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【コラム#18】障害者雇用枠での就労とは?障害の種類や関連する法律を解説

障害者雇用枠での就労とは?障害の種類や関連する法律を解説

障害者の中には、職場に障害のことを伝えないまま就職し、健常者と同じように働いている人もいます。障害者であっても、一般雇用枠に応募し、就労することは決して不可能ではなく、企業側は障害があることだけを理由に、障害者の就労を拒否することはできません。しかし、障害者の場合、障害の特性や症状によって、健常者と同じ条件で働くのが困難であるケースが多いのも事実です。このような事情を鑑みて、障害者が安定的に働くための環境の構築と、障害者の雇用機会の増大のために取り入れられているのが、障害者雇用枠制度です。

 

障害者雇用枠での募集や採用活動は、一般的な求人とどのような点で異なるのでしょうか。この記事では、障害者雇用枠の概要から障害の種類、障害者雇用を導入する際に役立つ制度などを解説します。

 

※目次

  1. 障害者雇用枠とは
  2. 障害者雇用枠の特徴
  3. 障害の種類
  4. 押さえておきたい障害者雇用に関する法律・制度
  5. まとめ

 

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障害者雇用枠とは

 

 

はじめに、障害者雇用枠とはどのようなものか、制度の概要を解説していきます。

 

障害者雇用枠の概要

 

障害者雇用枠とは、障害者を対象として、一般雇用とは異なる採用基準を設けた雇用枠のことをいいます。もちろん、障害者だからといって、障害者雇用枠で就労しなければならない訳ではありません。企業が一般雇用枠に求める条件をクリアできれば、障害者であっても一般雇用枠で就労することは可能です。しかし、障害の特性や程度によっては、一般雇用枠での就労が難しいことも多く、そのような場合に活用されるのが障害者雇用枠制度です。

障害者雇用枠のメリットは、事前に企業側と障害について認識のすり合わせを行うことができるので、職業生活のさまざまな制限に対しても、理解や支援が得やすいことです。また、障害者雇用枠での採用活動は、企業側が障害の特性に対してサポートをしていくことが前提で行われるため、入社後における障害を起因とするミスマッチが少なく、職場定着がしやすいといった利点もあるでしょう。

 

一般雇用枠との違い

 

障害者雇用枠で就労する場合は、自身の障害を企業側に開示する必要がありますが、そのかわり、企業側からは障害に応じて必要なサポートを受けることができます。一方、一般雇用枠での就労の場合は、自身が障害者であることを企業側に知らせる必要はありませんが、企業から特別なサポートは期待できないでしょう。

以上の違いだけを見れば、職業生活上、必要な配慮やサポートを得られる障害者雇用枠での就労にメリットが大きいように思われます。しかし、多くの企業では、業務内容や昇給のスピードなどに関して、障害者雇用枠と一般雇用では差異が設けられている場合もあるので、注意が必要です。一般に、障害者雇用枠で就労する場合、備品整理や清掃、データ入力、書類整理など、比較的単純な業務内容であるケースが多く、昇進や昇給を目指していくというより、安定した職業生活を送ることを重視しているといえます。一部の外資系企業やIT企業などでは、障害者雇用枠と一般雇用者の働き方に明確な差異を設けないとしていますが、就職活動の際、障害者雇用枠か一般雇用枠かで迷っている場合は、業務内容や働き方、キャリアプランについて調べてみると良いでしょう。

 

 

障害者雇用枠の特徴

 

 

障害者雇用枠の就労には、どのような特徴があるのでしょうか。障害者雇用枠のメリット・デメリットの両方の側面から見ていきましょう。

 

障害者雇用枠のメリット

 

・企業からの配慮を受けられる

障害者雇用枠で就労する場合、自身の障害の特性や程度、それによって必要となる配慮について、事前に企業側と話し合う機会が設けられます。そのため、例えば障害の特性により、騒がしい場所では集中できない、急な対応が苦手なので電話対応ができない、など、業務上の得意・不得意に関しても配慮が得られるのは大きなメリットでしょう。

 

・安心感を得られる

一般雇用枠で採用された場合、企業からは健常者と同等の働きを期待されることになります。当然、規定以上の休憩をとったり、体調によってできない業務があったり、業務パフォーマンスが落ちることが続けば、良い評価は受けられないでしょう。いくら障害者の方に、健常者と同じように頑張りたいという気持ちがあっても、これでは安定的に働き続けることは困難です。

障害者雇用枠での就労であれば、体調の波やできない業務にも理解を示してもらえるため、自分のできる範囲で、安心して働き続けることができます。

 

・さまざまな事情にも対応できる

障害を抱える方は、定期的な通院が必要な場合が少なくありません。また、精神障害においては天候やストレスによって、毎日の体調に波がある場合も多く、所定の労働時間を働くことができない日もあるかもしれません。一般雇用枠での就労の場合、突然の休みには対応が難しい職種も多く、ほかの従業員の迷惑になってしまう心配もあります。一方、障害者雇用枠での就労においては、「体調を崩してしまうこともある」という状況にも理解を得やすく、一般雇用枠での就労に比べ、遅刻・早退をしても影響の少ない業務を担当できるなど、体調不良や通院を過度に心配しなくて良い環境で働くことができます。

 

障害者雇用枠のデメリット

 

・求人数が限られる

障害者雇用枠は、その特性上、一般求人枠より募集人数が限られます。障害者雇用枠での就労を希望していても、いざ求人を探すと、希望条件に合う求人が見つけられず、断念してしまう人も多いようです。募集人数が少ないうえに、どの企業でも行っている訳では無いため、通勤できる範囲内に勤務場所が無い場合もあるでしょう。

 

・給与水準が低い傾向にある

厚生労働省の調査では、2018年度の全国の平均年収が441万円、月給換算で36万円台であることに対し、障害者雇用の平均給与では、身体障害者の21.5万円が最も高く、知的・発達・精神障害者の平均給与は、いずれも11~2万円台という結果になっています。このことから、障害者雇用の給与水準はいずれも一般雇用枠よりも低い傾向にあることがわかります。このような背景には、障害者雇用では非正規雇用や短時間労働者が多いため収入が低くなりがちであるということや、業務内容によって高給を得にくいといった現状があるようです。

 

出典:

平成 30 年度障害者雇用実態調査結果

平成30年分民間給与実態統計調査結果について

 

 

 

 

障害の種類

 

 

障害者雇用とひとことにいっても、障害によって特性や必要な配慮は様々です。精神・身体・発達・知的の4つの分類から障害の内容について詳しく見ていきましょう。

 

精神障害

 

精神障害は、精神疾患の影響で脳や神経機能に障害が生じ、日常生活や社会活動に支障をきたしている状態を指します。「精神保健福祉法」という法令のなかでは、精神障害者は「統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者」と定義されています。精神障害は、原因によって以下のように、外因性・心因性・内因性の3つに大別することが可能です。

 

・外因性

外傷や薬物摂取など、外部からの影響によって脳の神経伝達が支障をきたしている状態を指します。脳挫傷や感染症などが原因として挙げられます。

 

・心因性

自身が持つ性格や特性、また環境からくる心理的ストレスが原因になる場合です。急性ストレス障害や適応障害などがこれにあたります。

 

・内因性

外因性にも心因性にも分類されない、はっきりとした原因がないケースです。代表的なものには気分障害や統合失調症などが挙げられます。

精神障害を持つ人は、精神障害者保健福祉手帳を申請することができます。精神障害者の等級は、最も重い判定である1級から、軽度とされる3級までに分けられます。等級の判定は、機能障害の程度や、社会活動が問題なくできるかなど、さまざまな側面から総合的に判断します。

 

発達障害

 

発達障害は、先天的な要因で脳機能の発達がアンバランスになることで生じる障害です。極端な得意・不得意の差や、物事へのこだわりがあったり、他人の感情が読み取れなかったりするなど、社会生活に困難を抱える場合が少なくありません。

発達障害は大別すると、「自閉症スペクトラム障害(ASD)」「ADHD(注意欠如・多動性障害)」「学習障害(LD)」の3種類に分けられますが、その人の特性によって二つ以上の発達障害の傾向を併存していたり、知的障害や二次障害を伴っていたりするケースもみられます。また、光や音、匂いなどに必要以上に過敏になる感覚過敏や、反対に五感や刺激の反応が鈍くなる感覚鈍麻なども発達障害で多くみられる症状です。

発達障害の場合、日本では専用の障害者手帳が存在しないため、精神障害者保健福祉手帳を取得します。等級の判定基準は、精神障害と同じく、機能障害と活動制限の度合いを総合的に見て判断されます。

 

知的障害

 

知的障害とは、出生時や乳幼児の初期などから知能の働きが明らかに標準以下であると認められ、日常生活や動作を行う能力が限られている状態をいいます。最新の診断基準では、知識や問題解決といった概念的領域、対人コミュニケーションや社会的判断などの社会的領域、金銭や行動の管理などの実用的領域という3つの領域から総合的な判断を行います。

知的障害があると判定された場合、療育手帳を申請することができます。等級は自治体によって異なることが多く、「重度」「それ以外」と区分するのが基本ですが、等級をさらに細分化した判定基準を持つ自治体もあるようです。判定基準は多くの場合、知能指数の結果や日常生活の介助の必要性などをもって判断します。

 

身体障害

 

身体障害とは、先天的あるいは後天的な理由により、身体機能の一部に障害が生じている状態を指します。身体障害者福祉法では、四肢や体幹の機能が損なわれ、日常動作に困難が伴う「肢体不自由」、視機能や視野に障害がある「視覚障害」、聴力や耳・脳の障害により平衡機能に不自由がある「聴覚・平衡機能障害」、発声やそしゃく・嚥下の機能をつかさどる口腔や鼻腔などの障害である、「音声・言語機能またはそしゃく機能の障害」、心臓や呼吸器など、体内の臓器に障害を持つ「内部障害」など、身体障害は5種類に分類されています。ただし、この分類に含まれない難病指定の疾患や高次脳機能障害などのなかには、身体障害として分類されるものもあるので注意しましょう。

身体障害を持つ人は、身体障害者手帳を申請することができます。身体障害者手帳は1~7級の判定基準になっており、1級・2級が重度の身体障害者という判定です。手帳の交付は、6級以上に該当する障害がある場合、もしくは7級程度の障害が複数みられた場合に対象となります。

 

 

押さえておきたい障害者雇用に関する法律・制度

 

 

最後に、障害者雇用を導入するにあたって事前に把握しておくべき法律や制度について解説します。

 

障害者雇用促進法

 

障害者雇用促進法は、障害者の職業の安定を図ることを目的とする法律です。障害者が職業生活における自立を実現するため、障害者を雇用する義務、差別の禁止や合理的配慮の提供義務などを定めています。この法律のもとになったのは、1960年に制定された「身体障害者雇用促進法」です。制定当時は、名称の通り身体障害者のみを対象にしていましたが、幾度かの改正を経て、現在では知的障害・精神障害(発達障害)を含めた全ての障害者が対象となっています。

 

法定雇用率

 

障害者雇用促進法における「雇用義務制度」を達成するため、民間企業や地方自治体に課せられた義務です。民間企業や地方自治体などの事業主は、雇用する労働者のうち一定の割合以上の障害者を雇い入れなければならないされています。この一定の割合のことを法定雇用率(障害者雇用率)といいます。法定雇用率は雇用者数の変動などによって数年ごとに見直しが行われ、2021年3月には民間企業において2.3%に引き上げられました。

 

障害者総合支援法

 

地域社会における障害者と健常者の共生の実現に向けて、障害者自立支援法を改正した法令です。障害福祉サービス事業の充実など、日常生活や社会活動を総合的に支援することを目的に定められました。支援を行う福祉サービスは、「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2つに大別されます。「自立支援給付」とは、障害者が介護・生活訓練などの福祉サービスを利用した際の医療費の負担額を軽減する制度です。一方、「地域生活支援事業」では、障害の理解・啓蒙を促進する活動など、自治体(地域)が障害を持つ人にとって生活がしやすいよう支援を行う事業を推進していくことが定められています。

 

 

まとめ

 

 

障害を抱えていても、職業生活において才能を発揮することは決して不可能ではありません。多くの先人達の努力の成果もあり、世の中の常識は少しずつ変化してきました。今や多くの企業で障害者雇用が推進され、働く障害者に対する配慮や理解も深まってきました。

そのようななか、活用されている施策のひとつが障害者雇用枠制度です。障害者が働くことへのハードルは下がってきたものの、障害者にはそれぞれ抱える障害の特性や、職業生活への制限があり、受け入れる企業の事業内容によっては、働ける人と働けない人がどうしても出てくるでしょう。このような場合に、障害者雇用枠を設けることで、障害についてしっかりとオープンにして採用活動を行うことが可能になります。障害者雇用においては、職場定着が難しかったり、ミスマッチが発生しやすかったりするなど課題点も多いものの、障害者と企業側が採用前に情報をすり合わせることで、多くの問題は解決に繋がっていくと考えられます。今後も引き上げが続くと予想される法定雇用率への対応のため、真剣に障害者雇用に取り組んでいく企業は、障害者雇用枠制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

H&Gでは障害者雇用に関して、ノウハウを蓄積しています。障害者雇用をご検討の方は、長期雇用実績のあるH&Gまでぜひお気軽にご相談ください。