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【コラム#25】障害者雇用枠は手帳なしでも就労できる?「クローズ就労」のメリット・デメリットなども解説!

障害を持つ人が仕事に就こうとする場合、就労には二種類の方法があります。
1つ目は、障害を企業に伝えないまま、健常者と同じ条件で応募する「クローズ就労」、
そして2つ目は「障害者雇用枠」への応募など、障害を最初から開示して応募する「オープン就労」です。

クローズ就労は、障害があることを公表せずに働くことが前提となるので、オープン就労かクローズ就労かで迷うのは、
比較的軽度の障害者の人でしょう。
どちらにもメリットとデメリットがあるため、自分に合った働き方がどのようなものか、検討する必要があります。

この記事では、障害をもつことを公表せずに働く「クローズ就労」や、障害者手帳をもたない人が働くための方法などを解説します。

 

※目次

  1. 障害者雇用枠における「障害者」とは
  2. 障害者の働き方
  3. クローズ就労のメリット
  4. クローズ就労のデメリット
  5. 障害者手帳なしでも利用可能な支援
  6. まとめ
 
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障害者雇用枠における「障害者」とは

 

 

そもそも、障害者雇用における「障害者」とは、どのような定義がされているのでしょうか。

 

障害者の定義

 

「障害者雇用促進法」は、障害者の雇用機会の確保や安定した就労環境の構築を目的としています。
この法律では、障害者を以下のように定めています。

「身体障害、知的障害又は精神障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」

このように、障害者雇用促進法における障害者の定義には、手帳の有無は条件として挙げられていません。
ただし、障害者雇用枠制度を利用して就職できるのは、障害者手帳を所持している者に限定されています。
現在の日本では、「身体障害者手帳」、「療育手帳」(自治体によっては他の名称であることも)、「精神障害者保健福祉手帳」の3種類が交付されており、障害者雇用枠での求人に募集する場合は、いずれかの障害者手帳を取得していることが条件になっています。


障害があると認められた場合でも、必ずしも障害者手帳を取得しなければならないという訳ではありませんが、障害者雇用枠で就労する場合は、障害者手帳の取得が必要になることを覚えておきましょう。

 

障害者手帳の種類

障害者に交付される3種類の手帳には、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。

まず、「身体障害者手帳」は、身体障害者福祉法により、一定の期間以上継続する身体の障害を持つ人に交付される手帳です。
視覚障害、聴覚または平衡機能の障害、肢体不自由、内蔵または免疫機能の障害などが対象となり、
障害の程度によって1~7級の等級に分けられます。1級に近づくほど障害の程度が重く、1級,2級は「重度身体障害者」という区分になります。

次に、「療育手帳」は、療育手帳制度に基づき、児童相談所などの機関において知的障害があると判定を受けた、原則18歳未満の人に交付される手帳です。自治体によって、「愛の手帳」や「緑の手帳」といった別の名称で呼ばれることもあります。また、認定基準や等級の区分も自治体によって異なりますが、基本的にはIQの数値などを考慮して重度(もしくはA),中軽度(もしくはB)と分けられています。

3つ目の「精神障害者保健福祉手帳」は、精神保健福祉法に基づき、一定期間以上精神疾患を持つ状態にあり、日常生活に制限がある人に対して交付される手帳です。具体的な病名としては、統合失調症、うつなどの気分障害、てんかん、高次脳機能障害や発達障害などが精神障害に含まれます。
精神障害者保健福祉手帳は、これらの疾患について医師から診断を受け、6ヶ月が経過してもなお日常生活や就労に支援が必要と判断された場合に取得可能です。等級は1~3級の3段階で、1級がもっとも重度になります。

 

障害者の働き方

 

 

障害者雇用枠で就労する場合、障害を公表せずに働く「クローズ就労」と障害をオープンにして働く「オープン就労」の二つの方法があります。
それぞれの特徴について見ていきましょう。

 

クローズ就労

 

クローズ就労とは、自身の障害の内容を就職先企業に開示せずに就労することをいいます。
応募方法や採用プロセスなどは、障害を持たない人と同じになります。

そのためクローズ就労では、自身の障害特性を理由に何らかの配慮を得ることは難しいといえるでしょう。

また、応募職種によっては障害があることが欠格事由にあたる可能性があります。
欠格事由を隠して入社できても、発覚すれば懲戒処分などのトラブルに発展しかねません。クローズ就労するためには業務内容や自分の健康状態をよく検討することが大切です。

 

オープン就労

 

オープン就労は、障害をもっていることを企業に開示しながら就労することをいいます。
障害者手帳を持っていれば障害者雇用枠を設けている企業に応募することもできます。
また、障害を開示しながら一般採用枠へ応募することも不可能ではありません。

このように、オープン就労と障害者雇用枠採用はイコールではないということを覚えていおきましょう。

 

 

 

 

クローズ就労のメリット

 

 

障害者手帳を持たない人が仕事に就こうとする場合は、クローズ就労で就職先を探すことになります。
クローズにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

 

障害をオープンにせずに働ける

 

「障害を持っていること」を公表することは、本来憚られることではありません。

身体障害者、精神障害者、知的障害者のような定義付けされた障害者のほかにも、
健康に大小の問題を抱えながら働く人は少なくないため、お互いの不都合を補完し合う姿勢が社会的に求められています。

しかし、障害や病気の情報は重要なプライバシー情報であり、公表したくない人もいます。
また、障害があることで周囲に気を遣われたくないという想いや、

障害があることで業務や労働条件の幅を狭めたくないという想いがある人もいるでしょう。

クローズ就労は、健常者と同等の条件で働くことになるので、障害をオープンにすることに抵抗がある人や、
職場における配慮やサポートを必要としない場合にはメリットがあるといえます。

ただし、障害を理由に休職や退職の経験がある方は、職務経歴を説明するうえで障害についても的確に伝えなければならない場合があります。
さらに、就職先企業に障害の有無を伝える義務はないものの、募集職種によっては障害が欠格事由にあたる場合もあるので注意が必要です。

業務内容をしっかりと把握し、健常者と同等の働きができるかどうかは、しっかり自分で判断していくことが大切でしょう。

 

豊富な種類の求人から選べる

 

「障害者雇用率制度」によって、企業には一定数以上の障害者を雇用することが義務付けられています。
障害者(法定)雇用率は近年引き上げが続いていることもあり、障害者雇用枠の募集数は増加傾向にあります。

しかし、一般採用枠の求人と比較すると、やはり数には限りがあるようです。
また、挑戦してみたい業種や通勤しやすい範囲内に障害者雇用枠の求人が無い場合もあるでしょう。

そのため、応募企業の選択肢を増やしたい場合は、クローズ就労を検討してみても良いかもしれません。

 

給料など好条件の求人が多い

 

障害者雇用枠での募集は、アルバイトやパートなど、非正規雇用での採用が多い傾向にあります。
同じ条件下の仕事においては、障害を理由に賃金を下げることは許されないことですが、
障害者雇用枠の募集となると、やはり短時間の労働や、軽微な業務が多くなるため、どうしても賃金水準は低くなりがちです。

このような背景があることから、賃金や福利厚生など待遇面での好条件を求めてクローズ就労を目指す人は少なくないようです。

 

 

クローズ就労のデメリット

 

 

一方で、クローズ就労のデメリットには、どのような点が挙げられるでしょうか。

 

障害に対する配慮が得られない

 

クローズ就労は障害を前提とした採用ではないため、健常者と同等の扱いや対応がされます。
特別な配慮は期待できないのはもちろん、要求される業務スキルも健常者と同等レベル以上のものになるでしょう。
そのため、体調不良や通院によって休みや早退・遅刻が重なってしまったり、
障害に起因する理由で著しく業務パフォーマンスが落ちてしまったりすれば、障害者雇用枠での採用者に比べて、

厳しく評価されることも覚悟しなければなりません。

また、障害者雇用枠を設けていない企業では、障害者を雇用するノウハウが無い場合も少なくありません。
障害に対しての認識の違いや、理解されない状況が生じる可能性もあります。

このような理由からクローズ就労は、症状が安定し、かつ特別な配慮を必要としない人におすすめできる方法といえるでしょう。

 

障害者控除を受けるには手間がかかる

 

障害者控除とは、就労している本人または同一の生計下で暮らす扶養家族などが障害者だった場合に、
一定額を所得から控除できる制度です。

対象となるのは、主に障害者手帳を交付されている人や、常時介護を必要とする人とその扶養者です。
障害者控除は、生活や就労に制限がある障害者本人と、障害者を支える家族にとって、
健常者と同じ税制度では負担が重くなってしまうことを避けるために設けられている制度です。

障害者控除は、対象者であるからといって自動的に控除が受けられるわけではありません。
会社員の場合、年末調整時に、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に障害者手帳の種類や等級などを記載することで申請することができます。
しかし、書類に障害者控除の内容を記載してしまうと、企業に障害者であることが知られてしまいます。もちろん企業は、障害者であることを理由に従業員を解雇することはできませんが、知られたくない場合は注意しましょう。

企業に知られずに障害者控除を申請したい場合は、確定申告をする必要があります。
手続きはすべて自分自身で行う必要があるため手間がかかりますが、
年末調整を受けずに確定申告する人は少なくないので、特別な事情があると思われる可能性は低いと考えられます。

 

企業と連携した支援サービスを利用できない

 

オープン就労や障害者雇用枠を整備し、障害者を雇用する体制を整えている企業の場合、
職場定着や雇用継続のためのサポートを行う支援機関と連携していることが少なくありません。
このような支援機関では、カウンセラーとの定期的な面談や、定着のためのマネジメントなどのサービスが受けられ、この内容によって企業側が業務内容や業務量の調整を行うこともあります。

一方で、クローズ就労の場合は、このような支援サービスの活用は期待できません。公的な支援を受けたい場合は、自分自身で探す必要があります。

 

 

 

 

障害者手帳なしでも利用可能な支援

 

 

最後に、障害をもつ人が利用できる支援機関をご紹介します。支援機関を利用することは、障害者手帳の有無にかかわらず、障害の特性により就労や生活に困難を抱えている人が相談を受けることが可能です。

 

ハローワーク

 

ハローワークでは、就職を希望する障害者に対して求人紹介や職業相談を行っています。国の認定を受けた職業指導官や就職促進指導官のほか、身体・知的・精神のそれぞれの障害に精通した指導官が在籍しているため、障害者にとっては多岐に渡る内容を相談しやすい体制が整っています。また、ハローワークは求人掲載費が無料であることで、民間の求人サービスと比較しても障害者雇用の求人数が豊富であることも大きなメリットです。

ハローワークが行っている具体的な支援策としては、面接の模擬練習・マナー講座や、合同面接会や職業訓練の実施、ジョブコーチ支援などがあります。

 

就労移行支援

 

就労移行支援は、障害者総合支援法に基づく障害者福祉サービスの1つです。障害者が仕事に就き、働くために必要なノウハウと知識を得られるようにサポートを行います。就労移行支援サービスは、18歳以上65歳未満が利用でき、障害者手帳を持っていない場合も、自治体の判断により利用資格が認められれば利用することが可能です。

障害者のなかには、いくらやる気や能力があっても、定期的に同じ場所に通い、継続的に働くことに高いハードルを感じている人も少なくありません。そのような人のために、就労移行支援サービスでは、定期的に事業所に通い、生活リズムを整えることからスタートします。その後、就労に必要な訓練メニューに取り組むことで、自身の適性を見極めながら就労を目指していきます。

 

就労定着支援

 

就労定着支援も、障害者総合支援法に基づく障害者福祉サービスです。就労移行支援は企業への就職を目標に、有期(原則は2年間)でサポートするのに対し、就労定着支援では企業への就労が困難、または不安がある障害者に対して、就労する場と賃金を提供することを目的としています。

就労定着支援の事業所は、A型とB型の2つに大別されます。A型では、利用者は事業所と雇用契約を結び、一般就労に近いかたちで就労することが可能です。都道府県ごとの最低賃金が保証されているため、収入を得ながら実践に近い就労体験を積むことができます。一方、B型では、雇用契約は結ばないものの、そのぶん自身の障害や体調と折り合いをつけながら働くことができます。ただし、報酬は最低賃金が保証されていないため、A型事業所と比較すると平均収入は低くなります。

 

障害者職業センター

 

障害者職業センターは、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が設置・運営する施設で、障害者雇用促進法に基づき、障害者の就労に向けた自立を促進・支援することが目的です。障害者職業センターには、障害者職業総合センター、広域障害者職業センター、地域障害者職業センターの3種類があり、このうち地域障害者職業センターは各都道府県に設置されています。ハローワークや後述する障害者職業・生活支援センターといった他の支援機関とも連携をとりながら、就職や職場復帰に向けた職業評価や職業準備支援などを行っています。

 

障害者就業・生活支援センター

 

通称「なかぽつ」ともよばれ、市区町村の単位で設置されている地域の障害者支援を担う機関です。その名の通り、就労支援だけでなく日常生活におけるサポートも行っていることが特徴で、就労支援員のほかに生活支援員がスタッフとして常駐しています。

生活支援では、日々の生活リズムの形成や金銭管理、健康管理に対するアドバイス、住居や年金に関する手続きのサポート、ほかの支援機関との間をつなぐサポートなどを行います。就業面での支援としては、職業訓練や実習のあっせん、就職活動の支援や就職後の定着支援を受けることが可能です。

 

まとめ

 

 

「障害」といっても、種類や程度はさまざまです。障害者であっても、健常者と同等以上の業務ができる人も少なくありません。また、一般の労働市場で自分の能力を発揮したいと考える人や、障害に気を遣われたくないという人もいるでしょう。

就職活動では、これまでの経歴に嘘偽りがあってはいけませんが、障害の有無を企業に伝えなければならない義務はありません。障害に起因する症状が落ち着いており、特別な配慮が必要無い状況であれば、クローズ就労に挑戦してみても良いでしょう。ただし、クローズ就労のデメリットについてはよく確認する必要があります。

H&Gでは、障害者雇用についてノウハウを蓄積しています。障害者雇用について疑問やお困りの点がありましたらいつでもご相談ください。