを貸与するのが一般的ですが、テレワーク手当などを支給することで準備にかかる費用に充ててもらうこともできます。手当やその内容については就業規則などで定めておきましょう。このほかにも、障害によっては文書読み上げソフトやトラックボール、拡大鏡などのツールを導入する場合もあります。どのようなツールが必要になるのか事前に確認し、障害者が働きやすい環境を構築できるよう配慮をしましょう。

 

トライアル雇用を活用する

 

テレワークは日本ではまだまだ新しい働き方です。そのため、従業員だけでなく、使用者である企業側にとっても導入直後は慣れないことが多いでしょう。ましてや障害者雇用ともなると、双方の不安はより大きなものになるかもしれません。そのような場合は、「障害者トライアル雇用」制度の利用を検討してみましょう。

障害者トライアル雇用制度とは、障害のある求職者のうち、就業経験の少ない人やブランクのある人を対象に、試用期間を設けてから本採用を決められるという制度です。「障害者トライアルコース」と「障害者短時間トライアルコース」の二種類があり、障害者短時間トライアルコースは、長時間の就業に不安を感じている障害者に適した制度です。

障害者トライアル雇用を利用し、試用期間を設けることで、求職者である障害者と企業双方のミスマッチを回避することができ、テレワークでの働き方についても理解を深められるでしょう。また、この制度を活用することで企業には助成金が支給されるため、採用に関してのコストが削減できるという点もメリットです。

 

 

障害者雇用におけるテレワーク運用時のポイント

 

 

ここでは、障害者雇用におけるテレワーク運用時に注意したい点を解説します。障害を持たない人にも当てはまる事項もありますが、注意するポイントを確認し、テレワークのメリットを十分に引き出せるようにしましょう。

 

連絡方法やツールをしっかりと定める

 

テレワークを導入している企業に多い悩みが、コミュニケーション不足に関するものです。対人関係に苦手意識のある障害者にとっては、上司や同僚と必要以上に交流しなくて良い環境は理想的かもしれませんが、業務の進捗報告やスケジュールの共有は必要です。「この時間になったら進捗状況を報告すること」などルールを定めたうえで、連絡方法や連絡ツールを指定すると良いでしょう。

また、始業や終業、遅刻や早退など、勤怠管理に関する連絡にもルールを定めましょう。特にフレックスタイム制を導入している企業などは、従業員によって就業時間が異なるため、現在誰が業務を行っているのか把握するのは困難です。そのような場合は、勤怠管理ツールやグループチャットを活用し、データとして勤怠記録が残るようにしましょう。

 

オンライン上でも相談しやすい環境づくりを考える

 

業務上の連絡以外にも、何かトラブルが発生した場合や、不明点がある場合に、気軽に相談できる環境を構築することが大切です。障害者によっては電話が苦手な人もいるため、テキストでのやりとりにも対応できるようにしましょう。そのような状況が予想される場合は、あらかじめチャットツールを導入しておくと便利です。

また、テレワークでは他人と接する機会が減ってしまい、孤独感や孤立感を抱えてしまう人も少なくありません。精神障害者の場合、思いつめた結果、深刻な体調不良に繋がる可能性もあります。進捗報告だけではなく、気軽にコミュニケーションが取れる機会をつくると良いでしょう。

 

集中しやすい環境を整える

 

人によって「集中できる環境」は異なります。自宅でテレワークをすることで集中力がアップする人もいれば、自宅では家事や趣味のものが気になって集中できない、という人もいるでしょう。このような悩みは、障害の特性による場合もあるため、集中できない状態を頭ごなしに否定するのではなく、自宅に集中しやすい環境を構築するアドバイスや手助けをすると良いでしょう。たとえば、仕事のスペースとそれ以外のスペースをパーテーションなどで区切る、仕事専用のスペースを作る、仕事をする際には気が散りそうなものを片付ける、などが有効です。

 

勤務時間に留意する

 

テレワークでは、業務に集中することや適度な休憩を行うなどの時間の管理に関して、職場のメンバーのちょっとしたフォローが少ない分、高い自己管理が必要となります。

障害者の場合、時間の自己管理が難しくケースもしばしあり、例えば、仕事を”がんばりすぎる・やりすぎて”しまい、結果として、翌日の体調を崩し、休んでしまう。それが続いて休職してしまうケースも散見されます。障害者にテレワークを行う場合は、通常以上に、時間の管理に配慮しなければならない可能性があります。

 

 

 

 

 

障害者雇用におけるテレワーク導入事例

 

 

ここからは、実際に障害者雇用を通じてテレワークを導入した企業のなかから、4パターンの導入事例をご紹介します。

 

リクルートオフィスサポート

 

リクルートグループでは、障害者を雇用したいという想いはあるものの、都市部における障害者採用は競争が激しく、思うように採用できないという課題を抱えていました。そこで、地方での採用に力をいれ、5名のテレワーカーをトライアル雇用で採用し、その後も定期的に北海道エリアを中心に採用を継続しています。

リクルートオフィスサポートにおける障害者雇用での業務内容は、リクルートグループが運営するWebサイトの情報審査などです。媒体ごとに10名程度のテレワークチームを編成し、進行担当の職員からの指示に従い、業務を行います。

 

LINEビジネスサポート

 

LINE 株式会社は、長野県との包括的業務提携を結んでいた際、提携施策の1つに障害者雇用があったことがきっかけで、障害者雇用に取り組み始めました。実施にあたっては、特定非営利活動法人のサポートを受けながら、長野県松本市エリアで 6 名の障害者を採用しました。

業務内容は、電子コミックサービス「LINEマンガ」やブログサービス「LINE BLOG」といったサービスのモニタリング作業です。ユーザーの不適切なコメントやレビューの削除、内容がサービスの要件を満たしているか監視する作業を担っています。

 

DMM.com

 

DMM.comでは、従業員数の増加から障害者雇用へ積極的に取り組んでいましたが、通勤が困難な人やコミュニケーションに不安がある人の受け入れについてさまざまな課題が生じていました。このような課題を解決したのが、テレワークの導入です。

テレワークでできる業務内容は徐々に増え、商品名のルビ入力やモニタリング、画像加工、Webサイトの更新やバナー・ポスターの制作をはじめ、会員の入退会管理、請求書の確認、支払・発注申請などにも拡大しており、テレワーク体制をより強固にしています。

 

阪和興業

 

鉄鋼や建材の販売・輸出入の事業を行う阪和興業では、2017年に「障害者テレワーク(在宅勤務)導入のための総合支援事業」に参加したことをきっかけに、翌年より障害者雇用のテレワーク制度を導入しました。

業務内容は、人事部でのデータ入力業務や、市場調査、メーカーのリスト作成などです。週に1日従業員が集まる場を設けるなど、定着に向けた支援にも力を入れています。就業・生活支援センターの職員に定期的に働く様子を見てもらうなど、連携して行っています。

 

 

障害者雇用におけるテレワーク導入に対する助成金

 

 

最後に、テレワーク導入の際のコスト削減に繋がる、助成金について解説します。どのような助成金があるのか、またどのような要件を満たせば支給対象となるのか、確認しておきましょう。

 

特定求職者雇用開発助成金

 

厚生労働省が指定する、障害者・高齢者・母子家庭の母親など、就業することが困難と思われる対象者を、一定の条件下で雇用した際に支給される助成金です。対象者によって「コース」の種別があり、「特定就職困難者コース」、「障害者初回雇用コース」、「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」など全8種に分けられており、それぞれのコースにおいて対象期間や助成金額が変わります。

 

障害者作業施設設置等助成金

 

障害特性による業務上の課題を克服するための作業施設や設備を導入した際に支給される助成金です。たとえば玄関やトイレをバリアフリー仕様にする、手すりを設置する、などのケースが挙げられます。障害者作業施設設置等助成金のなかでも、工事・購入などによる助成は「第1種作業施設設置等助成金」、貸借による助成は「第2種作業施設設置等助成金」と分類されています。

 

在宅就業障害者支援制度

 

自宅もしくは福祉施設などで就業する在宅障害者に仕事を発注する企業に対して、障害者雇用納付金制度を原資とした助成金を支給する制度です。この制度の助成金は「特例調整金」と「特例報酬金」に分かれており、企業の常時雇用の労働者数によって金額や条件などが異なります。

 

 

まとめ

 

 

民間企業においてテレワーク導入が進むなか、障害者雇用でもテレワークの有用性が注目されています。障害の種類によっては、オフィスに出社することはできなくても、テレワークでなら能力を発揮できるという障害者も多いでしょう。近年ではテレワーク導入へのハードルも下がり、ノウハウも普及しつつあります。一方で、障害者雇用における人材活用方法に頭を悩ませている担当者も多いでしょう。この機会に、テレワークを取り入れた障害者雇用を検討してみてはいかがでしょうか?

H&Gでは障害者雇用に関してノウハウを蓄積しています。

障害者雇用をご検討の方は、長期雇用実績のあるH&Gまでぜひお気軽にご相談ください。